冬の冷やし中華


    私は、ちょっと病気をして、入院生活をしばらく送っていました。そのとき
   4人部屋の隣のベッドに、骨肉腫の青年(当時私と同年代でした)がいました。
   足を切断し、その痛みに苦しんでいました。隣同志ということで、仲良くして
   いましたが、やがて腫瘍は全身に転移し間もなく亡くなられてしまいました。
    その彼が、家族が何か食べたいものはないかと尋ねたとき、冷やし中華を食
   べたいといいました。外はまだ雪の季節。現在は冬でも冷やし中華をメニュー
   に出している店も多くなりましたが、当時は皆無。でもご家族は冷やし中華を
   持ってきました。麺とビール瓶に入ったスープ。とても苦労されたことでしょ
   う。我が子を思う親の気持ちに、涙が出ます。青年はおいしいと喜んで食べま
   した。しかし、全部食べ干すだけの体力はなく、私がおこぼれちょうだいとな
   ったわけです。これはおいしかったなあ。入院生活はつらい経験でしたが、い
   ろんな体験ができ、良き思い出に代わっています。
    彼の分までおいしい冷やし中華を食べまくるぞ!