14時からコンサートホールで開催させたシティブラス越後のコンサートを聴き、6階のラウンジでその原稿を書き上げて時計を見ましたら、もう開場時間が過ぎていました。
急いでエレベーターで2階のロビー階に下りて劇場に行きますと、既に開場はかなり進んでおり、ロビーは混雑し、開演前の熱気に包まれていました。
すぐに入場して席に着き、開演を待ちました。客席は2階席後方に空きがありましたが、コアなファンが集まる1階はびっしりで、私の2階席前方もびっしりでした。
さて、今回の公演は、Noism Company Niigata の20周記念イヤーにちなんで、芸術総監督の金森 穣さんによるNoism0の新作と、彩の国さいたま芸術劇場芸術監督の近藤良平さんが19年ぶりにNoism1を振付けた新作、そして東京でのSaLaD音楽祭2021で初演されたNoismレパートリーの3作品が演じられるトリプルビル公演で、「円環(ENKAN)」という題名が付けられています。
この公演は、新潟のほかに、2025年2月7日〜9日に彩の国さいたま芸術劇場で3公演開催されるほか、12月22日には福岡公演として北九州芸術劇場で、2025年2月1日には滋賀公演として滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールで公演が行われます。
新潟公演は、12月13日〜16日の3日間開催されましたが、私は中日の14日の公演に参加させていただくことにしました。
公演内容につきましては、私が語るまでもなく、ファンクラブのサイトをはじめ、たくさんのファンの方や舞踊に造詣の深い方々が語られていますので、そちらをご覧ください。
以下、素人の私の感想などを簡単に書きますが、見当違いなこともあり、お叱りを受けるかも知れませんが、ご容赦ください。
場内が暗転して真っ暗となり、最初は、Noism0とNoism1による「過ぎゆく時の中で」です。John Adamsの「The
Chairman Dances」とともに演じられましたが、初演のSaLaD音楽祭2021ではオーケストラの生演奏で演じられましたが、今回は録音です。
幕が上がり、黒スーツと黒帽子の男(金森さん)が、スローモーションのようにゆっくりとステージを歩き、その横をNoism1のメンバーが猛スピードで走り抜けて行きます。この両者の時間の流れは全く異なり、男は、他のメンバーと絡み合いますが、引き止めることはできません。
そんな出だしに始まって、終盤には男の周りを他のメンバーが取り囲んで踊り回り、そして消えて行きました。後方のカーテンに写る影の演出も秀逸でした。最後はステージ上に男が1人たたずんで終演となりました。
浅学な私は理解が足りませんが、猛スピードで過ぎ行く時間の無常さ、でもその中の一瞬の中に意味があり、その一瞬の積み重ねが永遠につながる、などど愚考してみました。
カーテンコールでは金森さんを中央に、10人のメンバーが並んで、大きな拍手に応えていました。踊りも音楽も素晴らしく、最初から大きな満足感をいただきました。
10分間の休憩の後、続いては近藤良平さん振り付けによるNoism1の「にんげんしかく」です。場内が暗転して、照明がつきますと、ステージ上には大小多数の段ボール箱が並んでいてびっくりしました。
内橋和久さんによる少しユーモラスな音楽とともに、10個の箱が動き出し、楽しげなコミカルな箱のダンスが、ニヤリとさせて、新鮮さを醸し出しました。
その後は、箱の中から多彩な衣装の団員が出てきましたが、箱からなかなか出られない団員を、意味不明の言語で話し合いながら、掛け声とともに引っ張り出したりと、コミカルな演出で楽しませました。
箱とともにダンスをしたり、箱を叩いてパーカッション演奏をしたり、掛け声を上げたり、意味深い言葉を語ったりと、意表をつく演出に驚きました。
最後は再び箱の中に戻って終演となりましたが、人間は箱とともに生きていて、生活の中で周りは箱だらけですが、人間そのものも箱の中で生きている。真っ暗な箱の中に閉じこもるだけでなく、外に出れば別の世界が広がる。奥深い意味があるのでしょうが、それぞれの観客に、人生を考えるテーマが与えられたように思いました。
段ボール箱の中でダンスをしたり、箱を叩いて演奏したり、意味不明ですが台詞があったりと、楽しい音楽とともに、多彩な演出で楽しませてくれました。
20分間の休憩時間にロビーでこの原稿を書きながら時間をつぶしているときに、他の客の立ち話が聞こえてきましたが、県外からも客が来られているようですね。
休憩時間が終わって、場内が暗転し、最後は金森さん振り付けによる新作の「Suspended Garden 宙吊りの庭」です。Noism0の井関佐和子さん、山田勇気さんのほか、元Noismの宮河愛一郎さん、中川賢一さんがゲスト出演し、4人で演じられました。
Noismを良く知る作曲家のトン・タッ・アン氏に委嘱した曲に載せて、20年のNoismの歴史の中で、重要な役割を担った4人により、心を打つ深遠な世界がステージに広がりました。
ステージには金色のドレス。ピアノの音に導かれて、赤い衣装の井関さんを中心に、4人の踊り手が金色のドレスとともに絡み合い、夢幻の世界が眼前に広がりました。
ステージの床と後方に映し出された映像とともに演じられた4人の舞踊の素晴らしさは言うまでもありませんが、アンさんの心にしみてくる音楽も良かったです。舞踊芸術の理解力のない私ですが、否応なしに舞台上のパフォーマンスに引き込まれました。
圧倒的なステージに大きな拍手が贈られて、カーテンコールが繰り返され、静かに心を熱くさせた感動のステージは終演となりました。
3演目とも素晴らしいもので、最終演目の素晴らしさには息を呑みましたが、他の2演目も楽しめるものでした。近藤さん演出の段ボール箱とのパフォーマンスはこれまでに経験がなく、見応えがありました。
3本立ての内容豊富なプログラムをたっぷりと観させていただき、大きな満足感とともに劇場を後にして、天候は小康状態ながらも冷え込みの厳しい白山公演を抜けて、駐車場へと急ぎました。
20年の歴史を終えたNoismの歴史。20年の輪である「円環」を一回りして、これから次の輪を回っていくものと思います。
地方都市の新潟に、このような芸術を全国に、いや世界に発信する力があることはすごいことであり、人口減や衰退が続く新潟において、大きな光となっていることは間違いありません。
行政の理解と支援を期待しつつ、本当に陰ながらではありますが、私も応援していきたいともいます。そして、広く市民・県民の皆さんにNismのすごさを知っていただきたいと思います。
(客席:2階15-24、\5500) |