古楽アンサンブル プロジェクト・リュリ第15回演奏会
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2024年7月21日(日) 14:00 だいしほくえつホール
フルート・トラヴェルソ:江口鮎美(ゲスト)、ヴァイオリン:佐野正俊、庄司 愛(ゲスト)
チェンバロ:師岡雪子、ヴィオラ・ダ・ガンバ:中山 徹
 
コレルリ:トリオソナタ ト長調 op.1-9
ルクレール:トリオによるソナタ ニ短調 op.4-1
ドルネル:四重奏によるソナタ ロ短調

(休憩15分)

テレマン:四重奏曲 ホ短調(「食卓の音楽」第3部より)
クープラン:「パルナス山、またはコレルリ賛」

(アンコール)
ラモー:歌劇「ボレアード」から 第4幕のアントレ
 新潟で地道な演奏活動を続けている古楽アンサンブルのプロジェクト・リュリの演奏会です。コロナ後に活動を再開した2021年の第13回演奏回、そして2022年11月の第14回演奏会は所用で行けず、昨年は開催されませんでしたので、2019年9月の第12回演奏会以来、5年ぶりに参加させていただくことにしました。

 今回は「コレルリを讃えて」というテーマで、コレルリのほか、コレルリに影響を受けたルクレール、ドルネル、テレマン、クープランの曲が演奏されます。古楽に疎い私には、マニアックに感じる曲ばかりですが、日頃聴く機会がありませんので、楽しませていただきたいと思います。

 東響ロビーコンサートを終えて、りゅーとぴあから東堀に出て、猛暑の中、汗を拭き拭き、早足で歩き、息も絶え絶えに、だいしほくえつホールに開演5分前に到着しました。当日券を買い、左前方に席を取りました。
 受付で配布されたプログラムには、恒例の中山先生による「解説らしきもの」が載っていましたが、毎回読み応えがあり、大変勉強になります。
 コレルリがヴァイオリンの「大天使」ということすら知りませんでしたので、コレルリと今日演奏される作曲家たちとの関係など知るよしもありません。解説らしきものをゆっくり読む時間はありませんでしたが、予備知識なしで演奏に臨みました。

 さて、2006年に結成されたプロジェクト・リュリは、ヴァイオリンの佐野正俊さん、ヴィオラ・ダ・ガンバの中山徹さん、チェンバロの師岡雪子さんの3人のユニットですが、今回はヴァイオリンの庄司愛さん、フルート・トラベルソの江口鮎美さんが友情出演として参加されます。庄司さんは毎回のように出演されていますので、オリジナル・メンバーと言っても良いかもしれませんね。

 開演時間となり、ヴァイオリンの佐野さん、庄司さん、ガンバの中山さん、チェンバロの師岡さんの4人が登場して、コレルリのトリオソナタで開演しました。
 チェンバロとガンバの低音の上に、古楽器奏法の2人のヴァイオリンが舞い踊り、優雅な響きに満たされて、一気に古き時代へとタイムスリップしました。

 続いて、同じメンバーで、ルクレールの「トリオによるソナタ」です。第1楽章は、チェンバロとガンバが悲しげに歌い、さらにヴァイオリンが切々と歌って、心にしみました。第2楽章は、悲しみの中にも躍動感を感じさせ、第3楽章は、再びゆったりと歌い、第4楽章は、快活に踊って演奏を終えました。

 4人が一旦下がって、ステージが整えられ、トラベルソの江口さんが加わって、5人により、ドルネルの「四重奏によるソナタ」が演奏されました。
 ゆったりとした冒頭から軽快に演奏が進み、緩急を繰り返しました。トラベルソの木の香りを感じさせる柔らかな音色が心地良く感じられました。終盤は軽快に躍動し、最後はゆったりとした中に曲を閉じました。

 休憩後の後半は、佐野さんが抜けて、4人での演奏となり、テレマンの「食卓の音楽」の第3部からの「四重奏曲」が演奏されました。本来のチェロパートをガンバで演奏するとのことでした。
 第1楽章は、トラベルソとヴァイオリンとともに、ガンバが切なげに歌い、第2楽章は、明るさを帯びて躍動し、第3楽章は、ゆったりと歌い、第4楽章は、足取りを早めて曲を閉じました。

 4人が退場してステージが整えられ、佐野さんが戻って5人が登場しましたが、江口さんはトラベルソではなくマイクを持って左端に座り、本日のメインと言えるクープランの「コレルリ賛」です。
 コレルリへのリスペクトを表した曲だそうで、別名は「パルナス山」です。「パルナス山」は「モン・パルナス」という実在の地名ですが、ギリシャ神話では芸術を司るミューズの女神たちが集う山だそうです。勉強になりますね。

 江口さんによる場面の説明に引き続いて7つの楽章の演奏が行われました。パルナス山の麓でコレルリがミューズたちに仲間に入れてほしいと願い、快く受け入れられたことに感謝し従者とともに悦び、ヒポクレネの泉の水を飲み、コレルリは魔力のある水で陶酔し、うつろな眠りに入り、ミューズたちがコレルリを目覚めさせてアポロンの元に連れていき、コレルリが感謝するという場面が音楽で表現され、様々な曲調の音楽を物語として楽しませていただきました。

 今回は、コレルリとコレルリに影響を受けた作曲家の音楽が演奏されましたが、芸術的素養のない私は、どれもが同じような曲に感じられ、作曲家による違いは分からなかったというのが正直なところでした。
 ゆったりとした、古き良き時代の音楽は、疲れた心に優しく響き、せわしない現実世界を忘れさせて癒しを感じました。

 大きな拍手に応えて、アンコールに、ラモーの歌劇「ボレアード」から第4幕のアントレが全員で演奏されました。江口さんは立っての演奏でした。
 ゆったりとしたメロディが耳に優しく、美しく、うっとりと聴き入りました。特にトラベルソの美しい調べが心地良かったです。

 古楽などは門外漢の私ですが、たまにはこういう音楽も良いですね。曲の良さを具現化するメンバーの皆さんの技術と努力に感銘し、大きな拍手とブラボーを贈りたいと思います。

 心軽やかに、ホールを出ますと、猛暑の現実世界が待ち構えていました。次の予定に向けて、りゅーとぴあへと本町通りを歩いて行きました。
 
 
(客席:E-6、当日券:¥1300)