新潟市ジュニアオーケストラ教室第42回演奏会
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2023年8月27日(日) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
A合奏指揮:藤井裕子、B合奏指揮:碇山隆一郎
 
(ロビーコンサート)
クラリネット二重奏
  モーツァルト:ソナタ KV.292
ホルン四重奏
  プレトリウス:バロック組曲より「クーラント」「パスピエ」
弦楽三重奏
  ドホナーニ:弦楽三重奏のためのセレナードより
木管五重奏
  ファルカシュ:十七世紀の古いハンガリー舞曲より

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A合奏(指揮:藤井裕子)
ビゼー(ウッドハウス編):カルメン行進曲
ハイドン(ウッドハウス編):ハイドン・メロディーズ

AB合同合奏(指揮:碇山隆一郎)
ヨーゼフ・シュトラウス:鍛冶屋のポルカ
ブラームス:ハンガリー舞曲 第6番

(休憩20分)

B合奏(指揮:碇山隆一郎)
シャブリエ:狂詩曲「スペイン」
ドヴォルザーク:交響曲 第8番ト長調 作品88

(アンコール)
エルガー:威風堂々第1番
 

 今年もこの日がやってきました。この一年は辛いことだらけでありましたが、この日を目指して、歯を食いしばり、心をすり減らしながらも頑張って生きてきました。
 結局生きてきただけで、何もなしえていない自分がつらいのですが、子供たちから生きる力を少しでもいただけたら、もう少し、いや来年のこの日までは頑張れるかもしれません。
 
 さて、新潟市ジュニアオーケストラ教室は、団員を最初からオーディションで選ぶ他県のジュニアオケとは違って、初心者から、単科教室 → A合奏 → B合奏と育て上げていく 独自のシステムをとっていることが画期的であり、誇るべきものと思います。そのためジュニアオーケストラ教室という名前で運営されています。
 そのメインであるB合奏の指揮者が、昨年まで務めてこられた永峰大輔さんが退任されて、今年から碇山隆一郎さんになりました。すでに3月のスプリングコンサートに登場して、素晴らしい音楽を子供たちと創り上げてくれました。これからの新体制も期待十分ですね。

 今日のメインのプログラムは、昨年のドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」に引き続いて、ドヴォルザークの交響曲第8番です。
 この曲を取り上げるのは、2014年の第33回演奏会以来になります。もちろん団員は入れ替わっているわけですから、現在の団員にとりましては初めての曲となりましょう。
 毎年メンバーが代わるのが宿命のジュニアオケですので、その年毎に違いが出てくるのは当然なのですが、ときどき、いやかなりの確率で歴史に残る名演奏に接することがあり、これがジュニア通いを続ける原動力になっています。今年はどんな演奏が聴けるでしょうか。期待は高まるばかりです。

 毎年高校3年生はこのコンサートを最後に卒団し、これが別れのコンサートになり、終了後に卒団式が開催されます。
 アンコールで演奏される威風堂々がジュニアオケと過ごし、青春を捧げた最後の曲となりますので、涙無しでは聴けません。涙腺崩壊は間違いなく、これほどの感動はここでしか味わえません。今日はどんな感動をいただけますでしょうか。

 今日は日曜日。昨日もいろいろあって眠れぬ夜を過ごし、夜明けとともに早起きして、ホームページを一旦アップして、家を出ました。
 職場でたまりにたまった仕事を片付けるべく出かけたのですが、その前に職場近くの某温泉に立ち寄り、地元の方々とともに朝湯をいただき、身体と汚れた心を清めました。
 その後、職場に顔を出して雑務を片付けましたが、結局は処理仕切れませんでした。時間が迫ってきていましたので、りゅーとぴあへと車を走らせました。

 白山公園駐車場は満車。陸上競技場の駐車場はガラガラなのになぜか満車で入れず。市役所駐車場も満車。結局西堀のコインパーキングに駐車することになりました。各ホールで公演がいくつも重なったせいでしょうか。

 いつものように、上古町に立ち寄って、楼蘭で腹ごしらえ。やっぱり美味しいですよね。いつにもに増してストレスいっぱいな毎日でしたが、食べて幸せな気分になって癒されました。ありがたいことです。
 私が食べ終わった頃、いつもお世話になっている某氏が入って来られました。私と入れ違いでしたが、絶品の冷やし中華を是非味わって下さい。

 さて、客席は自由席ですし、ロビーコンサートもありますので、早足で白山公園を抜けてりゅーとぴあへと急ぎました。
 りゅーとぴあ・劇場ではピーターパンの開演が迫っており、係員が早い入場を促していました。コンサートホールの方は、開場待ちの列が伸びており、私もその列に並びました。
 開場時間となり、いつものCブロックに席を取り、ロビーコンサートに臨むため、ロビーに出て最前列を確保しました。本当は3階バルコニーを狙ったのですが、3階は解放されていませんでした。
 時間となり、ロビーコンサートが始まりました。クラリネット二重奏、ホルン四重奏、弦楽三重奏、木管五重奏と続きましたが、いずれも素晴らしいアンサンブルで、個々の演奏技術も鍛え込まれており、うっとりと聴き入りました。いい演奏でした。

 ホールに戻り、この原稿を書きながら開演を待ちました。3階席は使用されませんでしたが、席はなかなか埋まりません。これまでになく空席が目立ちましたが、劇場では「ピーターパン」、県民会館では「アニー」という子供たちにも人気のミュージカルか2か所で同時開催という異常事態の影響が出ているものと思います。

 開演時間となり、A合奏の団員が入場。例年の如く弦が少なく、アンバランスな編成です。弦5部は、2-2-2-5-2 で、フルート 3、オーボエ 1、クラリネット 1、トランペット 4、トロンボーン 1、打楽器 3です。

 藤井先生が登場して、「カルメン行進曲」で開演しました。アンバランスな編成ということで、メロディラインが途切れることがありますが、小中学生によるいかにも初級者という演奏ながらも、オーケストラの味わいを感じることができました。
 2曲目は、「ハイドン・メロディーズ」です。初級者用の編曲ですが、お馴染みのメロディがでてきて、曲として楽しむことができました。子供たちのほのぼのとした演奏に、こころも暖かくなりました。
 曲間にはA合奏の代表者による挨拶と楽器紹介があり、楽しませてくれました。演奏終了後には、大きな拍手が贈られて、藤井先生に花束が贈呈されました。

 ステージに椅子が多数並べられて整えられる間にA合奏代表者による挨拶があり、続いてはABの合同演奏です。弦は増えて、11-12-6-12-4 となりましたが、人数的にはアンバランスな編成です。
 碇山先生による指揮で、「鍛冶屋のポルカ」と「ハンガリー舞曲第6番」が演奏されましたが、先ほどのA合奏とは全く異なり、素晴らしいオーケストラサウンドであり、演奏の質の高さに感嘆しました。A合奏のすぐ後の演奏ですので、その違いに唖然としました。

 休憩後の後半は、いよいよ真打のB合奏です。弦5部は、9-10-7-8-4 と小振りです。ハープが2台並べられ、団員の末席にはお馴染みの指導者の先生のお姿もありました。指揮は碇山先生です。

 まずは、シャブリエの狂詩曲「スペイン」です。明るく華やかな演奏は、まさにスペインの空気感です。指導者として出演している本間美恵子さんのタンバリンが演奏を締めてくれて、陰の立役者といえましょう。すかっと爽やかな、気持ちよい演奏に、B合奏の素晴らしさが感じられました。

 ステージが整えられて、いよいよメインのドヴォルザークの交響曲第8番です。第1楽章冒頭のチェロの合奏がバッチリと決まり、その後のフルートも完璧で、今日の名演が約束されました。良くまとまった素晴らしい演奏で、劇的に盛り上がるフィナーレに胸は高鳴りました。
 欲を言えば、フルートは5人もいるのに弦が少なく、14型は無理にしても、せめて12型くらいならもっと弦に厚みが出て良かったかなと感じました。でも、この編成でも十分に美しいアンサンブルでした。
 第2楽章は、弦楽合奏による出だしが美しく、フルートとクラリネットが美しく絡み合い、激しさと静けさ、動と静の対比も美しく、高らかに、壮大に音楽を歌い上げました。途中のコンミスのソロも美しく、ティンパニも頑張っていました。特に弦楽アンサンブルの美しさには息を呑みました。
 第3楽章の舞曲も美しく、第1ヴァイオリンが奏でる主題の美しさに酔いしれ、うっとりと音楽に浸り、ボヘミアの空気感を満喫しました。
 そして、アタッカで突入した第4楽章は、冒頭のトランペットソロがバッチリと決まりました。チェロに導かれて曲が進み、低弦群とヴァイオリンの対比も鮮やかであり、フルートも美しかったです。
 オケはエネルギーを増して金管が鳴り響き、つかの間の静けさの後、チェロが優しく歌い、しばしの静寂からフィナーレへとギアチェンジし、どんどんとパワーを増して、アクセルを踏んで、一気に感動と興奮のフィナーレへと突進しました。
 この盛り上がりは素晴らしく、大きな感動を生みました。一貫してオケのサウンドはクリアであり、音は美しく、フォルテシモでも荒れることはありません。これまで新潟のアマオケで聴いた中でも最良の演奏ではなかったのではないでしょうか。この演奏は「伝説のドボ8」として末永く語り継がれることでしょう。

 大きな拍手が贈られて、カーテンコールで碇山先生に花束が贈られて、碇山先生の挨拶もあり、いよいよアンコールの「威風堂々」です。オケが若干増強され、ハープ2台も加わり、オルガン席に石丸由佳さんがスタンバイしますと、否が応でも胸が高鳴ります。
 演奏は言うまでもありません。7月末に東京交響楽団の演奏を聴いたばかりなのですが、演奏技術は別にして、音楽的感動はこちらがはるかに上です。プロの演奏には感じることのない、心を揺り動かすパワーがそこにあります。
 高校3年生はこれが最後の演奏であり、去り行く団員の思い、送り出す団員の思い、それを見守る指導者たちとご家族、そして同じ空間を共にする聴衆。それぞれの思いが渾然一体となってホールを満たし、プロオケでもなしえない感動と興奮を生み出しているものと思います。
 後半にオルガンが加わる頃には感動の涙がこぼれ落ち、胸は高鳴り、感動の嗚咽をこらえることなどできなくなりました。こぼれ落ちる涙を手でぬぐい、力の限りに拍手を贈り、団員たちの頑張りを讃え、生きる勇気とパワーをいただいたことに感謝しました。

 これで来年までもう1年頑張れそうです。来年の定期演奏会を目指して、試練に負けず、身を粉にして働き続けたいと思います。
 

(客席:2階C6-11、¥700)