TOKI弦楽四重奏団20周年記念・新潟シンフォニエッタTOKI デビュー
スペシャルWプログラムコンサート
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2023年8月5日(土) 13:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
TOKI弦楽四重奏団(Vn1:鍵冨弦太郎、Vn2:平山真紀子、Va:鈴木康浩、Vc:上森祥平)
Vn:井上静香、小杉芳之、小形 響、上敷領藍子、佐々木友子、廣川抄子
Va:小熊佐絵子、島田 玲、Vc:渋谷陽子、福富祥子、Cb:佐野央子
 
〜TOKI弦楽四重奏団20周年新たなスタート〜

 シュルホフ:弦楽四重奏曲第1番より 第1楽章
 ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 作品10

(休憩15分)

〜新潟シンフォニエッタTOKI 未来へ、新潟から今出発〜

 ロッシーニ:弦楽のためのソナタ第1番 ト長調
 ショスタコーヴィチ(バルシャイ編):室内交響曲 ハ短調 作品110a
                  (弦楽四重奏曲第8番編曲版)

(休憩15分)

 チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲 イ長調 作品33 (弦楽合奏版)
          チェロ:上森祥平
 チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48

(アンコール)
 曲目不詳
 

 このコンサートは、2002年に設立された「TOKI弦楽四重奏団」の活動20周年記念公演と「新潟シンフォニエッタTOKI」のデビューコンサートを兼ね合わせたスペシャルWプログラムコンサートです。
 2つのコンサートを同時開催という内容たっぷりなコンサートのため、13時開演という変則的な時間になったようです。明日は東京の第一生命ホールで公演が予定されており、終演時間を遅らせたくなかったものと推測します。

 昨年新潟に縁のあるプロの音楽家により「新潟A・フィルハーモニック」というアンサンブルが活動を開始し、今年の6月に第2回定期演奏会を開催しています。
 これとは別に、今年設立された「一般社団法人 新潟クラシック音楽協会」が、「TOKI弦楽四重奏団」のメンバーを母体に、新潟出身・縁・在住のプロの音楽家により結成したのが「新潟シンフォニエッタTOKI」です。
 同じようなコンセプトの弦楽アンサンブルが相次いで結成され、共倒れしないかと勝手に心配しているのですが、余計なお世話ですね。ともあれ、新潟の音楽シーンの活性化が感じられて、うれしいことだと思います。

 「TOKI弦楽四重奏団」や編成を大きくした弦楽アンサンブルでの演奏会は、毎年夏に開催されており、私も何度か聴かせていただいていますが、毎回マニアックなプログロムがあって楽しませてくれています。昨年は所用で聴きに行けませんでしたので、2021年以来2年ぶりになります。
 今回からヴァイオリンの岩谷祐之さんが抜けて、代わりに鍵冨弦太郎さんが加わり、どんな演奏を聴かせてくれるのか楽しみでした。
 そして、今回は「新潟シンフォニエッタTOKI」の記念すべきデビューコンサートです。チラシに載っているメンバーの名前やプロフィールを見ますと実力者揃いで、ワクワクしてきます。
 新しいもの好きの私は、これまでも新しい団体が活動を開始するたびに駆けつけており、今回も是非とも参加させていただきたいと思い、チケットを買って楽しみにしていました。

 梅雨明けとともに連日の猛暑で、うんざりな毎日が続いています。昨日から新潟まつりが始まり、昨夜は大民謡流しが開催され、明日は花火大会と、新潟の暑い夏は、熱く盛り上がっています。

 今日も朝からギラギラと太陽が照りつけて、暑い1日が始まりました。与えられた雑務をこなし、所用を終えて、ゴミ出しをし、猛暑の中にりゅーとぴあへと向かいました。
 白山公園駐車場は満車の表示が出ていましたが、空きを見つけて何とか駐車できました。祭りで賑わう白山神社を通って上古町を歩き、いつもの楼蘭で腹ごしらえ。今日も店内に入るなり「いつものですね」と言われてしまいました。実際そうなんですが、もはや他のメニューは注文できません。極上の冷やし中華をいただいて、幸せ気分。最高ですね。

 白山神社の露店の賑わいを抜けて、県民会館に立ち寄ってみますと、NGT48のコンサートが開催中でした。大ホールで2公演開催というのはすごいですね。

 りゅーとぴあに入りますと既に開場されており、私も入場して、この原稿を書きながら開演を待ちました。客席にはご高齢の方が多かったですが、マスクをしないでおしゃべりの花。第9波の最中なんですけどね。高齢者は注意した方が良いのですけれど。
 客席の多くの人はマスクなし。こんなにも非マスク率の高いコンサートはコロナの時代になって初めてです。私が参加した先月末のコンサートまでは全員マスクを着けていたのですけれど。客層はいつものクラシックコンサートとは大きく異なるようです。
 第9波が急拡大中で、毎日緊張感を持って精神をすり減らしながら仕事している者としましては、少なからず空しさと危機感を感じてしまいます。

 開演時間となり「TOKI弦楽四重奏団」の4人が登場。挨拶代わりにシュルホフの弦楽四重奏曲第1番の第1楽章をかっこ良く演奏して、観客の心をつかみました。第1ヴァイオリンは新入団の鍵冨さんですが、なかなかの演奏ですね。
 プログラムノートには「TOKI弦楽四重奏団20周年記念コンサート」の開始を告げるファンファーレだと書いてありましたが、まさにその通りで、短い演奏でしたがホールに熱い音楽が響き渡りました。今度は全曲を聴いてみたいですね。

 ここで、司会進行のフリーアナウンサーの遠藤さんが登場して、「TOKI弦楽四重奏団」の紹介や新メンバーの鍵冨さんの紹介などをしてくれました。

 続いてはメインのドビュッシーの弦楽四重奏曲です。室内楽に疎い私は、なかなか聴く機会がないのですが、緊張感が漂う出だしから、一気に演奏に引き込まれました。激しく絡み合う4人の奏者たち。20年来の旧知の3人に新しく加わった鍵冨さんは、新しい息吹きをもたらしていました。
 第2楽章の生き生きとしたピチカートとの絡み合い。混沌とした中に躍動感を感じました。第3楽章のゆったりとした幽玄な怪しげな響きも美しく、染み渡るような美しい音色にうっとり聴き入りました。そして、不安な心をたたみ掛けるように揺すり、大きなうねりの中にフィナーレとなりました。曲の良さを知らしめてくれ、20周年を記念するにふさわしい素晴らしい演奏だったと思います。

 「TOKI弦楽四重奏団」の20周年記念演奏会を終えて、休憩後は「新潟シンフォニエッタTOKI」のデビューコンサートになります。
 司会の遠藤さんが登場して、ヴィオラの鈴木さんとのトークがありました。鈴木さんは「新潟シンフォニエッタTOKI」の音楽監督の役目を担っているそうです。このアンサンブルの紹介とこれから演奏する曲目の紹介がありました。

 1曲目は、ロッシーニの弦楽のためのソナタ第1番です。鈴木さんの解説にありましたが、ヴァオリン、チェロ、コントラバスという編成でヴィオラはありません。ヴァイオリンは4人ずつ左右に分かれ、中央にチェロ2人とコントラバスが配置されました。
 弦楽アンサンブルの息を呑む美しさに圧倒されました。これだけのメンバーですから良いことは分かってはいたのですが、透き通るような柔らかな響きが心地良く、曲もさることながら、アンサンブルの美しさを堪能しました。なお、この曲はロッシーニが12歳のときの作品ということにも驚きました。

 ここでMCがあり、平山さんとのトークがありました。選曲や構成はこれまですべて平山さんがやってきたんだそうですね。確かに、平山さんあっての「TOKI弦楽四重奏団」ですものね。
 そして、これから演奏するショスタコーヴィチの室内交響曲が本日のメインだと話されていました。戦争によって傷ついたショスタコーヴィチの思いが込められたこの曲を、戦争に苛まれている今の時代だからこそ演奏したかったとのことでした。
 編成は第1ヴァイオリン4人、第2ヴァイオリン4人、ヴィオラ3人、コントラバス1人と、全15人の編成で、コンマスは鍵冨さんです。
 弦楽四重奏曲第8番をルドルフ・バルシャイが弦楽合奏用に編曲したものですが、予想通りに、暗くて切々と胸に訴えかけてくる音楽に圧倒されました。
 各楽章は切れ目なく演奏されますが、悲痛な悲しみにくれる第1楽章から砲弾が飛び交うような激しい第2楽章。あらあらしく、せわしなく駆け回る第3楽章。重苦しくのしかかってきて暗雲に飲みこまれてしまう第4楽章。暗くて重々しい空気が淀み、胸が締め付けられるような第5楽章。消え入るような悲しみに中で曲を閉じました。
 これは素晴らしい演奏でした。この演奏を聴けただけで、この演奏会に来た甲斐があり、これで終わりでも良いようにさえ感じました。
 15人の見事なアンサンブル。時折出てくる鍵冨さんのヴァイオリンの悲しい音が、剃刀のように胸を静かに切り裂き、じわじわと出血してくるような感じを受けました。いい演奏でした。

 ここで2度目の休憩が入り、中央にチェロの演奏台が設置され、上森さんを独奏者として、チャイコフスキーのロココ風の主題による変奏曲です。
 これは先ほどの暗さから一転して、楽しく聴かせていただきました。上森さんの演奏の素晴らしさ、バックを支える14人の奏者と美しく絡み合い、生き生きとした音楽が湧き上がりました。
 何も言うことはありません。ブラボーを叫びたくなるような快演だったと思います。心を豊かにしてくれる音楽。新潟つながりの15人の奏者の親密さが生み出した軌跡の音楽がそこにありました。

 ここでMCがあり、この間にチェロの演奏台が片付けられました。演奏を終えたばかりの上森さんとのトークがあり、そのお話しも楽しかったです。曲目紹介があって、最後は弦楽アンサンブルの定番曲のチャイコフスキーの弦楽セレナーデです。
 これは何も言うことはありません。誰もが知る名曲中の名曲を、渾身の演奏で楽しませてくれました。ホールの音響の良さもあって、ふくよかな弦楽の音がホールを満たし、包み込むように客席に降り注ぎました。
 力強くテーマを奏でる第1楽章。ウキウキと踊りたくなる第2楽章のワルツ。切々と心にせまり、心の琴線をくすぐる第3楽章のエレジー。そして終楽章はフナーレでギアチェンジ。どんどん加速して高揚感が高まり、頂点に達したところで終演になりました。
 演奏の良さが、この曲の新たな魅力を再認識させてくれました。これまで生で聴いてきたこの曲の演奏の中でも最高クラスの演奏だったかもしれません。まあ、過去の記憶は失われていますけれど。
 ともあれ最後を飾るに相応しい演奏に、感動で胸は高鳴り、力の限りに拍手を贈りました。ボリュームたっぷりな内容豊富な演奏をしてくれたメンバーたちをホールの聴衆全員で讃えました。

 これだけのコンサートでしたから、アンコールはないものと思っていましたが、鍵冨さんの挨拶があって、アンコールが演奏されました。
 曲目の発表がなく、曲名は分かりませんでしたが、上森さんのチェロで始まるしっとりとした美しい曲で、先ほどの弦楽セレナーデの興奮を鎮めてくれました。極上のデザートをサービスしてくれて感謝したいと思います。

 そして最後の最後は記念写真の撮影会となりました。SNSにアップしてくださいとのとこで、私も写真をとらせていただきました。

 終演は16時を回って、3時間以上にもなったコンサートは無事に終了しました。「TOKI弦楽四重奏団」の20周年を祝い、「新潟シンフォニエッタTOKI」の門出を祝いました。この記念すべきコンサートに参加して本当に良かったと思いました。

 大きな満足感を胸にホールを後にしましたが、「TOKI弦楽四重奏団」の演奏会には必ず来られている元新潟県知事の平山さんのお姿がロビーにありました。これからもお元気で活躍され、新潟の音楽界を蔭で支えていただきたいと思います。

 明日の8月6日は東京で同じ内容の公演が行われます。盛況となりますことを祈りながら、猛暑の中に賑わう白山神社を横目に、家へと向かいました。

  

(客席:2階C5-11、S席: \5000)