ウルトラ・スーパー・チェロズ
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2021年5月1日(土)14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
チェロ:西谷牧人、大宮理人、木慶太、山澤 慧
 


サン=サーンス(西谷牧人編):白鳥
日本民謡(幸松肇編):八木節

平部やよい編:映画音楽メドレーU
  ライムライト〜シャレード〜二人でお茶を〜シェルブールの雨傘

トーマス・ミフネ編:アルゼンチンタンゴ集
  帰ってきた彼女〜ブエノス・アイレスのカフェにて〜クリスタル

(休憩20分)

石島栄一編:ディープ・パープル・メドレー

阿部俊祐:レクイエム 〜井伊準の思い出に〜

西谷牧人:15(fifteen)
西谷牧人:優駿 ―Field of Hope―

(アンコール)
J.S.バッハ:G線上のアリア
 

 このコンサートは本来であれば昨年5月3日に、りゅーとぴあ・能楽堂で開催されるはずでしたが、残念ながら新型コロナ感染のため中止されました。あれから1年を経ても新型コロナ感染はさらなる拡大を続けていますが、昨年のリベンジ公演がコンサートホールに場所を変えて実現しました。

 ウルトラ・スーパー・チェロズは新潟での公演のためだけに結成されたチェロ・カルテットで、メンバーは、元東京交響楽団首席奏者で新潟でもすっかりお馴染みの西谷さんを中心に、同じく東京交響楽団で活躍した大宮さん、読売日本交響楽団の木さん、藝大フィルハーモニアと千葉交響楽団で主席を務める山澤さんの4人です。

 西谷さんは東京交響楽団新潟定期演奏会の日に恒例の東響ロビーコンサートに何度か出演されており、自身のオリジナル曲を始め、多彩な演奏で楽しませてくれました。
 大宮さんは東京交響楽団退団の日のロビーコンサートに出演され、西谷さんとともに素晴らしい演奏を聴かせてくれたことをよく覚えています。
 後の2人は存じ上げませんが、オケのほか自身のユニットで活発な活動をされており、素晴らしい演奏が聴けるものと期待して、発売とともにチケットを買って楽しみにしていました。
 その後新型コロナ感染の拡大が進み、東京には緊急事態宣言が出され、県をまたぐ移動の自粛が求められる中で、このコンサートがどうなるのか心配しましたが、無事に開催されて何よりと思います。


 さて、GWとは言うものの、天候はすぐれず、気分も晴れません。新型コロナで行楽どころではありませんが、感染に注意の上、コンサートだけは行かせていただくことにしました。

 いつもよように洗濯、掃除、ゴミ出しをし、ゆっくりと昼食を摂り、小雨がぱらつく中に車を進めました。本降りにはなりませんでしたが、駐車場からりゅーとぴあへと小走りしました。インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、ロビーでこの原稿を書きながら開場を待ちました。

 ほどなくして開場時間となり、2階正面に席を取りました。客席は2階ステージ周りと3階は使用されず、席は間隔を空けず、通常通りに販売されました。そのため、ホール全体としては余裕いっぱいながら、客は中央に密集・密接の状態になっていました。このご時世にそぐわない光景に、奇異な感覚を感じざるを得ませんでした。
 おしゃべり、声だし厳禁のクラシックコンサートは感染リスクは乏しいとは思いますが、実際は開演前や休憩時間にはご婦人方のおしゃべりが賑やかというのが実態です。鑑賞マナーを守っていただきたいものです。
 
 開演時間となり、4人が登場して「白鳥」で開演しました。バッハの無伴奏チェロ組曲第1番のプレリュードのメロディに載せて優雅な「白鳥」のメロディが奏でられ、うっとりと聴き入りました。

 続いては「八木節」。楽器を叩いたり、掛け声を出したりと威勢もよく、聴き映えする演奏に仕上がって楽しませてくれました。

 ここで西谷さんのトークがあり、以後4人が曲毎に位置を変えて演奏が進められました。まずはお馴染みの映画音楽メドレーで、美しいメロディに酔いました。最後はそれぞぞれの曲が回帰するという編曲の良さもあって楽しく聴かせていただきました。

 続いてアルゼンチン・タンゴの名曲がメドレーで演奏されました。情熱を秘めた美しいアンサンブルが大人の音楽を奏でて魅了しました。

 休憩後の後半は、ロックテイストあふれるディープ・パープル・メドレーで開演しました。大宮さんを中心に激しく演奏し、否応なく盛り上げてくれました。

 ここで西谷さんのMCで各メンバーの活動状況などが順に紹介され、最後に山澤さんが、チェロアンサンブルXTCで共に活動し2014年に急逝された井伊準さんの思い出が話されました。井伊さんは東京交響楽団のメンバーでもあり、2012年5月の東響ロビーコンサートで西谷さんらと共に出演されていました。
 その井伊さんの死を悼んで、友人の阿部俊祐さんが作曲したレクイエムについての紹介があり、そのまま演奏に入りました。
 レクイエムということで、しんみりとした出だしでしたが、後半は明るさも感じさせ、美しいメロディとハーモニーが胸に染みました。チェロアンサンブルのレパートリーとして広く演奏されることが井伊さんへの追悼となると話されていましたが、いい曲ですので、またいつか聴かせていただきたいと思います。

 続いて西谷さんのトークがあり、西谷さんの自作曲が2曲続けて演奏されました。2曲とも西谷さんが出演した東響ロビーコンサートで聴いたことがありました。
 「15」は、東京交響楽団ヴァイオリン主席の清水泰明さんとのユニット「清水西谷」のための曲で、7拍子の部分と8拍子の部分とからなり、7+8=15 ということのほか、作曲したのが2015年、西谷さんも清水さんも15日生まれなど、15にはいろんな意味があるようです。
 演奏はとにかく「カッコイイ!」という感じです。多彩な演奏法を駆使して、耳によく馴染むリズムで楽しませてくれました。

 最後は「優駿」です。サラブレッドが走る姿をイメージして作曲したそうですが、今日の1曲目と同様に、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番のプレリュードに始まり、サラブレッドが走る様子が音楽で表現され、最後は馬のいななきが聴こえるようでした。
 春の草原を吹き抜ける爽やかな風を感じさせ、駆け抜ける白馬が眼前に浮かび上がるように感じました。これもいい曲であり、いい演奏でした。

 拍手に応えて、アンコールはバッハの「G線上のアリア」をしっとりと、美しいアンサンブルで演奏し、新型コロナ禍で疲れた心に癒しを与え、チェロの魅力をたっぷりと再認識させてコンサートを締めくくりました。

 4人とも素晴らしい演奏でした。曲毎に各人がメインとなって演奏し、それぞれの個性が発揮され、大いに楽しませていただきました。臨時編成のカルテットということでしたが、臨時とは言わず、再び楽しませていただきたと思います。

(客席:2階C2-9、¥3000)