飴屋
十月三十日。午後四時。 拝島の停車場で四時五十三分立川行の列車を待つ。前の茶店にあめやが何だか長い節で太鼓をたゝきながら唄つて居る。さびた聲だ。低く動く雲の間から、時々淡い秋の日がもれる。よくきいて居ると、唄は國定忠治だ。其長い節と太鼓の音とが、静かに村の空氣に傅はつて、純日水的な節□を志みゞと思はせる。柳の枝はながくたれて動かぬ。
渡辺与平