移動タンク貯蔵所の構造・設備基準

移動タンク貯蔵所とは、タンクローリーなど、車両に固定したタンクで危険物を貯蔵・取り扱う施設です。 ガソリン、灯油、軽油などの危険物を運搬するために広く利用されています。

移動しながら危険物を扱うという特殊性から、タンクの構造、容量、仕切り、 安全装置、底弁、標識、静電気対策などについて基準が定められています。

1. 移動タンク貯蔵所の基本構造

移動タンク貯蔵所では、車両に固定されたタンクに危険物を積載します。 タンク内部は必要に応じて仕切られ、走行中の液体の揺れを抑えるための防波板などが設けられます。

移動タンク貯蔵所(タンクローリー)の構造イメージ

危
危険物を移送する車両であることを示す標識
車両に固定された危険物タンク

タンクは厚さ3.2mm以上の鋼板又はこれと同等以上の機械的性質を有する材料で気密に造ります。

タンク室
危険物を収納する区画
防波板
(液体の揺れを抑える)
タンク室
4,000L以下ごとに 完全な間仕切りで区画
防波板等
タンク室
各タンク室には、 マンホール・安全装置を設ける
⚡ 静電気対策:接地導線などにより静電気による火災を防止

※図は構造を理解するための模式図です。実際の車両の構造や設備は、取り扱う危険物や形式によって異なります。

2. タンクの容量と仕切り

① タンク全体の容量

移動タンク貯蔵所のタンクは、危険物を安全に輸送するため、 その容量について基準が設けられています。

タンクの容量: 一の移動タンク貯蔵所におけるタンクの容量は、 30,000L以下とされています。

② タンク室の仕切り

タンクは、内部を複数のタンク室に仕切って使用することができます。 複数の危険物を積載する場合などにも利用されます。

タンク室: 内部は4,000L以下ごとに、厚さ3.2mm以上の鋼板又はこれと同等以上の機械的性質を有する材料で造られた 完全な間仕切りで区画されます。

※タンクの容量・間仕切りについては、法令上の例外や細かな条件があります。 実際の設計・検査では、消防法令および関係する技術基準を確認する必要があります。

3. 防波板(波よけ板)

タンクローリーが走行すると、タンク内部の液体が前後左右に揺れます。 この液体の移動が大きくなると、車両の走行安定性に影響するおそれがあります。

そこで、容量が2,000L以上のタンク室には、液体の揺れを抑えるための 防波板(厚さ1.6mm以上の鋼板又はこれと同等以上の機械的性質を有する材料で造られたもの)が設けられます。

防波板の役割

4. 安全装置

危険物を収納したタンクでは、温度変化などによるタンク内圧力の変化に対応する必要があります。 そのため、各タンク室には圧力を安全に調整するための 安全装置が設けられます。

安全装置は、タンク内部の圧力が異常に上昇することを防止するための安全弁等で、次の圧力で作動するものとされています。

※安全装置の種類・構造については、タンクの形式や取り扱う危険物によって細かな基準があります。

5. 底弁・緊急遮断装置

タンク下部から危険物を排出する構造では、配管や弁が損傷した場合に備えて、 危険物の流出を防止するための設備が重要になります。

そのため、タンク下部に排出口を設ける場合は、排出口に底弁を設けるとともに、 非常の場合に直ちに底弁を閉鎖できる手動閉鎖装置及び自動閉鎖装置(緊急遮断装置)を設けます。

緊急遮断装置の役割

事故などによって配管が破損した場合に、タンクから危険物が大量に流出することを防止します。

手動閉鎖装置にはレバーを設け、手前に引き倒すことで作動する構造とし、レバーの長さは15cm以上とされています。

※引火点が70℃以上の第4類の危険物を収納する排出口や、直径が40mm以下の排出口に設ける底弁は、自動閉鎖装置を省略できるなど、危険物の種類や排出方式によって適用される基準が異なります。

6. 静電気対策

ガソリンなどの危険物をタンクへ注入したり、タンクから排出したりするときには、 静電気が発生することがあります。

静電気による火花が可燃性蒸気に着火すると火災につながるおそれがあるため、 ガソリンその他静電気による災害が発生するおそれのある液体の危険物を移動貯蔵タンクに出し入れする際は、 静電気を安全に逃がすための接地導線(アース線)を設けることとされています。

危険物の積込み・荷卸し作業では、接地などの静電気対策を適切に行うことが重要です。

7. 「危」の標識

危険物を移送する移動タンク貯蔵所には、 外部から見て危険物を積載している車両であることが分かるよう、 所定の標識を表示します。

危

「危」の文字を表示した標識

黒地の板に、黄色の反射塗料等で「危」の文字を表示し、車両の前後の見やすい箇所に掲げます。大きさは0.3m平方以上0.4m平方以下とされています(車両で危険物を運搬するときの標識と同じ様式です)。

8. 移動タンク貯蔵所の主な構造・設備

項目 主な内容 目的・役割
タンク 容量30,000L以下。厚さ3.2mm以上の鋼板等で気密に造る。 危険物を安全に貯蔵・運搬する。
タンク室 4,000L以下ごとに完全な間仕切りで区画。 危険物を区分して積載する。
防波板 容量2,000L以上のタンク室に設置。厚さ1.6mm以上の鋼板等。 走行中の液体の揺れを抑え、車両の安定性を確保する。
安全装置 常用圧力20kPa以下は20kPa超24kPa以下、20kPa超は常用圧力の1.1倍以下で作動。 異常な圧力上昇などを防止する。
底弁・緊急遮断装置 手動閉鎖装置(レバー長さ15cm以上)+自動閉鎖装置。 事故時などの危険物の流出を防止する。
接地導線等 危険物の積込み・荷卸し時などの静電気対策に使用します。 静電気による火花・着火を防止する。
「危」の標識 黒地に黄色文字、大きさ0.3㎡以上0.4㎡以下。 周囲に危険物積載車両であることを知らせる。

9. 危険物を運搬するときの関係書類

移動タンク貯蔵所で危険物を運搬するときには、 車両の構造・設備だけでなく、運搬する危険物に関する必要な情報を確認できるようにすることも重要です。

運搬時には、危険物の品名、数量、指定数量の倍数などを確認できる関係書類を備える必要があります。

ポイント: これは移動タンク貯蔵所そのものの構造基準とは別に、 危険物の運搬に関係するルールとして考えると分かりやすくなります。

10. 保安距離・保有空地について

移動タンク貯蔵所は、製造所や屋内貯蔵所などのように、 一定の場所に固定して設置する危険物施設とは性格が異なります。

そのため、固定された危険物施設について定められている 保安距離や保有空地の基準とは、取り扱いが異なります。

移動タンク貯蔵所について考える場合は、 「固定された施設の周囲に確保する空地」という考え方ではなく、 車両に固定された危険物タンクの構造・設備と、移送時の安全確保 という観点から理解すると分かりやすくなります。

11. まとめ

移動タンク貯蔵所(タンクローリー)は、危険物を積載した状態で道路などを移動するため、 固定された危険物施設とは異なる安全対策が必要です。

※このページは、移動タンク貯蔵所の構造・設備について基本的な事項を理解するための解説です。 実際の施設の設置・変更、検査等については、最新の消防法令、政令、省令および所轄消防機関の指導・基準を確認してください。