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先週の中川優芽花さんのリサイタルに引き続いて、今週は鈴木愛美さんのリサイタルです。中川さんのリサイタルとのセット券で、安価に聴かせていただくことにしました。
新潟で鈴木愛美さんといえば、ソプラノの鈴木愛美さんですが、今回はソプラノではなく、ピアノの鈴木愛美さん です。
鈴木さんは、2002年に大阪で生まれたとのことですので、中川さんの1歳下となりましょうか。2023年の第92回日本音楽コンクール・ピアノ部門第1位、第47回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、2024年の第12回浜松国際ピアノコンクールで日本人初の第1位と、輝かしい実績を残しておられます。
昨年6月には、第12回浜松国際ピアノコンクール入賞者ガラコンサートがりゅーとぴあで開催され、鈴木さんの演奏を聴かせていただきました。そのときの曲目が、先週中川さんが演奏したシューマンの幻想小曲集だったというのも何かのつながりのようで、興味深く感じました。
ということで、昨年6月以来、2度目の鈴木愛美さんの演奏を聴かせていただくことになりました。今回のプログラムはオール・シューベルトという興味深いものです。ピアノは先週の
SK-EX ではなく、通常のスタインウェイD274 です。
鈴木さんのシューベルトといえば、グランプリを受賞した第47回ピティナ・ピアノコンペティション特級のセミファイナルで、ピアノソナタ第18番「幻想」を演奏しており、私はネットで視聴して感銘を受けました。
今回はピアノソナタ第16番を演奏するというのも楽しみです。この第16番といえば、どうしても野田恵の演奏が忘れられないのですが、わかってくれる人はおられますでしょうか。この思い入れのある曲を、鈴木さんはどんな演奏で聴かせてくれるでしょうか。
また、即興曲集は、昨年11月にツイメルマンの演奏を聴いて感動した記憶がまだ新しく、鈴木さんがどんな演奏をしてくれるのか期待が高まりました。
昨日は暴風が吹き荒れて大変でしたが、今日は風は強いものの朝から青空が広がりました。連休初日の朝、いつものルーチンワークをこなし、雑務を終えて簡素な昼食を摂り、りゅーとぴあへと向かいました。
いつもの白山公園駐車場に車をとめて、強風が吹く中に、まずは県民会館に行き、某コンサートのチケットを買い、りゅーとぴあ入りしました。
チラシ集めをしていましたら、お世話になっている音楽仲間と出会い、いろいろお話ができて良かったです。話し込んでいるうちに開場となり、入場してこの原稿を書きながら開演を待ちました。
客席は、先週の中川さんのリサイタルと同様に、1階席と2階のステージ周りを除いたB、C、Dブロックのみ使用されましたが、客の入りとしましては、中川さんの時よ
り若干少なめかもしれません。
開演時間となり、明るい紺色のゆったりしたドレスの鈴木さんが登場して、オール・シューベルト・プログラムの開演です。
1曲目は「高雅なワルツ集」です。力強いワルツで始まり、爽やかに、ゆったりと優しく、そして再び激しくと、緩急・強弱の大きなうねりを作り、緩急・強弱の対比も鮮やかに、全12曲のワルツを流れるように演奏して楽しませませてくれました。先週のSK-EX
との響きの違いは感じましたが、高音の煌きという点で、今日のスラインウェイD275も魅力的な音を出していました。
退場することなく、続けて2曲目は「即興曲集」です。第1曲は、長い和音の後に、寂しげにメロディを奏でて始まりました。力強い低音、繊細な高音と、柔らかく、しっとりと美しい音楽にうっとりとしました。嘆くような感情の高まり、揺れ動く心。その対比が見事であり、波を繰り返して、しっとりと終わりました。
第2曲は、一転して流れるように、軽やかに始まりました。激しくリズムを刻み、再び軽やかに流れて行きました。その流れは渦となって、力強く足踏みして、激しさの中に終わりました。
第3曲は、夢見るように穏やかに始まりました。柔らかな流れから感情を高ぶらせ、起伏の波を繰り返して穏やかに終わりました。
第4曲は、憂いを秘めたメロディが軽やかな流れとともに現れ、そして感情の高まりを見せて明るく踊って見せました。ちょっと暗い心の落ち込みと高ぶりを見せて、再び悲しげな音の流れとともに、足元を踏みしめるようにステップをして、明るさの中に終わりました。
緩急・強弱のアクセントを強調して、強奏部でも乱れることなく、緩徐部でのゆったりして繊細なピアノの響きに感銘し、鈴木さんの曲作りの素晴らしさに感動しました。客席からはブラボーの声も聞かれました。
休憩後の後半1曲目は「アレグレット ハ短調」です。穏やかに、しっとりと始まり、強弱の対比も鮮やかで、思いっきりゆったりと、柔らかく歌い、そして緩急を付けて、しっとりと終わりました。
続けて「ピアノ・ソナタ第16番」です。長い沈黙の後に演奏が始まりました。第1楽章は、ゆったりと主題を奏で、力強くリズムを刻んで始まりました。悲しげに主題を奏で、緩急・強弱のメリハリが見事であり、心に染み入るメロディが切なく響き、それに続く激しい高まりとの対比が素晴らしく感じました。休止の間の無音が心に響き、静けさや繊細さが心を打ちました。繰り返しの後に、激しさの中に終わりました。
第2楽章は、静かに、ゆったりと始まりました。軽やかに流れるように踊り回り、そして力強く足踏みをして大きな高まりとなり、そして静かにと、大きなうねりを作って繰り返し、軽やかな流れとともに高まりを見せて、穏やかに、静かに、しっとりと終わりました。
無音の静寂の後に、第3楽章は、緩急のメリハリを付けて心地良く始まりました。緩急・強弱の幅が大きく、否が応でも心が揺り動かされました。ゆったりとした静けさの中から炎が燃え上がり、ゆらめきながら終わりました。
第4楽章は、軽やかに、しかし悲しげに始まり、激しく感情を吐露しました。緩急・強弱を反復し、この対比が素晴らしく、心が揺さぶられました。激しく燃え上がって終わりました。
圧倒的な演奏に、ブラボーの声ととももに、大きな拍手が贈られました。鈴木さんは深々と、ゆっくりと礼をし、客席を見回しておられました。
カーテンコールの後、アンコールは「楽興の時 第2番」です。これまでの演奏と同様に、ゆったりと、しっとりと歌わせました。そして高まりを見せて、静けさの中に染み入るように終わりました。しばしの静寂の後に大きな拍手が沸き起こり、ブラボーが贈られました。
鈴木さんの演奏は一貫しており、緩急・強弱の幅を大きく取って、心に沁み込むような弱音の美しさに息を呑み、強奏部でも美しさを保ち、力で圧倒することはありません。鈴木さんならではの音楽世界が創り出され、うねりの大きなその流れに身を任せました。
この落ち着きのある演奏は、演奏後のカーテンコールでの身のこなしと呼応しているように思います。深々とゆっくりと礼をして拍手に応え、客席をじっと眺めて、再びゆっくりと礼をし、ゆったりとした足取りで退場。この一連の様子が演奏そのものと呼応しているようでした。
この若さで、独自の音楽世界を醸成し、聴衆の心を引き込むというのは大したものだと思います。先週の中川さんの演奏に感動したばかりでしたが、勝るとも劣らない素晴らしい演奏に出会えて幸運でした。
アンコールも含めて、オール・シューベルトというプログラムも秀逸であり、大いに楽しませていただきました。マイ・ベスト10候補に挙げておきたいと思います。
2週連続でこれほどの演奏に出会えるとは、全く予想しておらず、このようなコンサートを主催したりゅーとぴあ担当者にブラボーを贈りたいと思います。
日本の若手ピアニストの素晴らしさ、層の厚さを実感し、喜ばしい気分でりゅーとぴあを後にしました。強風は収まっており、穏やかな春の空気に満たされていました。この空気感は、まさに今日の演奏のように感じながら、駐車場へと歩きました。
(客席:2階C3-7、S席・セット券:¥2750) |