中川優芽花 ピアノ・リサイタル
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2026年4月24日(金)19:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
ピアノ:中川優芽花
 

ショパン:ポロネーズ第7番 変イ長調「幻想」Op.61

シューマン:幻想小曲集 Op.12
 第1曲 夕べに
 第2曲 飛翔
 第3曲 なぜ
 第4曲 気まぐれ
 第5曲 夜に
 第6曲 寓話
 第7曲 夢のもつれ
 第8曲 歌の終わり

(休憩20分)

シューマン:アベッグ変奏曲 Op.1

ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op.58
 第1楽章 アレグロ・マエストーソ
 第2楽章 スケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ
 第3楽章 ラルゴ
 第4楽章 フィナーレ:プレスト・ノン・タント

(アンコール)
メンデルスゾーン:無言歌集 Op.67-2 嬰ヘ短調
リスト:即興円舞曲 S213
シューマン:子供の情景 Op.15 より 第1曲 見知らぬ国の人々について
 

 今日は、2001年にドイツのデュッセルドルフに生まれ、ドイツで学び、2021年のクララ・ハスキル国際コンクールで19歳で優勝して一躍注目を集め、国内外での活躍が目覚ましい中川優芽花さんのリサイタルです。
 2025年のショパン国際コンクールで2次予選に進出し、私もその演奏をネット配信で視聴し、独自の音楽世界を作り上げた演奏に感銘を受けました。なぜ3次に進めなかったのか不思議なくらいの個性的で魅力的な演奏でした。
 今回は、そのショパン国際コンクールで実際に使用したピアノの Shigeru Kawai SK-EX(159号機)をりゅーとぴあに持ち込んで演奏するということも注目されました。

 プログラムは、ショパンとシューマンですが、楽しめそうな曲ばかりです。特にショパンの幻想ポロネーズは、昨年のショパンコンクールのファイナルの課題曲であり、ピアノ・ソナタ第3番は3次予選の課題曲でした。順調に予選を通過すればワルシャワで弾くはずだった曲を、新潟の地で聴けるというのは魅力的に思われました。
 今回は、5月2日の鈴木愛美さんのリサイタルとのセット券が割安に発売されましたので、そのセット券を買って楽しみにしていました。

 コンサートラッシュの怒涛の3月を終えて、予定が目白押しの5月を前にし、4月は大人しく雑務に励んで過ごしてきました。
 りゅーとぴあでのコンサートは、3月29日の東響新潟定期以来ですので、随分と久しぶりになります。4月としては、これが最初で最後であり、私としましては異例な月となりました。たまにはこういうこともあっていいのかなと思っています。

 ということで、仕事を早めに切り上げてりゅーとぴあへと向かいました。途中渋滞があって間に合うのか心配しましたが、開演15分前に入館し、久し振りにチラシ集めをして入場しました。
 客席は、3階と2階ステージ周りは使用されませんでしたが、それなりの集客でした。ステージにはピカピカの SK-EX が鎮座しており、期待が高まりました。

 開演時間から2分ほど過ぎたところで、シルバー(?)のパンツ、黒ジャケットの衣装で、銀色でピカピカに輝く靴の中川さんが登場しました。
 1曲目は、ショパンの「幻想ポロネーズ」です。ゆっくりと、十分にピアノを響かせて演奏が始まりました。残響豊かなコンサートホールに、ソフトで芳醇なピアノが響き、先入観もあるのかもしれませんが、いつものスタインウェイとは違った響きを感じました。
 さざ波が、やがて大きなうねりを作り、柔らかなサウンドが、ゆったりとした音の流れとなり、夢の中の幻想の世界に誘われました。
 最後は大きく感情を高ぶらせましたが、こんなにも繊細で美しい「幻想ポロネーズ」は、これまでに聴いたことはありません。瞑想的なこの曲の魅力を倍増して、新たな世界を創り出し、中川さんの個性とその素晴らしさが1曲目から如実に感じ取られました。最後はクリアで突き抜けるような一撃で終わり、大きな拍手が贈られました。

 退場することなく椅子に座り、続いてはシューマンの「幻想小曲集」です。第1曲「夕べに」は、先ほどのショパンからシームレスに繋がるように、繊細でソフトでした。
 第2曲「飛翔」は、激しく主題を奏でましたが、この場面以外の優しくソフトな響きとの、緩急・強弱の対比が絶妙でした。
 第3曲「なぜ」は、ゆったりと、繊細で柔らかく演奏し、第4曲「気まぐれ」は、激しくリズムを作って、力強く足踏みをし、緩急・強弱のアクセントが美しく感じられました。
 第5曲「夜に」は、激しく感情を揺り動かし、起伏の激しさにノックアウトされました。第6曲「寓話」は、ゆったりと始まり、そして軽快に、緩急のメリハリを付けて、フルスピードで走り、ゆったりと終わりました。
 第7曲「夢のもつれ」は、速歩で走り回り、トムとジェリーの追いかけっこのようでした。ゆったりとするも、再び激しく駆け回りました。
 最後の第8曲「歌の終わり」は、堂々と力強く始まり、一歩ずつ踏みしめるように、高見へと昇っていくようでした。歩むスピードを上げて駆け回り、再び力強く威風堂々と、風格とともに凱旋するかのようでした。そして、ゆったりと、穏やかさの中に終わり、大きな感動をホールにもたらして、大きな拍手が贈られました。

 休憩後の後半は、シューマンの「アベッグ変奏曲」で開演しました。ゆったりと穏やかに美しく、愛を込めるかのように主題を奏でて始まり、次々と形を変えて進みました。
 軽やかに、そしてゆったりと、緩急を繰り返す変奏の対比が心地良く、最後はゆったりと繊細に歌わせて、静かに終わりました。

 拍手に応えてすぐに椅子に座り、続けてショパンのピアノ・ソナタ第3番です。第1楽章は、力強く、そして軽やかさとともに始まりました。緩急・強弱を大きく揺り動かすも、ソフトで穏やかでした。ゆったりとした音楽の流れは、やすらぎ堤から眺める信濃川の流れのようでした。
 第2楽章は、軽やかに始まり、そしてゆったりと歌い、再び軽快に進み、緩急の幅を大きくとった演奏で魅了しました。
 第3楽章は、激しく始まり、その後は私が好きな美しい主題をゆったりと歌わせました。穏やかに包み込むようであり、優しさに満ちていました。思いっきりゆっくりと、ゆったりと演奏し、夢幻の世界へと誘いました。
 第4楽章は、激しさとともに始まり、熱き思いを高ぶらせて、エネルギーを高めていきました。立ち止まることなく進み、フィナーレへと駆け上がりました。

 聴衆に大きな感動をもたらして、割れんばかりの拍手が贈られ、カーテンコールの後に、中川さんの挨拶があり、新潟のおにぎりが美味しかったことなどを話されました。
 そして、曲名をアナウンスして、アンコールにメンデルスゾーンの「無言歌集」から作品67-2 が演奏されましたが、これまで同様の緩急・強弱のメリハリを付けた演奏で、うっとりと聴き入りました。
 拍手に応えてアンコールの2曲目は、リストの「 即興円舞曲 」で、大きくアクセントを付けてリズムを刻み、感動をもたらしました。
 そして3曲目にシューマンの「子供の情景」から第1曲をゆったりと演奏し、穏やかな感動とともにコンサートを締めくくりました。

 中川さんの演奏は、パワーや超絶技巧で圧倒するのではなく、激しさを見せても乱れることはなく、優しさに満ちており、繊細な音の美しさで魅了しました。
 その中川さんが創り出す音楽は、中川さんの独自の世界であり、SK-EX の極上のサウンドとともに 夢幻の世界を彷徨いました。即時的な興奮を誘うのではなく、じわじわと心に染み入って温めてくれるような、遠赤外線のような感動を味わわせてくれました。

 今回はこれまでにないピアノ演奏体験をすることができて、有意義な演奏会でした。まだ若い中川さんが、これからどのように羽ばたいていくか見守り、応援したいと思います。今年のベストコンサート候補に挙げたいと思います。

 久しぶりのりゅーとぴあでしたが、良い演奏に巡り会えて良かったです。公園の水盤の水面に映るライトアップされた木々を眺め、春の喜びを感じながら駐車場へと速歩しました。
 

(客席:2階C3-7、S席・セット券:¥2750)