旧前田公爵邸洋館 |
京王井の頭線「駒場東大前」駅より徒歩10分、近代文学館は駒場公園内にある。 前田家の本邸は現在の文京区本郷にあったが、関東大震災後の復興計画に際して、本邸を駒場の地に移転することとなった。 当主の前田利為(旧加賀百万石前田家第16代当主)は、長い外国生活も経験し、文化人として国際的見識も高く、新邸の建設に当たっては、従来の御殿風ではなく、外国要人の迎賓館に相応しい建物を希望し、設計を東京帝国大学教授の塚本清に依頼した。実際の設計は技師の高橋禎太郎が行った。 機能性を重視し、当時の最新の技術を駆使して欧州建築の粋を集めて建設した。延べ床面積が2992平方メートルと大規模で、当時は東洋一の邸宅といわれた。 イギリスのチューダー様式が取り入れられ、外観は当時流行したスクラッチタイル貼りである。玄関ポーチの扁平アーチはイギリス後期のゴシック様式を簡略化したもので、この建物を特徴づけている。正面の外観は重厚で、小さな城のようでもある。 内部の王朝風の装飾と空間構成も見事で当時の上流階級の生活が偲ばれる。特に玄関を入った階段ホールのステンドグラスのある吹き抜けは見応えがある。ホールに接してサロンがありここからは芝生の庭園を鑑賞できる。 戦後、アメリカ軍に接収されたが、昭和39年に東京都のものとなり、42年に近代文学博物館となり公開されてきた。しかし、平成14年4月以来、博物館機能を取りやめ週末公開している。隣接して和館もありこちらは月曜以外公開されている。 (一級建築士 三舩康道)
※旧前田公爵邸案内(2009年9月12日現在)
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