禁忌とシミュレート。それがゲーム


 ゲームを評価するときに、シナリオとグラフィックを観点にして、何を語れるのか?

 ゲームの本質は、非現実、現実では法や常識に抵触する、現実では困難なことが試せることにある。

 恋愛ゲーム、戦闘ゲーム。 どちらもそれが実現できている訳で、それ以上に必要なことはない。

 一昨日、発売された某ゲームのレビューを通販サイトで20ページほど読んでみた。

 どちらのレビューも馬鹿としか言いようがない。 的を射ていなかった。
 批判派は、ボタン押しゲーム、ムービーの合間に戦闘がある、一本道、ゲーム性が無いなどと言う。
 賛成派は、シナリオが良い、音楽が良い、ムービーが綺麗などと言う。

 どっちもどっちである。 元々、日本のRPG は、本質をはき違えているのだから。

 シナリオが楽しみたいなら小説、ドラマ、映画を読むなり観れば事が足りるし、コストも低い。
 グラフィックを楽しみたいなら、映画、ドラマ、アニメでも観れば良い。 CGならSFX映画で良い。
 音楽ならCDなりDVDなりで十分。 そっちの方が良い物がある。 だが、今はゲーム音楽の方が質が高い。
 戦闘ゲームがしたいなら、RPGなど選ぶなと言っても良い。 だが、JRPGは、別の話がある。
 一本道など、今に始まった話じゃない。 何を期待しているのか。 JRPGは、そこが問題の一つでもある。
 ボタン押しゲームってのは、JRPGの文法と言う。 レビューもクリエイタも馬鹿なのだろう。

 ゲームが他の娯楽と一線を画している点は、単に「コントローラがある」という点に尽きる。
 これが他の娯楽と一線を画す点だ。 小説、映画、ラジオ、テレビ。 これらにコントローラなどはない。
 だが、最近のHDTVは、番組にアクセスする手段を持ち始めており、ゲームの特異性が失われつつある。
 今のまま進めば、近いうちにテレビにゲームという娯楽が食われるか?といえば、そうは為らない。
 ゲームでも実現できていない様に、インタラクティブ性ってのは、サービス側に高負荷を掛けるからだ。

 贔屓目でみても、投票止まりであろう。

 今回のFF13は、恐らくゲームであることを辞めたのだと推測する。
 買っていないし、買う気もない。 ゲーム雑誌のレビュアが評価するポイントがグラフィックといった時点で終わっている。
 裏を返せば「ゲームじゃない」と言っているのだから。

 というか、JRPGは、ゲームであることを辞めているのだ。

 「自分達が作りたいゲーム世界」を作っているだけで、これは他のメディアでは出来ない要素がある。

 ゲームのシナリオを、そのまま小説にしたら面白くなるのか?
 ゲームのシナリオを、そのまま映画にしたら面白いのか?
 ゲームのシナリオを、そのままアニメにしたら面白いのか?

 当然、面白い訳がない。
 シナリオにドラマがあろうとも、所詮は幼稚な三文芝居しかやれないし、期待しない。
 逆に、ゲームのシナリオを映画や小説から持ってきても楽しくない。

 ゲームに求めるのは、法に抵触する行動をとりたい、現実では困難な事を試したい願望があるからだ。
 小説や映画に求めるものは、人間が抱える本質的な悩みや苦しみを疑似体験したい願望があるからだ。

 映画や小説にシューティングを求めますか?

 ゲームに悩みの答えを求めますか?

 つまり、そういうこと。

 ゲームに小説のようなシナリオを求める時点で間違っている。
 ゲームに映画のようなグラフィックを当てはめる時点で間違っている。

 ゲームが将来に目指すべきは、より多くの人間が小説や映画に近い娯楽を作ること。
 それは、決して映画や小説と同じになることではない。

 ゲームが目指すべきは「より安価な娯楽」であることを示す事だ。

 映画は、決して安価な娯楽じゃない。 視聴一回2,000円は、十分過ぎるほど高い。
 それでも産業として成立しているのは、配給会社の企業努力と映画がTVドラマとは違う質を持つからだ。
 映画は、TVドラマとは違って、必ず一本が完成している。 そして、脚本の質が高い。

 小説は「知識欲を満たす」「疑似体験」の二つの柱を支柱に娯楽として完成している。

 ゲームは、どうか?

 ゲームは「戦闘」という要素が全てを制約する。 「コントローラ」が制約する。
 「戦闘」が切り離せないから、シナリオが「時代劇」になる。
 「コントローラ」を切り離したら、それは「ゲーム」ですらない。

 けれども、それらは切り離すべき要素じゃないのだ。
 他の娯楽と一線を画すことができる要素なのだ。

 決して、映画やドラマでは、虚構世界にアクセスできない。
 小説に文字を書き足しても、虚構世界が反応する訳じゃない。

 ゲームは、例え自己満足であろうとも、予め引かれた道であろうとも、虚構世界から反応できる。
 それが無駄だと思うなら、より多くの未成年達が時間を潰せる娯楽であるべきだ。

 ゲーム産業は、肥大化しすぎた。 団塊の世代が、ゲームを買いすぎたのだ。

 だから駄目になってしまった。

 まぁ、どうでもいいんだけどね。 私は「ゲーム開発関係者」じゃないし。


最終更新日:2009/12/19