そして再び我が部屋に平和が訪れた


 一部に不適切な表現が登場する事、あらかじめお詫び致します。
 尚、ネタ元は、昔プレイしたXenogearsです。 この事件が起きたとき、ふと思い出しました。


 安眠までのひととき。 寝室のベッドで横になりながら、本日書いた書き込みを推敲していた。
 ふと何かが天井で動いた気がした。 視線を送る。

 突如、頭の中で警報と悲鳴が鳴り響き始めた。

 目の前に三名の女性らしき後ろ姿が見える。
 よくよく見ると見覚えのない景色が広がっている。
 前方にスクリーンが広がり、そこに奴が映っていた。

 目の前に座る女性が悲鳴を上げる。

「エマージェンシーコール。 エマージェンシーコール」

 動揺を押しつけるが如く、素早くコンソールを叩く音が聞こえている。

「黒い奴、再始動しています」

 冷静な声で報告があった。 その横から別の声が聞こえる。

「天井にいる黒い奴の正体が判明しました」

 その隣から声が割り込む。 こちらは、ヒステリー気味だ。

「黒い奴と視線が交差」

 僅かに落ち着きをなくした声で最初の女性が叫ぶ。

「アドレナリン量、八億五千…十二億。 凄まじいスピードです」

 …。

「深層から意識へのアクセスを確認。 現実逃避開始…」

 彼女は、コンソールを叩きながら声を紡ぐ。

「逃避失敗。 意識閉塞、失神開始…拒否されました。」

 失神できなかった。

「広範囲に渡ってパラダイム汚染侵攻…」

 何のことだか分からないが、兎に角、心の隅々まで動揺が広がっていく。

「店長!?」

 私のことだ。 絶叫に近い声で呼びかけられ、漸く目を覚ます。

「手動で奴を叩くぞ!」

 素敵だ俺。 でも一人でやってくれ。

「了解。 手近な雑誌、使用します」

 彼女は、素早くコンソールから指令を飛ばす。

「…手近な雑誌、パージ確認」

 手近な雑誌が宙を飛ぶ。

「…駄目です。効果ありません」

 当たりませんでした。

 隣の女性が状況の進展を告げる。

「黒い奴、尚も侵攻中。 止まりません」

 もう彼女は、泣きそうだ。 後ろ姿しか見えないけど、多分そう。

「黒い奴の浸食拡大。 天井面を98%占拠」

 彼女は、天井が占領されたことを告げる。 明日は、掃除だ。

 腹を据えたのか、ゆっくりと隣の子が声をあげる。

「奴の背中に亀裂が見えます」

 動いた。 走った。 うわあああ…。

「飛翔翼拡大、翼の下に茶色いのが見えます」

 彼女の言葉がぞんざいになってきた。 俺もそうだ。

「黒い奴、飛翔モードにシフトします」

 と。 とんだああ。

「侵攻ルート予測開始」

 彼女は、コンソールを叩き、何かを見つめている。

「移動先、確定しました」

 一瞬の静寂。 そして振り向く。

「ベッドです!」

 私は、焼き切れそうな思いを無理矢理抑えた。

「奴め…。 このままベッドを侵略するつもりか…」

 手元の受話器(?)を手にして、頭上の奴を見つめる。

「右手くん。 雑誌の背表紙で強制圧壊しろ。 …? 右手君。 右手くん!?」

 右手は指示に従わない。 もう駄目だ。

「以降のオペレーションは、全て無心にて行う。 邪魔な理性と妄想は、退去したまえ」

 深く息を吸い込み心を止める。 そして、黒い奴を追い込み始めた…。


最終更新日:2009/10/05