映画化された東野圭吾の作品。
映画は、1,800円払って観た。 金返せと思った。
映画館には、若い女性が多かった。 それも女子高生辺りだと思う。
恥ずかしかった。 カップルも居た。 映画を一人で観に行くのは、金輪際止めようと誓ったはずだった。
サマーウォーズでおなじ過ちを繰り返した。 私は、本当に馬鹿です。
不思議だったのは、中間テストや期末テスト後でもない平日の午前中なのに、普通に高校生と思われる人が大勢いた事だ。
流石に制服を着ていたわけじゃないから、幼い顔の女子大生という可能性も否定できない。
同様に社会人という可能性もあるが、同年代の人間が2〜3名でなく7〜8名でグループになっていたので、その可能性は低いと推測する。
社会人なら年代に幅が出るだろうし、女子大生なら大人数のメンバーと時間を調整して行動するのは難しい。
まあ、映画系の同好会メンバーで観賞に来た線もあるが、3〜4グループの全てがそれとは考えづらい。 不思議である。
そして、そんな事は、どうでも良いのである。
この小説に登場した一節で印象に残っているのは、数学の問題作成に関する話。
「良い問題は、一見して、それと想像しにくい設問を提示する。」
これは、なるほど、と思った。 一例としては、図形問題なのに設問に図を表示しない。
文章だけ読むと、何かの公式を持ち込んで解かせる様に見せながらも、観点を変えると実は証明問題だったと分かる寸法。
まあ、それがどうしたって話なのだが、印象に残っている。
小説の焦点は、犯人にある。 スポットライトが犯人にあるのだ。
映画版はねぇ「何で探偵役と訳の分からん女優にスポットが当たってるの?」の一言だった。
恐らく、監督も脚本家も原作を読んでいる。 その話の焦点が犯人の心理にあるとも分かっている。
だが、探偵役が駄目だ。 こいつの存在が映画脚本の根底を覆している。
スポンサーかプロデューサかタレント事務所か、兎に角、その辺りからの要望を受け入れて商業映画を作った。
結果が酷い内容になった。 そんな感想です。
映画版で、そう印象を受けたシーンは、二つあります。
オープニングは、何これ?
確かに格好いい。 見た目が派手だし、理路整然と語る探偵役は素敵だった。
役者は、実力があると思う。 探偵役が主人公の話であれば最高だろう。
映画の最初にぶち上げて引き込ませるには、効果的だと考える。
だけどね…。
探偵役は、主人公じゃないじゃん。
ラストに至って、探偵役が事件をばっさり切り捨てる。
それでも、犯人は、社会的に間違っているのだ。 俺は、正しい。 同情などしない!
この犯人は、馬鹿だねぇ。 俺様、格好いい♪
という位に引き立てて、犯人に同情しない。 許さない。 それぐらいの主張をするなら、まだ分かる。
電話ボックスのシーンは、逆に犯人や周辺に同情させない様にしている。 あれは、故意の演出だと思う。
わざわざ犯人や周辺に人格的な汚さを見せている。 この辺りに、主人公を引き立てようとする意図を感じた。
なんとか、辻褄を合わせようとしたんだと思う。 でも失敗している。 少なくとも原作を読んだ人間は、がっかりした人が多いと思う。
映画のみを観た人なら、全体として「探偵役、格好いい」と印象を受けた気がする。
けれど、「何故、容疑者χの献身って題名なの?」と考えた場合は、どう思うだろうか?
商業映画を作るのは、商売なんだし仕方がない。 監督や脚本家に責任はない。
彼らは、社会的、家庭的、会社的責任を果たしたのだから、賞賛すべきだろう。
だが、同じような商業映画で「DEATH NOTE」があった。 私は、DVD で観賞した。
因みに、これも映画版では、原作と真逆な事を言っている。 そして、映画版は、流石だと思った。
同じキャラクター、事件、戦いを描きながらも、確りと主人公を探偵役に据えて真逆の事を説いた。
題材のテーマが、在り来たりで幼稚で唯一の答えを持たないテーマだから、やりやすかったとも言える。
主人公に美形で有名なタレントを起用しなかった所も、監督の意向を通しやすかった面もありそうだ。
けれど、商業映画でも監督や映画スタッフの意向を入れた作品を作れるんだなーと、そこに感じ入りました。
オマケに重要処に良い俳優を使って語らせている。 原作とは別物として、お金を払って悔いがなかった。
言いたいことは、何か?
「原作と一緒の物を作れ!」って事ではない。
「中途半端な物を作らないで欲しい」である。
別媒体の原作を流用する作品ならば、映画版のみの何かを観たいのである。
原作を基底に作るなら、映像という角度で巧く見せて欲しい。
原作を否定するなら、確りと原作を否定する主張をして欲しい。
俳優や女優が観たいんじゃない。 それを観るならプロモーション映像でも見ればいい。 グラビアでも見れば良い。
監督や脚本家の意志や主張を観たいのである。
しかし、相変わらず、小説関係ないな。
最終更新日:2009/10/08