松本清張傑作短篇コレクション 上・中


 松本清張の作品は、面白いです。  人物の心理が描かれている。 素材とする事件も関心を惹く内容が多い。
 宮部みゆきも関心を惹く事件をよく取り上げている。

「そうか。 だから宮部みゆきの小説が好きなんだな。」

 と、松本清張を読んで気がつきました。

 最近、生誕100年記念なのか表装を新たに再版されている様です。
 本屋で物色している時にポスターやPOPから刷り込まれたのだと思います。  久しぶりに読んでみました。

 ちなみに松本清張で最初に読んだ作品は「点と線」です。 次が「蒼い描点」で、幾つか読んだ後に「花氷」になります。
 なお「花氷」は読むのが辛かったです。 これを読んで松本清張から離れました。 登場する女性の顛末が痛々しく、お薦めしません。

 このような状況で一年ほど過ぎた頃に「某有名作家責任編集」という文庫本が目に入りました。

 どういう責任を負っているのか?
 面白くなかったら謝ってくれるのか…? それとも、より面白い作品を世に出してくれるのか?

「人気作家の作品から面白い作品を紹介するンだし、面白くない、責任取れ!って言われるわけがない。 狡い商売だな。」

 そんな事を思いながら読み始めました。

 冒頭に書いた通り、面白かったです。 久しぶりに飽きることなく読み終わりました。
 短篇なので展開が早く、読了感も早く味わえる。 一冊が高いけど長編よりコストパフォーマンスが良いと思います。

 さて、特に面白かった短篇はどれか?という展開を想像するかと思いますが書きません。
 読み手としても優れた人が選んだ作品集です。  ここで更に面白い短篇を列挙するのは無駄ですので、興味を惹いた作品を挙げてみようと思います。

 この二つを読んで責任編集、作家本人のセンスを感じました。 流石、現代で生きている作家です。
 巻末のコラムから出版社、業界、ファンには周知の事実なのでしょうが、昭和史の研究家としての一面があるそうです。  当然、私も初めて知りました。

 文章を書くことを生業とする作家が事件を説明しているので読みやすく、興味を惹くポイントが抜けてないから分かり易い。
 事実だけを記した教科書や何が言いたいのか分からない歴史本と違って、事件の全容と因果関係や登場人物の心理が考察されています。

 歴史事件を扱う書籍も事件の全容、当事者の心理と動機、因果関係、後世への影響、潮流、そして何を学ぶべきかを明記して欲しいものだと思う次第です。


最終更新日:2009/09/12