月の扉


 ハイジャック事件が発生し、その犯人グループを視点とした内容だったと思う。

 ハイジャックした飛行機内のトイレで殺人事件が発生し、その犯人は誰なのか? というのが謎の中心だったと思う。

 犯人グループは、元新興宗教の教祖に成れる器を持ったカリスマに感化された3人が、 そのカリスマが冤罪で逮捕されたことを切欠としてハイジャックを起こす。 逮捕・拘留された期間に沖縄で月食があり、その日にカリスマが月の扉を開き、 何処かに連れて行ってくれる、という約束を3人としていたが、逮捕・拘留されている為に それが実現出来なくなり、それを不服に思い、犯行に及んだらしい。

 トイレの殺人事件の犯人は、同じようにカリスマに感化されてアイドル歌手になるほどに 立ち直った女だったか、犯人グループの3人の誰かだったか、だったと思う。

 尚、どう頑張っても、最後の解答を読まない限り犯人が確定出来ないタイプの小説だと思っている。

 心に傷を負った人間がカリスマに感化され、立ち直ってみたけれど最後は逃避する、 という内容。 感化された人間がとても美しく描かれており、ハイジャックという 行為を犯人は自己正当化しないことから潔さを感じさせ、 そこから美しさを感じさせているのだと思う。

 事件を解明していく探偵役は、ハイジャックされた飛行機に偶然乗り合わせたサラリーマン。 「探偵が謎が解けた!」という時点で読者に提示された情報では、どう頑張っても 確実に犯人を特定出来ない様になっていることから、売るために「推理」「探偵役」という 要素を入れているように感じる。

 納得が行かない推理小説に当たることが多く、小説から離れる頃に読んだ一冊だったと思う。

 とはいえ、ストーリーを読ませる事を主眼にしたメディアは小説のみなので、未だに読んでいるのだけれど・・・。


最終更新日:2007/08/19