主人公が泥棒(深夜に家人が寝ている間に忍び込んで荒らすタイプ)で、 その精神に弟の精神が宿っているという特殊な設定の話。
主人公が出所した所から物語りが始まり、自分が逮捕される事件で見かけた女に不自然さを感じ、
それが何であったのかを確認しようとすることから話が展開していく。
横山秀夫の文章に登場する主人公は世の日陰で生きる人々で、 この小説もそういった人物の視点からドラマが描かれている。
警察機構の管理部門(人事課、教育課など)の人、新聞記者でなく編集長、 刑事でなく刑事課課長など、管理職や管理部門の人物の視点から描かれ、 立場から来る苦悩や苛立たしさ、歯痒さなどが描かれており、こういう所を小説や漫画などシナリオを持つ メディアに求めているんだと思う。
この著者の小説は、個人的に「ハードボイルドなミステリー」「ミステリー付ハードボイルド」 という印象・イメージを持っている。
別の言い方をすれば、ミステリーの部分は推理して犯人が予測出来るタイプで無い、と思っている。 この小説のジャンルに疑問符が付いているのは、これが理由である。
本編は主人公は同一だが、複数の短編が集まった短編集のような体裁となっており、 読みやすかった印象がある。
最終更新日:2007/08/19