自転車で世界一周を目指す冒険物語は数々あるが、この作者のすごい所は、著作にも表れているように絶対旅行記では無い本の構成だ。言い換えれば「出会い」を求めて7年半も世界をさ迷ったって感じなのだ。だから出会った事件と出会った人しか書かれていない。風景は人間を描く刺身のツマみたいもんだ。この作風には違和感を覚える人も居ると思う。一億2000万人が暮らす日本国内でも様々な人との出会いがあるはずだ。彼が、あえて世界での出会いを求めたのは、日本国内では得られない「世界一」に出会いたいから。
でも、たぶん彼の「世界一」は一番身近にあったのだろう。それに気がつくまでのプロセスって感じの旅の持つ人間を育てる機能をこの本から感じる。
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