初級シスアド合格への道

第一話 何故挑戦するか
 
 特に意味は無い(笑い)。非常勤講師をしている大学の学生から「初級シスアドってどんな資格なんですか」と聞かれて「EUC(エンドユーザーコンピューティング)の資格でパソコンの操作方法じゃなくて、仕組みの解ってる人って資格だよ」とは答えたのだが『情報処理試験で一番やさしいやつ』って感覚しか無かった。
 自慢じゃないが情報処理試験は4,5回受けている。情報処理1種が2回、システムアナリストが2回くらいだろうか。全て不合格だったのだが、当時の情報処理試験のリキの入れようがいまいち不透明だった。当時の通産相の利権団体って程度で、本当に情報処理技術者を養成する(技術者が資格取得にインセンティブ(意欲)を持つ)内容ではなかった。企業も特に有資格者を優遇することもなく(有資格者で仕事の出来ない奴が沢山居た)先行き不透明な資格試験だったのだ。
 実は情報処理試験制度の立ち上げには当時の通産相の「2000年には情報処理技術者が100万人不足する」なんてスローガンに裏打ちされたものなのだ。現実に2000年には情報処理技術者は不況も手伝って「余っている」状況なのだ。
当時の担当者に聞くと「これほどパソコンが普及して個々人が情報処理の一部を担うとは当時は考えられなかった」と言い訳するのだった。
 そんな認識だったから、特に初級シスアドにも興味が無かった。ただ、偶然が受験に走らすことになった。
 
第二話 合格しなければ語れない
 
 学生の相手をしていると、つくづく学校の先生って信用されてないと思う。僕の担当する学科はパソコンの利用なので、座学はほどほどにして毎週パソコンを利用して課題を提出させる講義形式をとっている。ここで学生の作ったホームページなどの間違いを素早く発見してその場で不合格と言わないと信用されない。後で調べて間違いを指摘しても学生は「なんで早く言ってくれないの」と反発する。
プログラム課題も100ステップほどのソースリストを一見して間違いを指摘しないと学生が忘れた頃に間違いを指摘しても学生も忘れているので(笑い)直せない。
そんなことが有って、自分で即断出来ないことは教えないってポリシーになってくる。本当は、様々なアイデアが飛び出す「考える講義」が望ましいのだが、想像力を惹起するほど学生はパソコンを使えない。
 初級シスアドにつていも少数の学生には受験への要望は有るのだが、全体のレベルを考えると講義内容を初級シスアドに絞るとほとんどの学生が谷底に落とされ、はい上がってくる学生は皆無になるだろう。
 自分が資格を持っていれば学生が付いてくるかな。そんな考えを漠然と持ちながら情報収集のために「情報処理技術者試験センター」のホームページを5月頃に見ていたらインタネでオンライン受験申込みが出来るらしい。
 便利になったなぁと思うと同時に5000円なら申し込んで見るかって軽い気持ちでページを進め申し込んでしまった。学生の中にも受験する者が居るらしいので会場で同じ受験生として話す機会が有ってもよいかなって気持ちも多分に有った。(実は大学は女子大なのだ)。
 合格率が30%程度なので学生に3回受験すれば1回は受かるって言っていたので、こちらも3回くらいで合格すれば良いかって気持ちだった。
 
第三話 試験勉強は厳しい
 
 先に書いたように初級シスアドの合格率は30%程度(現在(2004)は受験の母数が増えたので、15%程度)。平均年齢29歳。社会人5年程度の社会人としての常識と会社の仕組みの知識が問われる。大学院生は合格率60%、大学生も社会人と同じく30%程度、高校生、専門学校生になると極端に合格率が落ちて16%程度。つまり、社会人としての経験がかなり有利になる試験内容と言える。
2年ほど前に買ったままの参考書(問題集)を開いたのは10月20日の試験から逆算して4ヶ月程前の6月に入ってから。パラパラとめくるのだが解る問題と解らない問題の差が大きい。天気で言えば寒暖の差が激しいって表現だろうか。
問題の出題傾向が「広く、浅く、深く」って感じなのだ。そのため過去の問題を繰り返し解くまえに、この試験で問われる技術の大系を把握しておく必要性を感じた。
 問題集は出題順に出ているのが多く、大系に沿っていない。そのために参考書探しから始めることになった。結局、同じ問題集でも大系が先に有って、その大系の中で過去に出題された問題を例示し解説している本を見つけたのは8月に入ってから。「超図解シリーズ」なのだが、これ1冊で十分だった。
 これを常に持ち歩いて時間が有れば読んでいた。特に通勤途中で勉強出来るように、この本は全体を210項に分けて2,3枚で1項目を説明してる。1日に何項目進んだかによってゴールが見えるので、時間が不足している時は帰宅してから時間を作って参考書を読むようにした。予定では1ヶ月前までにこの参考書を終える予定だったのだが、10月に入ってやっと読み終わった。
 
第四話 あと3週間かよぉ!
 
 初級シスアドの受験票は申込み締め切りから3ヶ月もして10月の頭に郵送されてきた。なんだかプレッシャーを感じる。参考書はあらかた終わり自分の理解してない部分が数カ所残された。これはインタネで検索して調べるしか無い。一番の疑問点は電子メールの本人認証方式で、この試験で採用している方法が現実とギャップあるので、最後は過去問題の答えから類推するしか無かった。
 もう一つは表計算で、EXCELと微妙に仕様が違うのだ。これには手こずった。アメリカで左ハンドル車を運転するようなもので、「これは情報処理試験仕様」って頭を切り換えないと正解が出てこない。
 3週間前にして実力判定問題集(これは最初に買った問題集だったのだ)に取りかかる。これには通勤時間だけでは追いつかず毎日帰宅してから1時間はやったと思う。不正解の時には参考書に戻ったり、同一の過去問題を調べたりしたのだが、多くの場合不正解なのは「ひっかけ問題」の時が多かった。
 日本独特の「ひっかけ問題」、英語のブービートラップはまさに「馬鹿への問題」で、こんなもん出すなよと言いたい。今後試験問題に「ひっかけ問題」を作った人間は「死刑一歩手前」くらいの刑に処する法律を作るべきだ。「ひっかけ問題」にはなんの価値も無いのだから>やい!
 そんなこんなで3週間の間に思考回路が徐々に問題を出す側の意図なんて想像が働くようになった。ま、4択の場合、出題者は答えを考えて問題を作り、問題条件に触れないダミーを3つ用意するって手法で問題を作らざるを得ないので問題を読むとダミーの3つが正解の前に見えてくる場合があったりする。
 いよいよ試験前日となる。
 
第五話 会場下見
 
 初級シスアド試験の一日前にドタバタしてもしょうがないので前日は下見に当てる。そもそも公共交通機関で行くつもりは無いので車の駐車場探しが主な目的。大学を卒業してからの試験と言えば先の情報処理試験以外ではアマチュア無線の試験くらいか(こちらは一発で合格したが)。この時も下見はしていない。
 何故前日に会場の下見をしたかと言えば、一つには先の駐車場の件もあるが、人間は環境の変化に弱く、前日に来ている場合と来ていない場合では気持ちの余裕が全然違うものだから。試験に挑む姿勢として気持ちの余裕は絶対必要である。
 亡くなられた「大空のサムライ」の著者であり、旧日本海軍航空隊のエースで64機撃墜の記録を持つ坂井三郎氏も「飛行機の操作で合点がいかないことが起きたら、まず深呼吸をして気持ちを落ち着かせることだ。気持ちに余裕が無いとミスにミスを重ねる結果になる」また戦いの中では「余裕が出来たらあとは「相手も苦しいのだ」と考え苦しみ(高いG)に耐える。この「耐える力の僅かな差が相手の航空機の後ろに回り込めるかどうかの差になる」と書いている。ある意味で孫子の兵法に通じる話だが、要は自分に余裕が生まれれば相手を呑んで挑めるってことだ。「上がる」なんてのは愚の骨頂で、実力を十二分に発揮するためには、余裕が必要なのだ。(この実践のために当日、もう一回仕掛けがあるのだが)
 車は豊平川河川敷。会場入り口はここと確認できた。当日は10月にしては天気が良く。明日は頑張るぞって感じで会場を後にして、その日は参考書を開かなかった。
 
第6話 決戦の時、当日
 
 北海道札幌での初級シスアド試験会場は北海道自動車短期大学関連施設。受験番号別にA、B、Cそれぞれの入り口から入るのだが、受験番号の下一桁までで区分けされている。あわてて番号を再確認するとなんと建物の5階の会場。そこまで階段しか無い。なんて建物なんだ。後からこの大学の学生に聞いたのだが、この大学の建物はほとんど渡り廊下が無く入り口間違ったら指定の教室には行けない構造とのこと。こんな会場使うなよなぁ。
 息切れしそうになりながら会場到着。窓際から1列目の指定の席に荷物を置いてとりあえず廊下の喫煙所で一服。会場は年齢層が広い。大工の棟梁も居れば茶パツのレディスみたいのも居る。僕の席の後ろは可愛い女子大生だろうか。なんか定時制高校ってこんな教室の雰囲気なんだろうなと体験したことは無いが思ってしまう。
 午前問題
 最初にミスをしてしまった。午後には気が付いたのだが受験番号と氏名およびそのマークは配布されたら開始の合図を待たなくても行っても良いらしい。やはり緊張していたのか両手を膝の上に置いて開始の合図を待っていた。
 試験開始。なにやら図があってさっき着席後に過去問題に有ったのと同じ。1分前に見た問題が出ている! なんとも1問ゲット。問題用紙は持ち帰って良いので全ての答えを問題表紙に書く。なんとも「ひっかけ問題」がいくつか有る。今回から電卓持ち込み禁止になったのに計算問題で暗算では無理で筆算しなければならないものが結構ある。こんな事に時間を取られるのが腹立たしい。
1時間ほどで記入が終わった。飛ばした問題に取りかかる。単純に答えが選べない「ヒッカケ問題」を注意しながら解く。笑っちゃうのは「低い衝立で仕切られた机同士で線を使わずにパソコン相互を接続するものはどれか」って問題に赤外線通信が書かれてること、「こんなんに引っかかるかよぉ!」と怒りを込めて(別に込めなくても良いのだが)ブルートゥルースを選んだ。
マークシートに写すのに30分。合計1時間半で午前の問題を終えて会場を出た。
 昼休み
 近くのセコマでサンドイッチと500mlのペットボトルを買って豊平川河川敷で行われてるリトルリーグの大会を見ながらのんびりと昼食にする。当日は天気が良く、そのまま昼寝したい気分になる。全道大会なのか、釧路のチームが居たりしてレベルも結構高い。ただリトルリーグの常としてピッチャー次第だ。何故か累に出れば必ずホームまで帰ってくるのがリトルリーグなのだ。2盗、悪送球、一気に本塁へってのが多い。
 午後問題
 会場に戻ると既に空き席になった所がチラホラ。午前でギブアップで帰ってしまったのだろう。特に専門学校生なのか、学校で申し込んだのでしかたなく来たみたいな子の欠席が多い。
 ま、勢い付けようかなって気分で、たままた窓から光が射し込みそうだったので会場の係官に「カーテン引いてもらえますか。なんかこっちの列ハンディになりそう」と大声かけたんですよね。これで落ち着いて余裕が生まれたりして。
 午後問題はきつかった。7問のうち楽勝は2問、時間がかかるがクリアーが3問。
ここで止めようかと思ったのだが残った2問に大半の時間を取られた。この2問に1時間掛かったから最初の5問は30分で解いたことになる。
最後、答えをマークシートに書く頃には右手の握力が極端に落ちてしまった。それくらい筆算を要する問題だったのだ。なんとか残り30分で午後の部を終えて会場を後にして廊下で一服していると、先のこの大学の学生が彼女を迎えに来ているのと一緒になった。少し話してみると良い奴で「おれ、自動車の事解るようになったけどコンピュータは全然。だけど今のクルマはコンピュータで動いてるんだって感じるよ」なんて話を10分ほどした。
ま、午後は自信ないが、午前で90%以上稼いだから大丈夫だろう。そんな満足感で会場を後にした。
 
第7話 合格発表
 
 試験から1週間ほどして「情報処理技術者試験センター」のホームページに合格発表の掲示される日時が掲載される。今年は11月19日(火曜日)らしい。当日の午前零時に掲載されるらしいが、そこまで入れ込んでないので朝メールをチェックする時にホームページをのぞいてみる。
受験会場別に何番から何番までって単位でページが作られてる。受験番号を見ながらページを辿っていくと合格者の番号以前に僕の番号が表示されてる。なんだこりゃ。
ちょうど僕の受験番号がページの切れ目の最終番号だったのでタイトルで表示されてしまったのだ。実際の合格者番号の所で確認するまでは「なんかの手違いじゃないのかぁ」ってドキドキしてしまった。
受験番号の前後を見ると、あの可愛い女子大生(勝手に決めるなよなぁ)の番号も茶パツのレディースの番号も無かった。遠くのたぶん横の並びが同じだった大工の棟梁は合格しているらしい。会場全体で30%以下じゃないだろうか。70名ほどの会場で10名程しか合格してなかった。ま、欠席もかなり居たが。
 11月末になって合格証が届いた。その時に初めて気が付いた。経済産業大臣は平沼赳夫なんだぁ。あいつあまり好きじゃないんだよなぁ(笑い)。
 
第8話 学生への檄文
 
 ま、この資格を生かしてなにかしようって歳でも無いのでどちらかと言うと「もうこの試験は受けなくて良いんだ」って安堵感のほうが大きい。
後から聞いたら講義に出ていた学生は3階の会場で受験したらしい。残念ながら不合格だったらしいが。
学生向けに受験した人間にしか解らない話を取りまとめた。
学生が取っての資格。それが初級シスアドの資格では無いだろうか。社会人が挑戦してもあまりピンと来ないってのが「合格者の」感想だ。
 
合格するとこんなんもらえます。
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