狩勝峠を越えて..新得、清水、鹿追

コース概要
 去年は北海道の南、渡島半島を中心にまわったので北海道の背骨とも屋根とも呼ばれる日高山脈を越えることは無かった。一昨年の秋に日勝峠(にっしょうとうげ)の頂上に立っているのでここまで車に自転車を積んで行き、坂を一気に下って清水町(しみずちょう)に降りて、また坂を登ってくれば十勝平野に足がかりができることになる。しかし、一昨年も書いたがここ日勝峠は昇りがきつくトンネルも多くトラックの黒煙を浴びて登ってこなければならない。過去、札幌から中山峠に向かう途中の昇りのトンネルである定山渓(じょうざんけい)トンネルで排気ガスにやられトンネルの出口で意識を失いそうになった経験から、ここ日勝峠を十勝側から自転車で登るのは危険過ぎる。自転車通行不適路線と言わざるを得ない。
 去年の最初のサイクリングで、もう一方の峠、狩勝峠(かりかちとうげ)の偵察をしておいた。自転車のメッカ富良野から南下して南富良野町の落合に開発局が設置したチェーン着脱場があることを確認。北海道では初冬の急な積雪に備えて大きな峠の昇り口には車のタイヤにチェーンを巻くように「チェーン着脱場」が用意されている。ここが車のデポ地点として使える。
 今日はここまで車で移動し、自転車を組み立てて狩勝峠に挑戦する。ここを越えて十勝の新得(しんとく)町、清水町、鹿追(しかおい)町を巡る、およそ100kmのコースを考えた。一部サークル・コース(本当の英語ではサーキット・コースとかカーブ・コースと言うらしい)、狩勝峠はピストン・コースの一日両方面から2回峠越えをすることになる。
 当日インターネットで天気を見ると北海道に雨の予報は無い。がしかし、落合に向かう車の中の道路交通情報では日勝峠も狩勝峠も霧のため視界が悪いとの現況を伝えている。ま、札幌を出てしまったのだから向かうしか無いっか。

輪行(C&C(Combined Cycling))概要
 今回からこのコーナー(笑い)を作りました。あくまで札幌中心で申し訳ないのですが、複数の友人から「Mintさんのレポートを見て、行ってみたいと思うけど、デポ地点とか、そこに行くまでの経路情報もあると便利。同じコースを教えてもらって走るって邪道だと思うかもしれないけど、Mintさんの走った時期や気候が違うと全然違う体験ができるじゃない。だから、レポートにドライブ情報もあるとすごく参考になる。絶対載せて。」ってリクエストがあったので、このコーナーを設けました。
 はいはい、女性のサイクリストからのリクエストに弱いのです(笑い)。
 ある意味で北海道を旅する女性のサイクリストは増えています。僕もレポートしなかったけれど何人かに合っています。昔は複数のグループってのは有ったけど、最近は「女一人旅」の人と合うことが多い。でも、こちらの先入観か、警戒心が厳しい(笑い)。あたりまえだけど。ここはひとつ頑張って、女性が単独で野宿サイクリングできる世界を北海道で実現したいと思う。男女の差は体力の差だが、峠越えなんかでは脚力ある女性のほうが男性より早い場合もある。性別を越えてサイクリストの共通の価値観が存在し得る社会を築きたい。日本は世界に誇る治安の良さがあるのなら、是非とも女性単独行を可能にする北海道のサイクリング文化を情報発信したいと思う。
新コーナーに力が入ってしまった(笑い)。
 札幌から帯広方面に向かうのは通称「樹海ロード」国道274号線を東に進む。日高から国道237号線に分岐して途中、占冠(しむかっぷ)から同道136号線に分かれてトマム・リゾートの方向に向かう。こっから国道38号線に合流する場所が落合。
この落合に合流して左に曲がり1km程進むとチェーン着脱場が右にも左にもある。ここに駐車する。
 走り終わったあとの帰還ルートは、出来れば同じ道を戻りたくないので富良野経由にする。今回発見したのだが、国道38号線を南富良野に向かう。ポッポ屋の撮影で有名な幾寅(いくとら)駅を過ぎて富良野市外にはいる。抜けた途端に道々135線で桂沢湖に向かう道が開通している(僕の地図は98年版だが、出ていない)。これは国道452号線に合流し三笠の桂沢湖に向かう。
ここから国道12号線に出るのも良いし、道々30号線で渋滞を避ける手もある。
自転車のルートとしても、この逆を辿れば以外と札幌と富良野は近い。海岸線派でなく、名所旧跡派は是非ともこのルートを押さえて置いて欲しい。

狩勝(かりかち)峠
 正直言って嫌で嫌でたまらなかったのがスタートして最初の10km。
ま、不摂生が祟っているのか、はたまたシーズン始めの定例なのか、とにかく自転車をこぐのがこれくらい辛かったのは、会社の送別会が終わって帰宅午前2時、出発午前5時の時以来(おいおい)。
 最初は落合って峠へのスタート地点と思っていたのだけれど、まさにスタート地点。ここから許されるのは昇りのみ。自転車を組み立ててさぁ行くかと思った最初が昇り坂。ま、ギアを落としながら昇りはじめたのだけれど、今日はあいにくの天候不良。
最初に落合を出た頃は青空が広がり初夏のサイクリングのスタート、のはずだったのだけれど昇りはじめるとほとんど曇空、それも向かっている方向からの霧が作った雲の下での走行。気温も低く、たまたま持ってきたドライビンググローブをはく。
シーズン最初のランのためだろうか、はたまた不摂生の因果だろか、とにかく辛い。何度か辞めて戻ろうと思ったが唯一それをおしとどめたのは道路左下に見える雪解け水の流れ。心無しか登るにつれて小川の川幅が狭くなっていくような気がする。
 普通、走り初めて最初の5kmは「我慢の走行」と決めている。身体が自転車を漕ぐのに慣れてくるまでは辛い。マラソンなんかでもデッドポイントと言って、身体がマラソンに馴染むまで(おおむね、1500m程だと言われている)きついらしい。僕の場合は5km程走って一旦休憩し乾いた喉に水を流し込んで、このあありで身体のバランスが出来る。それ以降は喉の乾きもそんなに急激じゃないし、汗のかきかたも最初の5km程でなくなる。1Lの水筒の水はこの時点で1/3無くなるが、残りの2/3が消費される頃には50km程は走っている。
 がしかし、今日はきつすぎる。大きく左にカーブする地点で地図を出して地獄の昇りはあとどれくらい続くのか調べると、このカーブを回った先が644mの峠の展望台と解る。こちら側(富良野側、西側)からの昇りは7km程で350m程の標高を稼ぐことになる。ま、帰りはこの貯金(もっとも、再度東側から登るので預金も新たに必要なのだが)をおろすからいいけど。
 峠の展望台は霧の中。それも十勝平野側から吹き上がる霧が目に見えて流れている。とにかく寒いのだろう。僕は昇りのきつさに汗まみれになっていたのだが。
どうせ往復峠越えなのだからとウインドブレカーを着て峠を下る。平均30km程でシェルターを抜け十勝平野を目指す。再度ここを登ってくることを考えずにダウンヒルを楽しむ。
峠のこちら側は9号目、8号目と標識が出ている。峠越えで一つの目安になる標識が出ているのは嬉しい。この標識を一つ一つ確かめながら登ってくるのはサイクリストだけかもしれない。まさか、歩いて来る人は居ないだろう。だとすると。サイクリストは全ての峠にこの標識を付けてもらいたいと願うはずだ。そんな事を(実は、帰りの道でこの標識がどんなに有り難かったことか)考えながら国道38号線を新得に下る。

新得(しんとく)町
 地図にも出ている「そばの館」を道の右に見ながらひたすら前へ進む。ここには帰路寄ることにしよう。新得山スキー場が見える頃、新得町市街地に入る。その直前に鹿追町への分岐点があって、少し迷ったのだけれど、やはり清水町に先に寄る事にする。役場の前で記念撮影。おっと、半年ぶりのカメラの電池が切れ掛かっている。そろそろ電池交換が必要かもしれない。
 新得の街は正直言って良く解らない。ソバの館があるのだからソバ畑もあるのだろうが、この時期それを見る事は出来ない。ではオフシーズンに何を見せるのかと言えば何も無い。このあたり一工夫が必要なんですよね。
去年の秋に訪れた幌加内はソバ祭の最中だったこともあり、一生懸命にソバの街を売り込んでいたけど、ここも底が浅い。結局、ブランド品として「蕎麦」を位置付ける方針に対し、戦略が形成されてないと思う。「方針上滑り」って感じ。新得も幌加内もそこの詰めが出来ていないと走りながら感じた。
 そのまま国道38号を進み清水町に向かう。ここにデポ地点を確保することが今後の十勝平野攻略の試金石になる。正直言って国道38号線は何も無い楽しくない路線。だから清水町からはデポ地点の情報だけを得たかった。ここまで来るともう一方の峠「日勝峠」のアプローチになる。先に書いたように僕は日勝峠を越えようとは思わない。あまりにも産業道路なのでサイクリストがロマンを求めて越える峠では無い。

清水(しみず)町
 清水町をうろうろしながら「清水公園」の駐車場をゲット。他にこの向かいにスポーツ・センターもある。ここから十勝平野を始めようとか思う。
それにしても新得と比べて大きい清水が何をやってきたのかなぁと思う場面が多い。どちらも十勝平野の西に位置してそれぞれ、ある意味で西からくる人々にとって十勝平野の入り口である。がしかし、素早く通り過ぎてみたいな雰囲気だ。車を運転していると感じるのだけれど、難所の峠を越えてひと休みしたいと思うことは多い。特に冬季では職業として何度も越えている人は別にして、やはり峠を越えた安らぎが欲しいと思う。がしかし、西から十勝平野に入った人にそのような安らぎを与える場所は無い。なんでかと思うと、「とにかく帯広に行ってくれ」みたいな、ある意味で帯広の一人勝ち、ある意味で無気力な周辺自治体の実態があると思う。
 十勝市とかで合併したら、と言いたい新得そして清水であった。
 清水にはスポーツ・センターの向かいになるが「清水公園」がある。ここをデポ地点と確認して遅い昼食をとる。由仁町のセイコーマートで買ったおにぎりを食べながらこれから訪問する十勝平野の市町村を想像する。何処かにキラリと光る市町村はあるのだろうか。
 幹線国道の38号線沿いに走っているためなのか、道路が楽しくない。このまま戻るかそれとも鹿追町に向かうか少し悩む。地図をみると鹿追は若干の登り下りがあるようだ。このまま国道38号を戻る手もある。再度清水町に下り国道274号線を鹿追に向かう。展望台が有るってことは坂を登ることになるのだろう。と坂を登り始めると無料の駐車スペースがこの展望台らしい。大きな鐘があり「第九の町、清水」を案内している。
こんな特徴が欲しかったんだよね。「しみず温泉フロイデ」だけでは無く、清水町には各地に「第九の町」のシンボルが有るのかも知れない。たまたま、捜せなかったのかなと少し安心する。

鹿追(しかおい)町
 十勝平野よりも高地のためか畑作よりも酪農が中心になっている。さきほど一気に登った後は緩いアップダウンを繰り返しながら鹿追に向かう。両わきはほとんど牧場。それも乳牛中心で牛舎の匂いがきついが、ま、これも田舎の楽しみ。
 市街地に入るが牛舎が市街地に隣接している。これって、夏は結構牛舎の匂いが市街地でもきついんじゃないだろうか。
 鹿追の役場の周辺はやたら施設が目立つ。いわゆる「農村振興基金?」。ま、したたかと言うか町の経営が巧いと言うか、外部からコメントするのは失礼とは思うけど、今回の3町の中で一番公共投資を利用している感じを得た。別に悪い事では無い。地域の人がハッピーになれるなら、じゃんじゃん建設すれば良い。で、鹿追では使われているのですよ。無駄な公共投資では無いって感じを受けたのです。

そばの館
 道々133号線を新得に向かう。地図を見ながら進むが、どうも地図が古いのか道々75号に合流してから133号線は復活しない。地図では音更新得線は道々133号となっているのだが、やはり地図が古いのかもしれない。
そろそろ最後の舞台、狩勝峠越えを意識してきつい登り坂は自転車をおりて押しにはいる。坂を下ると国道38号線に合流。ここから再度の狩勝峠へ向かう。
 途中で先ほどパスしてきた「そばの館」で小休止。ま、去年幌加内のそば祭で見たのと同じ、とにかく食べさせる施設で、蕎麦の歴史なんてコーナーは無い。なんか貧しいなぁ。米を経済作物として日本の律令国家が形作られた中で、さつま芋や蕎麦は米に比べて日陰者だったが、しっかり国民の食生活を支えてきたはず。しかし、只うまい蕎麦を食べるだけの施設には疑問を感じる。
 結局、幌加内も新得も互いの情報交流が無く、良い意味での競争の原理が働かず、それぞれ小山の大将でしか無いのかもしれない。そもそも「そばがき」がメニューに無いのも蕎麦の食べ方を短絡的に「麺」としか考えていないのだろう。雷波少年では無いが、「麺ロードの旅」に蕎麦を持ってくるとしたらTディレクターの知識の無さと言える。「麺」は小麦であって、蕎麦は日本独自の食材であり、世界標準の「麺」とは明らかに違うものなのだから。
例えば、蕎麦アレルギーでまったく蕎麦を食べられない人がいる。これは蛋白アレルギーの一種で、卵アレルギーと同じく特殊なアレルギー体質だ。がしかし、小麦アレルギーは居ない。もっとも、小麦アレルギーでは生きて行けないから「居ない」のかもしれないが。

再度狩勝峠
 午前中に越えた頃から天候はかなり回復してきた。連休が終わって会社で日焼けを指摘されたのだが、これは、ここから峠越えまでの間に焼けたものだろう。
 こちら側、十勝方面のチェーン着脱場で峠越えに備えての休憩をとる。ここの標高は270m程。富良野側より7、80m低い。と言う事は登らなければならない標高差が大きいことになる。
 いよいよ峠往復を開始する。ここ十勝側では1号目から標識が出ている。おおむね40m高度を上げるごとに一つずつ増える。自転車で長い登り坂を進むとこの標識が目安になって楽しい。結構緩やかで楽な登りでは次の標識が現れるのに長い距離を走ることになる。逆に、きつい登りでは思ったより先に次の標識があらわれる。7号目を過ぎたころに前方の上空にハンググライダーの編隊が見えてくる。6機程だろうか、丁度十勝側から吹き上げる風を利用してスロープソアリングしているのが見える。やがて8号目、9号目にたどり着くとこのハンググライダーが横に見えてくる。また、十勝平野が眼下に広がり高度感が増す。
 春先の峠越えの特徴は、まだ木々の芽が伸び始めたばかりで視界を遮ることもなく、遠くを見通せることがある。たぶん、真夏では見通せない場所でも十勝平野が広がっているのを目にすることができる。
 峠の頂上に立った。眼下に広がる十勝平野、目の前を横切るハンググライダー。そんな風景の中でわずか数時間前に「辞めて帰ろうか」と思ったことが嘘のようだった。30分も居ただろうか。遠くに鹿追を走った時に目にした川の断崖を見ながら、つくづく自分は自転車の旅が好きなんだと感じる。特に数時間前に目にした地形を峠から見おろせるなんて自転車でなければ味わえない醍醐味だ。
 冷えた身体にウインドブレーカーをはおって、ここから落合までは10km弱のダウンロード。落合市街に入って車の止めてあるチェーン着脱場に戻る。
 峠越えだけを考えると距離にして20km程。標高差は300〜400m、初心者向けだけれどダイナミックなコースと言えるだろう。午前中の苦しさを忘れて、「秋にまた来てみようかな」と思わせる魅力ある峠だった。

2000.05.06 本日の走行 101km

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