反復刺激試験


  <目的>
        神経筋接合部における興奮伝達機能の判定、疲労現象の観察など。

  <対象>
        神経筋接合部の障害をきたす種々の疾患。
      Myasthenia Gravis, Myasthenic syndrome (Eaton-Lumbert syndrome)
            Botulinus intoxication  etc.

  <方法> 
        当科では Dsmedt の方法の変法で次のような方法で検査している。
   1)電極の設置はMCVに準じて行う。
    症状のある筋で行うのが原則である。当科では小指外転筋(尺骨神経手首部刺激)
    または眼輪筋(顔面神経耳前部刺激)で行っている。これらの筋で異常のないと
    きは三角筋(腋窩神経 Erb点刺激)や僧帽筋(副神経胸鎖乳突筋後部刺激)で調
        べるとよい。
   2)3Hzの頻度で運動神経を電気刺激し、M波の大きさ(振幅または面積値)の変化
    をみる。
     通常当科では1発目(V1)と4発目(V4)を比較し、振幅が 90%以下に低下し
        ていたら waining ありと考える。 
          
                   decrement (%) = V4 / V1 x 100

      3)疲労試験:疲労負荷として強収縮を30秒間行わせ、M波の変化をみる。
          前値、強収縮直後、30秒後、1分後、3分後、5分後にそれぞれ反復
                  試験を行う。

            post tetanic facillitation (PTF)
                前値での1発目のM波の振幅(M1)と直後の1発目のM波の振幅(M2)
         を比較する。

                  post tetanic facillitation (%) = M2 / M1 x 100

            強収縮負荷により、quantum の数が増すため一時的に伝達が改善され
         1発目のM波振幅は増大する。

            post tetanic exaustion (PTE)
                  3分後の decrement を計算する。
           MGでは前値に比べて強収縮負荷のため decrement が増大する。

   4)テンシロン・テスト:テンシロンによるM波の振幅、あるいは waning の改善度
        などについて調べる。上と同様に時間を追って調べる。
      5)場合によっては 30Hz 、2秒間のテタヌス刺激を行う。
    これは非常に痛いので、短時間にとどめる。

          最大振幅を Vmax とすると、

                 waxing (%) = Vmax / V1 x 100

           Lumbert-Eaton 症候群(LEMS)での waxing が有名であるが、単にM波が増大
              するのではなく、一発目のM波は通常の1/10位に小さいことに注意する。
  <注意>
   1)検査は症状のある筋で行うのが原則。waning がないといってMGでないとはいえ
    ない。逆に waning があるといってMGとは限らない。このとき Tensilon の効
    果があるかが重要。
   2)動きによるアーチファクトを除くため電極の固定は十分にし(これが重要)、手
    指の場合はシーネで固定する。三角筋や僧帽筋のときは助手から動かないように
    抑えてもらう。
     3)刺激は supramaximum で行う。

  <検査の実際>
   眼輪筋を例にとると
     1.記録電極の設置
      皿電極を使用し、(-)を眼窩縁やや下方の正中またはやや外方につける。(+)
      は目尻または目頭近傍につける。
          2.アース電極(銅板)を頬部につける。
     3.伝速に準じ、耳前部で顔面神経を刺激し、最大M波を得られる部位に印をつ
      ける。
          4.刺激電極を皿電極に変え固定する。消しゴムなどでしっかりと圧迫する。
     5.刺激を出し、最大M波を得る強度よりやや強めの刺激強度に設定する。
      M波の形が一定していることを確かめる。
     6.前述した手順に従って反復刺激を行う。
                      
  <結果の解釈>
        MGでは低頻度刺激で waning がみられ、疲労負荷により程度が増す。( PTE )
    強収縮負荷直後の一発目のM波振幅は一時的に高くなる( PTF )。高頻度刺激では
        5-10発目までは減衰し、その後少し回復するが再び減衰していくパターンが多い。
        Tensilon により振幅は高くなり、waning が改善される。
    LEMS では低頻度刺激では waning があるが、高頻度刺激では著明な waxing がみ
        られる。一発目のM波が小さいことに注意。PTF も著明である。


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