脳波
( Electroencephalography : EEG )


  <目的>
     脳の機能的状態を知る。機能障害の有無、性質、程度、分布や睡眠、覚醒の別、
        その他。特にてんかんの診断には不可欠。

  <対象>
        脳機能障害をきたすような全ての疾患

  <方法>
     電極配置:10-20法に準じる。
    電極:皿電極を用いる。
       感染の問題からスピン電極や針電極は現在当科では使用していない。
    普通は 50μV/5mm、3cm/sec  で記録する。
        時定数: 0.3 s
     単極誘導(MP)、双極誘導(BP)で記録。
      
        MP:耳朶が電気的に0であるとみなし、それを基準として各電極の電位を記録
              する。 
              基準電極の活性化に注意。(temporal lobe epilepsy)

     BP:2つの電極間の電位差を記録する。(phase reversal で局在診断)

   【当科での検査の実際】
         1.16chで記録している。
           誘導に関しては Montage がスタンプされているので参照すること。
        MPの場合、上から順に Fp(Lt,Rt)、F(Lt,Rt)、C(Lt,Rt)、P(Lt,Rt)、
            O(Lt,Rt)、AT(Lt,Rt)、MT(Lt,Rt)、PT(Lt,Rt) である。
       施設によって、あるいは脳波計の種類によって Montage が違うことがある
       ので判読に際しては注意する。
         2.当科では次のような順で記録している。
       1)キャリブレーション
       2)単極誘導  5分
       3)双極誘導  3分
             4)単極誘導
            5)開閉眼(α attenuation)
       6)過呼吸(HV)  4分、終了後2分
       7)光刺激(PS) 3, 5, 7, 8, 9, 10, 15, 18, 30 Hz、各 10秒間
       8)キャリブレーション

    注意点
      1.皮膚抵抗は十分落とす。インピーダンス・チェックで確認。
      2.電極を付ける部位の髪をよく分け、少しペーストを擦り込み、ペーストを
       やや多めに付けた皿電極を脱脂綿の小片をかぶせて押し付けると固定でき
       る。
       感染の問題があり、当科では針電極やスピン電極は現在使用していない。
      3.時定数(T)と低域フィルター(fL)の関係:fL=1/2πT

  <脳波の読み>
     a)Back ground activity :BGA (基礎活動)
          周波数、振幅、優位な部位、左右差、waxing/waning の有無、
      paroxysmal rhythm の有無 (spike、sharp wave、slow)
      δ波: 1− 3 Hz
     θ波: 4− 7 Hz
     α波: 8−13 Hz
     β波:14−   Hz
        b)α-attenuation
          開眼するとα波が抑制される。
     c)Hyperventilation (HV)
      当科では4分間HVさせて誘発を試みている。
       HVによる振幅の増大、徐波化、発作波誘発に注意。(build up)
     HV終了後に異常が出ることもある。
        d)photic stimulation (PS)
          光刺激による誘発。
      光刺激に応じて脳波上に変化がでれば driving ありという。左右差に注意する。
      (後頭部に出やすい。)
     driving されること自体は異常ではない。
      build up されることもある。
     ミオクローヌスてんかんで発作波が誘発されやすい。

   以上の結果を総合して判定する。 

     判読上の注意点
    ※睡眠による脳波の変化を異常と間違わないこと。
    ※左右差を問題にするときは電極が左右対称に付けられているか注意する。
     振幅差 20%以上、周波数差 10%以上を左右差の目安とする。
    ※年齢による脳波変化を理解しておくこと。
     思春期以降はほぼ成人脳波と考えてよい。
    ※アーチファクトに注意
     電極の不良、コードのゆれ、筋電図、心電図、眼の動き、瞬き、発汗 等。

  【睡眠脳波】
    自然睡眠が望ましいが、実際には眠剤を使用することが多い。
    異常は軽睡眠期(1〜2期)に出やすい。深睡眠になるとむしろ異常は分かりに
    くい。声をかけたりするとよい。

        ※眠剤によって睡眠導入を図るときは、予め薬剤を用意しておくこと。
     (ラボナ、トリクロリールなど。)

   【ポリグラフ】
    脳波の他に、同時に心電図、筋電図、呼吸曲線、眼球運動などを同時記録する。
    各測定内容毎に、ゲイン、時定数、広域フィルターなどを変えなければならない。


戻る