2002年9月7日〜9日:月岡温泉湯めぐり


 毎年この時期に仕事を兼ねて、2泊3日で温泉に宿泊する機会があります。昨年は弥彦温泉でしたが、今年は月岡温泉です。月岡温泉は石油開発とともに開湯、発展した温泉で、いわうる歓楽的温泉としては新潟県を代表する温泉であり、芸妓の数は新潟県最多と聞きます。団体客中心の大型旅館も数多くあります。「もっときれいになる温泉」として宣伝し、美人の湯として新潟では広く親しまれている温泉です。硫化水素臭漂うこの温泉は、私が最も好きな温泉のひとつです。

 さて、今回の宿泊は「月岡ニューホテル冠月」。巨大なホテル泉慶、華鳳の向かいに当たります。12時までにホテル集合であり、早めに着いて旅館巡りしようと考えていましたが、高速料金をけちって柏崎から下道を通ってきたら時間的余裕はありませんでした。冠月は比較的大きな旅館であり、駐車場も広々しています。隣にあった旧・月岡パレスホテルも冠月が買い取り、別館として利用しています。この月岡パレスホテルは昔の月岡ヘルスセンターであり、私の子供の頃の思い出深い場所でした。そういえば、現在月岡一巨大で豪華なホテルである「華鳳」がある場所には、かつて月岡動物園がありました。月岡も変わったんだなあと感慨が湧きます。冠月も月日の流れに逆らえず、建物に歴史を感じるようになっています。

 夕方になり、夕食まで若干の時間ができましたので、冠月の風呂に入る前に、温泉街を散歩に出ました。まずは、前から気になっていた熊堂屋。古ぼけた民家そのもので、旅館の雰囲気はありません。ちょうど法事をやっていたようですが、快く入浴を受け入れてくれました。料金は600円。奥に家族風呂が2つあり、好きな方に入っていいというので、お言葉に甘えて、両方入りました。ともに1人用の浴槽で、右側の浴室は扇形、左側の浴室には丸い浴槽がありました。ともに掛け流しです。エメラルドグリーンのお湯がたたえられ、表面をよく見ると油膜が浮いているのがわかります。源泉は、温泉組合から配湯されたもののようで、各旅館と同様の成分表がありますが、浴槽が小さい分、源泉そのものの味わいは格別です。温泉好きにはたまらないでしょう。帰り際、温泉を味わうなら浴槽は小さい方がいい、その点ここはすばらしかったと感想を述べると、女将は感激してくれました。この時代の中ではありますが、いつまでもこの素朴な味わいは残して欲しいなあと感じました。

 次は隣の浪花屋。玄関先に、ここは源泉掛け流ししている旨の掲示があり、胸躍ります。入浴は500円。浴室は男女で2つあり、交代で使用しています。右側の浴室が広いのですが、このとき左の狭い方が男湯でした。しかし、女湯に誰もいないようなので、ちょっと入らせていただきました。浴槽には淡緑色のお湯がたたえられ、掛け流しされていました。泉質は、ここも共同配湯で、同じはずですが、浴槽が大きい分、気持ちのせいか、熊堂屋よりは薄めに感じました。ここでタイムアップ。冠月へと戻りました。

 夕食の後、冠月のお風呂に入浴です。大浴槽に淡緑色の湯が満ちており、豪快に循環されていますが、岩組の間から源泉も注がれており、その分は掛け流しになっています。飲泉するときはこの岩の間から注がれる泉水を飲むよう掲示してありました。浴槽については、この湯だけに浸かっていると不満はないのですが、熊堂屋に入った後では、薄味に感じるのは仕方ないでしょう。奥には屋根付きの岩造りの露天風呂があります。湯の味わいは内湯と同様でした。場所柄、景色が見えるわけでもなく、目張りされているため、開放感は乏しく、狭苦しい印象を受けました。ただし、浴室には、他にサウナ、水風呂もあり、十分に温泉を楽しむことができました。

 2日目、夕方仕事が終わり、また時間が空いたので、温泉街の散歩に出ました。裏道を通ってひさご荘へ。ここは以前何度か宿泊したことがありますが、久しくなったので寄ってみました。ちょうどチェックインの時間帯であり、玄関先で客を出迎えていました。入浴は800円。湯めぐりカード(100円)があると700円です。浴室は大浴槽と露天風呂のみでシンプルです。湯は循環されているようで、若干薄味でしたが、横に源泉が噴水状に出ている所があり、たっぷり飲泉しました。露天風呂は長方形で、内湯の大浴槽のオバーフロー分が注ぎ込むような構造に見えました。多少新鮮さは落ちますが、温泉の味わいは十分に楽しめました。以前宿泊した時とずいぶん違った印象に思われました。

 温泉街をうろつき、月岡温泉発祥の地の石碑を見て、その横の青木館に行ってみましたが、玄関の鍵がかかっていました。その横の広場では、催し物をやっており、賑わっていました。閉まっている青木館の引き戸をガタゴトいじっている私は不審人物に見えたかも知れません。さらに歩いて、泉慶裏の路地を歩くと、芸妓の置屋がありました。さらに、華鳳横を通って冠月に帰りました。
 そして、冠月の浴室へ。夕食前の時間帯で、賑わっていました。肌に模様の刻まれた粋なお兄さん方が複数おられ、ご一緒に入浴させていただきました。その道の団体さんなのでしょうか。刺青お断りの施設が多いので、大変なんだろうな、と同情しました。

 3日目、朝風呂を浴びた後、朝食。そして最後の仕事。午後にはフリーになりましたが、その後の予定があり、温泉巡りはせずに帰路につきました。

 月岡温泉は、硫化水素臭ただよい、いかにも温泉を実感させます。共同配湯で、同じ泉質のはずですが、湯の使い方の違いで、味わいも変わります。中でも、熊堂屋の素朴な浴槽は、温泉を味わうには最高と感じました。ただし、一般の方が利用するには躊躇されるかもしれませんが。