サウナの話


 サウナは、乾式の場合、一般には80〜100℃程度に温度設定されていると思います。サウナは熱いのをガマンするところで体にいい、というのは間違いです。100℃を超すと、鼻粘膜や気道が傷害されやすくなり、反射的な息こらえが起こります。また、交感神経の過度の緊張により、脈拍が増え、心臓病の人、高血圧の人、呼吸器病の人には良くありません。若くて丈夫な人にとっては、このような高温サウナは、交感神経が緊張され、覚醒効果が得られ、精神高揚、頭スッキリ、気分爽快、ということになりますが、丈夫でない人にとっては、害になります。体への負担を考えると、60〜70℃の低温サウナがすすめられると思います。このような温度では、逆に副交感神経が緊張され、体がリラックスし、鎮静効果、精神安定効果が得られます。サウナに発汗作用を期待する人が多いと思いますが、発汗量を調べると、高温サウナも低温サウナも有意差がなかったとの研究があります。熱ければいいわけでもありません。また、減量目的でのサウナ利用は無意味です。サウナでの体重減は水分が失われただけであって、脂肪が燃焼したためではありません。水分を補給すれば体重は元に戻ります。
 また、サウナの温度を論じるとき、温度計の場所も問題です。当然ながら、暖かい空気は上に行きますから、サウナ室が階段状になっている場合、下の段より上の段、座位をとっている場合は、足より頭が熱くなります。温度を検討する場合は、顔の高さでの温度を基準にすると良いでしょう。自分の体力に合わせて、座る位置を選ぶことをお勧めします。
 調べてみたら、日本にサウナが導入されたのは、東京オリンピックの時にフィンランド選手団が持ち込んだのが最初とのことです。本場のフィンランドでは80℃程度だそうですので、日本のサウナは熱すぎると言えます。また、サウナに水風呂も付き物ですが、一般に、この温度が低すぎます。20℃以下の所が多いと思いますが、熱いサウナから水風呂というのは、明らかなショック療法です。なまった体に活を入れ、乱れた自律神経を正し、覚醒効果を得ることが期待されます。ただし、あくまでこのショックに絶えられる丈夫な人の話であって、病気持ちの人、中年以降の人は慎重であるべきです。体への負担を考えると、25℃程度の水温がいいと言われています。
 以上のように、通常の乾式サウナは熱すぎます。健康人が健康増進を期待するにはいいでしょうが、疲れた人、弱っている人は、低温サウナを謳っているところや、ミストサウナ、蒸気サウナが良いと思います。サウナが通常の入浴と最も異なるのは、静水圧が全くないことであり、水圧による胸腹部の圧迫がないため、心肺疾患を持った人でも、適切な温度(50〜70℃)であれば、息苦しさなしに利用できます。特に頭を外に出して使用する個人用サウナは、気道への刺激もなく、心肺への影響も少なくて、良いようです。
 以上のようなことを理解した上で、サウナを利用しましょう。決してガマン大会の場所ではありません。自分の体調に合わせて、無理なく利用しましょう。蛇足ながら、サウナから出たら、シャワーで汗を流してから浴槽に入りましょう。このエチケットを守らない人が多くて困りものです。