|
今日はヴァシリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会で、辻井伸行さんとの共演が注目されます。
ロイヤル・フィルは、1946年にトーマス・ビーチャムにより創設され、ロンドンを本拠地として活躍するイギリスを代表するオーケストラのひとつです。
クラシック以外でも、ロックやポップスの演奏、日本のミュージシャンや歌手との共演でも知られ、ジブリ音楽のフィルムコンサートを開催したりなど、クラシックファン以外にもなじみ深いオケだろうと思います。その分「一流オケ感」が失われているように思いますが、どうでしょうか。
今回の日本公演は、9月6日:福岡、7日・9日:サントリーホール、10日:名古屋、11日:立川、12日:新潟、13日:大阪と開催されますが、大都市の中にあって、貴重な地方公演として選ばれたのが新潟ということで、思い切って聴かせていただくことにしました。
しかし、新潟公演のチケット代は、S席30000円、A席25000円、B席20000円、C席15000円、D席10000円と強気の高額設定であり、当初はチケットを買うのも躊躇したというのが実情です。
新潟公演のチケット代は福岡や大阪より高額であり、主催者の新潟市芸術文化振興財団とテレビ新潟には、もう少し頑張っていただきたかったというのが正直な気持ちです。
そんなわけで、さすがにS席は高額過ぎますので、A席で我慢しました。高額な料金設定のためだと思いますが、安価な席はすぐに売り切れたものの、S席はかなりの売れ残りがありました。
プロモーションビデオが公開され、昨日までTVコマーシャルが放送されましたが、チケット完売にはなりませんでした。新潟のクラシック愛好家人口や経済状況を鑑みますと、これでも上等と言うべきかもしれません。
さて、ロイヤル・フィルは録音やビデオではお馴染みで、手元にもCDがありますが、生でロイヤル・フィルの演奏会を聴くのは今回が初めてで、指揮のペトレンコも初めてです。
ロイヤルつながりで言いますと、ロイヤル・リバプール・フィルの演奏会(指揮:ドミンゴ・インドヤン)は2024年5月に聴いており、このときも辻井伸行さんとの共演でした。
辻井さんの演奏は、何だかんだでたくさん聴いており、今年だけでも1月15日の「辻井伸行
日本ツアー2026《抒情と熱情》」、8月8日の「辻井伸行X清水和音 三浦文彰&ARKフィルハーモニック」に引き続いて3回目になります。
今回の演奏曲はショパンのピアノ協奏曲第1番ですが、この曲の演奏は2025年10月の「究極の室内楽
辻井伸行&ARKソロイスツ」以来になります。このときは室内楽版でしたので、今回の通常のオケ版が楽しみです。
ちなみにショパンつながりでいいますと、ピアノ協奏曲第2番は、2018年11月のアシュケナージ指揮アイスランド交響楽団の演奏会で聴いています。
なお、今回の日本公演は、チェレプニンの交響的前奏曲「遠き王女」、ショパンのピアノ協奏曲第1番、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、チャイコフスキーの交響曲第5番、ラフマニノフの交響曲第2番をいろいろ組み合わせてA〜Dプロまでの4種類が組まれていて、新潟公演は9日のサントリーホール公演と同じBプロに当たります。
後半に演奏されるチャイコフスキーの交響曲第5番は、7月8日にスロヴァキア・フィル(指揮:ダニエル・ライスキン)で聴いたばかりですので、個人的には新鮮味がありません。ラフマニノフの交響曲第2番の方が良かったかなと思いましたが、一般的にはチャイコフスキーの方が良いでしょうね。
8日間で7公演行う過密な日本ツアーの終盤で、6公演目の新潟公演です。昨夜の立川公演を終えての新潟の昼公演です。休む間もなく早起きされて新潟への移動となり、大変お疲れのことと思います。ゲネプロもままならず、ホールの音響を確かめる時間も乏しかったんじゃないかと勝手に心配していますが、余計なお世話ですね。
ということで今日の日を迎えました。今週は秋雨前線の影響で雨が続きましたが、昨日の午後から天候は落ち着いて、今日も曇り空ながらも暑すぎることなく、過ごしやすい天候になりました。
洗濯、掃除、ゴミ出しと、与えられたルーチンワークを終えて、着飾って出掛けた暴君を見送り、ゆっくりと家を出ました。
いつもの白山公園駐車場に車をとめて、上古町の楼蘭で冷やし中華をいただこうと思ったのですが、珍しくも満席で断念しました。某所で軽食を食べて、りゅーとぴあ入りしました。
インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、チラシを眺めていましたら、開場が始まりましたので、入場して席に着き、この原稿を書きながら開演を待ちました。
開演時間のかなり前から団員が順次ステージに出てきて、開演5分前にはほとんどの団員が音出しを始めて賑やかでした。
予想通りに客の入りは良くなく、ステージ周りのB席〜D席エリアはびっしりでしたが、他は空席が目立ちました。1階席や2階席正面のS席が虫食い状態なのは想定していましたが、2階B/Dブロック、3階H/Jブロックがごっそり空席というのは異様にすら感じました。これほどの空席があるとは、私の予想のはるか上であり、もったいなく感じました。この空席分は数百万円の減収ということになりましょう。
開演時間となりコンマスが入場。改めてチューニングをすることもなく、すぐに指揮者のペトレンコさんが登場して、開演となりました。
弦5部は、私の目視で 16-14-11-10-8 の16型で、対向配置ではない通常の並びでしたが、チェロは客席側でした。弦の場所にはひな壇が作られず、平面に並びました。ホルン、ティンパニ、トランペット、トロンボーン、チューバはステージの最後方に横1列に並び、その前2列に木管群が中央にまとまって配置されました。
1曲目は、チェレプニンの交響的前奏曲《遠き王女》です。チェロのソロで静かに始まりましたが、ロマンチックな美しい曲でした。初めて名前を聞く作曲家であり、初めて聴く曲でしたが、非常に馴染みやすい曲であり、美しい弦楽にうっとりしながら曲を楽しみました。こんな美しい曲があるなんて、これを聴けただけでも収穫に感じました。
団員の一部が退場してステージ転換され、中央にピアノが設置されました。オケの編成は小さくなり、弦5部は 12-10-8-7-6
となりました。ペトレンコさんに導かれて辻井さんが登場し、続いてはショパンのピアノ協奏曲第1番です。
オケの長い序奏で始まりましたが、シンフォニックなサウンドで、メリハリのある演奏が美しく響きました。ピアノが加わり演奏が展開して行きましたが、辻井さんのピアノは音量が大きく、少し強く弾き過ぎじゃないかと感じるほどでした。良く言えば甘さを排除したきっちりした演奏と言えましょうが、少し荒っぽく、なめらかさに欠けていて、お疲れなのかなあなどと感じながら聴いていました。
第2楽章は美しい弦楽に導かれて始まりましたが、この抒情的な楽章も甘くはなく、醒めた印象に感じました。もう少し繊細に、ソフトに演奏して、しみじみと泣かせてほしかったなあというのが正直な気持ちでした。
少し間を置いて、第3楽章は、出だしの弦の強奏が美しく、以後は切れの良いオケとともにせめぎ合い、どんどんと高揚していき、大きな感動を引き起こしてフィナーレとなりました。
まだ演奏が終わらないうちに拍手が沸き上がり、明らか過ぎるフライング拍手にムッとしたりしましたが、それだけ感動と興奮を誘ったということなんでしょう。
ペトレンコさんに導かれてカーテンコールが繰り返され、辻井さんは四方に丁寧に礼をして拍手に応えていました。
そしてアンコールにショパンのノクターン第8番が演奏され、甘く美しいメロディにうっとりと聴き入り、しっとりとした感動をいただきました。
さらに拍手が続き、アンコール2曲目として、ショパンのエチュード作品10より第4番が演奏されました。これは一転して激しい演奏で、興奮を誘いました。
拍手は鳴り止みませんでしたが、客席の照明が明るくなり、休憩時間に入りました。アンコールを2曲サービスしていただき、ありがたかったですが、今日の辻井さんは力が入りすぎに感じ、もっと流麗な繊細さがほしかったかなと感じました。
昨年聴いた室内楽版での演奏も同様の感想を得ていましたので、これが辻井さん流の演奏なんだと思います。まあ、私の個人的好みや感受性の問題もあろうと思います。あくまで私個人の感想でしかありませんのでお許しください。
休憩後の後半は、チャイコフスキーの交響曲第5番です。開演時と同様に、団員はばらばらにステージに登場して音出しを始めましたが、コンマスは、今度は早いうちからステージに出てきていました。遅れて出てきたチェロ奏者の着席を待ち、全員揃ったところでチューニングになりました。
ペトレンコさんが登場して、演奏開始です。暗いクラリネットで始まり、低弦の重々しい響きとともに演奏が進み、ゆったりと間を置いて行進が始まりました。緊迫感が終始維持され、甘いメロディとの対比も鮮やかでしたが、甘くなりすぎません。16型の弦楽の厚いサウンドが美しく、曲に引き込まれました。
第2楽章は、重々しい低弦に導かれてホルンが美しく歌いました。この曲の見せ場のひとつであるホルンソロがバッチリでした。チェロが美しくメロディを奏で、曲が展開して行きましたが、美しい泣きのメロディに、否が応でも胸が熱くなりました。運命の動機がひとしきり激しく現れるも、その後の美しいメロディとの対比が鮮やかでした。急-緩を繰り返して、クラリネットとともに静かに終わりました。
第3楽章は、美しいワルツを、分厚い弦楽が木管群とともに、ゆったりと歌い上げました。緩急のアクセントの切れも素晴らしく、極上のサウンドに酔いました。
アタッカで突入した第4楽章は、パワーのある弦楽が力強く主題を演奏し、金管が加わって演奏が展開しました。どんどんとエネルギーを高めて、切れの良い演奏は心地良く感じられました。大きなうねりを繰り返して、グイグイと突き進みました。力強く行進してスピードアップし、感動と興奮のフィナーレへと駆け上がりました。
客席に興奮がもたらされ、スタンディングオベーションとともに、割れんばかりの拍手が贈られました。カーテンコールが繰り返され、ステージ後方の客席にも礼をして拍手に応えました。
そしてアンコールとして、エルガーの「愛の挨拶」を弦楽(+木管・ホルン)で演奏し、しっとりとした感動を誘って、先ほどの興奮を鎮めてくれました。イギリスのオケに相応しい粋な選曲にブラボーを贈りたいと思います。
拍手は続き、ペトレンコさんがもう1曲演奏していいかなというようなポーズをして、ブラームスのハンガリー舞曲第6番が演奏されました。弦がパワーに溢れながらも美しさに満ちていて、民族色が排除され、洗練されたノーブルな演奏でした。緩急のアクセントをこれでもかと取って、切れの良い、小気味の良い演奏に大きな感動をいただきました。拍手は鳴り止まず、客席の照明が明るくなってもカーテンコールが続きました。
期待通りの素晴らしい演奏であり、特に弦楽が美しく、オケの素晴らしさを感じ取ることができました。奇をてらうことにない演奏で、きっちりとまとまった演奏に感じました。
大いに楽しませていただきましたが、S席3万円(私はA席2万5千円)に相応しいかといいますと、少し考え込んだりもしてしまいます。
チャイ5の素晴らしい演奏で大きな感動をいただいたのは間違いありませんが、7月8日にS席5700円聴いたスロヴァキア・フィルと比べて、何倍もの感動だったかと考えますと、そうとは言い難いようにも思いますが、どうなんでしょうね。まあ、よけないなことは考えず、素直に感動に浸りたいと思います。
ともあれ、いい音楽を聴けたことは間違いなく、喜ばしい気分で駐車場へ向かい、スーパー銭湯で汗を流して帰宅しました。
最後に、何度も新潟に来演している辻井さんですが、来年7月9日に、今度はオルフェウス室内管弦楽団とともに、りゅーとぴあに来演されます。また主催はテレビ新潟ですが、その熱意には感服します。
(客席:3階 I 3-9、A席:¥25000) |