ジャン・チャクムル ピアノ・リサイタル
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2026年9月6日(日)14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
ピアノ:ジャン・チャクムル
 
シューベルト/リスト:ウィーンの夜会第6番
ラッヘンマン: シューベルトの主題による5つの変奏曲
シューベルト/リスト: さすらい人 (歌曲D489 による)
リスト: 《巡礼の年 第1年「スイス」 》 より “オーベルマンの谷”

(休憩15分)

シューベルト:4つの即興曲 D899, Op.90
  第1番:ハ短調
  第2番:変ホ長調
  第3番:変ト長調
  第4番:変イ長調 
ショパン: アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22

(アンコール)
リスト:メフィスト・ワルツ第1番
シューベルト:水車屋と小川(美しき水車小屋の娘 D795 より)
 

 今日は、2018年11月に開催された第10回浜松国際ピアノコンクール優勝をきっかけにして、華々しい活躍を続けているトルコ出身のピアニスト、ジャン・チャクルムのリサイタルです。
 新潟では、第10回浜松国際ピアノコンクール優勝者コンサーツアーの一環として、2019年8月にリサイタルを開催しており、今回は7年ぶりのリサイタルになります。
 前回は、自由闊達でスピード感とパワーに溢れながらも、クリアで色彩感のある演奏に魅了されました。あれから7年の年月を積み重ねて、どのように進化した演奏を聴かせてくれるのか楽しみでした。本人からもメッセージが寄せられており、期待が高まりました。

 今回のプログラムは、チャクムルさんが力を注いでいるというシューベルトを中核にして、ラッヘルマン、リスト、ショパンなど、本人が自らセレクトした曲が演奏されます。
 使用するピアノは、前回のリサイタルと同様に Shigeru Kawai SK-EXです。チャクムルさんは、 2018年の浜松国際ピアノコンクールで一躍注目され、ピアニストとしてのキャリアをスタートし、このときに使用した Shigeru Kawai とともに歩んできました。この思い入れの強いピアノとともにどんな演奏を聴かせてくれるでしょうか。
 最近このピアノを使用する演奏会が多いように思いますが、それだけ素晴らしいピアノなんでしょうね。私の耳にはよくわかりませんけれど・・。
 
 今日は曇り空ながら暑すぎることもなく、過ごしやすい日曜日になりました。ゆっくりと休日の朝を過ごし、昼食を食べて家を出ました。
 今日のりゅーとぴあは、コンサートホールのほか、劇場、能楽堂、スタジオAがフル稼働しているほか、隣の新潟県民会館、新潟市音楽文化会館とも公演があり、大盛況の日曜日になりました。
 このほかに新潟市内では、なにわ男子のライブで全国から女性ファンが結集している朱鷺メッセを筆頭に、新潟テルサ、だいしほくえつホールでも公演があり、新潟市もたいしたものだと驚いています。
 そんな状況ですので、駐車場は混雑必至と予想して早めに家を出たのですが、駐車場にはすんなりと車をとめることができました。
 白山公園の桜の葉は赤く色付き始めており、秋なんだなあと実感しました。県民会館を覗いてチラシ集めをしたのですが、きれいな若い女性がたくさんおられ、グッズ販売で賑わっていました。

 りゅーとぴあに入りますと、それほどの混雑もなく、静かな空気に包まれていました。開場まで東ロビーで休み、開場とともに入場しました。
 席に着いて、この原稿を書きながら開演を待ちましたが、ステージには Shigeru Kawai SK-EX が鎮座していました。
 開演時間になっても客席は埋まらず、ちょっとと言いますか、かなり寂しい状況で残念でした。そんな状況ながらもB席エリアはびっしりで、アンバランスさが異様に感じました。
 こんなことなら、ピアノ教室に通っているような子供たちを無料招待すれば良いのになあ、などと思いながら開演を待ちました。

 時間となり、チャクルムさんが登場して、1曲目は、シューベルト/リスト編曲の「ウィーンの夜会 第6番」です。低音が美しく響き、先入観もあるかもしれませんが、いつものスタインウェイよりふくよかな印象を感じました。客が少ないせいもあり、いつもよりホールの響きは豊潤に感じられて良かったです。
 緩急・強弱のアクセントも美しく、明るく華やかな音楽が溢れ出て、演奏に引き込まれました。なんて美しい音、なんて美しい演奏なんだろうと心の中でつぶやきました。

 2曲目は、ラッヘンマンの「シューベルトの主題による5つの変奏曲」です。少しメランコリックに感じる主題を奏でて、以後様々に形を変えて演奏が進みました。
 激しく、ゆったりと少し幻想的に、そして再び激しくのた打ち回り、そして静かに深遠に、繊細な音を響かせて緊張感を生み、静寂の中に響いて終わりました。

 3曲目のシューベルト/リスト編曲の「さすらい人」と4曲目のリストの「オーベルマンの谷」は切れ目なく演奏されました。
 「さすらい人」は、ゆったりと柔らかく響かせて始まりました。優しく響くピアノが疲れた心を癒してくれるようでした。少し激しく気持ちを高めて、穏やかに歌い、感情を揺らめかせながらも優しさに満ちた音楽に心は浄化され、心の傷が癒されました。息を呑むような弱音の美しさが心に染みました。
 シームレスに続く「オーベルマンの谷」は、嘆くような音楽が心に響き、切ない悲しみが心に染み入りました。感情を高ぶらせ、悲しみから立ち直り、穏やかさを取り戻しました。優しく美しく、明るく喜びに満ちて感情を高揚させて演奏が終わりました。演奏が終わってもピアノは長く響き続け、その余韻を十分に味わい、無音の静寂が訪れるとともに盛大な拍手が沸き上がりました。

 休憩に入りましたが、ピアノは入念な調律が行われていました。そして後半は、シューベルトの「4つの即興曲」です。
 第1曲は、しっとりと、ゆったりと始まりました。弱音を美しく響かせて、繊細さに息を呑みました。緩急・強弱のアクセントを大きく揺り動かし、しっとりと、美しく終わりました。
 第2曲は、流麗に音楽が流れ出ました。大きなうねりを作り、激しさを見せるも、再び流麗に音楽が流れ、この対比も鮮やかで美しく、熱量を上げて終わりました。
 第3曲は、しっとりと優しく響く音楽が心地良く感じられました。柔らかく心に響く音楽は、大きな波を作りながらも、安らぎに満ちていました。低音の美しさも特筆したいと思います。癒しの音楽に心が熱くなり、曲の良さを見事に表現してくれました。
 第4曲は、悲しさと憂いを感じさせるメロディで始まりました。優しさに満ちた音楽が流麗に流れ、感情を揺り動かしながら、穏やかに、しっとりと泉のように湧き上がり、うっとりと聴き入りました。
 何度かこの曲を聴く機会がありましたが、これほどまでに心に染みる演奏はなく、この曲の良さを改めて知らしめてくれる演奏であり、新鮮な感動をいただきました。変幻自在な演奏に脱帽しました。

 最後はショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」です。これまでの流れと同様に、流麗に音楽が流れ出て演奏が始まりました。柔らかくしっとりと、優しく響くピアノにうっとりと聴き入りました。アクセントを付けながら、淀みなく音楽が湧き出ました。
 後半のポロネーズは、力強く、明るく、アクセントを付けながらリズムを刻みました。ちょっと癖が強すぎにも感じるほどでしたが、流麗な音楽は気持ち良く、音は美しく輝いていました。
 これまで聴いたこともないような演奏に身を委ね、音楽の流れを楽しみました。一音一音がクリスタルのように輝いており、その響きに感激しました。

 大きな拍手に応えて、アンコールにリストの「メフィスト・ワルツ第1番」が演奏されました。激しく、猛スピードで疾走し、その迫力に圧倒されました。こんな曲だったっけ? と思わせるほどにデフォルメされて、緩急・強弱自在な音楽にひれ伏すしかありませんでした。
 緩徐部は思いっきりゆったりと歌わせて、そして激しく爆発させました。まさに今日の演奏を総括するような演奏でした。激しくとも音の美しさは失わず、弱音の美しさも格別でした。

 拍手は鳴りやまず、アンコールの2曲目は、シューベルトの「水車屋と小川」です。しっとりと、ゆったりと、しんみりと心に染み入る音楽にうっとりとしました。透き通ったサウンドで奏でられる美しい癒しの音楽に、心は洗われ、先ほどの興奮を鎮めてくれました。
 
 拍手は続きましたが、客席が明るくなり、感動のリサイタルは終演となりました。CD販売がされていて、購入者にはサイン会が開催されましたが、買わなかった私はホールを後にしました。

 大きな感動と満足感を胸にホールを出ますと、劇場前にはたくさんの人で賑わっていました。外に出ますと、県民会館前はたくさんの若い女性で溢れていました。県外客も多いのか、NIIGATAのモニュメント前で記念写真を撮る人も多く見られました。
 若い女性は朱鷺メッセに行ったものと思っていましたが、ここにもたくさんの若い女性が集まっていたのは驚きでした。私にはわかりませんが、きっと人気のアーティストなんでしょうね。新潟が賑わって何よりです。

 空は厚い雲に覆われていましたが、いい音楽を聴いて、私の心は晴れやかでした。KAWAIの威信をかけて入念にチューンナップされた SK-EX の美しいサウンドと相まって、チャクルムさんの作り出す音楽に圧倒されました。決して力で押し切るのではなく、強奏部でも音は美しく、繊細な音楽で心が浄化されました。すばらしいピアニストですね。
 でも、集客が少なかったのは残念でした。イベントが多すぎた日曜日ではありましたが、こんなに素晴らしい演奏を聴きに来ないなんて、新潟の音楽ファンは何をしているんでしょうね。ほんとうにもったいないことをしましたね。
 逆に私は、素晴らしい演奏に出会えた満足感でいっぱいであり、いい演奏を聴いた喜びを噛み締めています。もちろん今年のベスト10候補に挙げたいと思います。

 

(客席:2階C3-7、S席:¥4500)