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毎年10月にサントリーホールでは都市型音楽祭の「サントリーホールARKクラシックス」が開催されています。この音楽祭のレジデント・オーケストラとして、2019年に「ARKシンフォニエッタ」が創設されましたが、編成が拡大されて、2024年より「ARKフィルハーモニック」と改称されました。
アーティスティック・ディレクターに三浦文彰さん、レジデント・ピアニストに辻井伸行さんが就任し、三浦さんはヴァイオリニストだけでなく指揮者として活躍しています。
この三浦さん率いるARKフィルハーモニックは、ソリストに清水和音さんと辻井伸行さんを迎え、8月4日〜11日まで全国ツアーを7公演行い、その一環としての柏崎公演です。
今回のツアーは、当初は辻井さんの参加は予定されておらず、清水和音さんがベートーヴェンのピアノソナタとピアノ協奏曲第5番「皇帝」を演奏し、そのほかに、公演によってヴァイオリン協奏曲(独奏:三浦文彰)か交響曲第5番「運命」が演奏される予定でしたが、辻井さんの参加が急遽決定されました。これに伴いプログラムが変更され、コンサート名も変更されたという裏事情があります。
巨匠というべき清水さんを前座にして、辻井さんをメインにすえてコンサート名まで変更するというのは、失礼すぎるのではないかと私は思ってしまうのですが、チケットの売り上げを考えたときには、こうするのが現実的なのでしょうね。
今回のツアーは、8月4日の横浜みなとみらいホールに始まり、5日は東京オペラシティ、6日は栃木県総合文化センター、8日は柏崎市文化会館、9日は石川県立音楽堂、10日は高崎芸術劇場、11日は所沢市民文化センターと、8日間で7公演というハードスケジュールで開催され、柏崎公演は中間の折り返し点に当たります。
この「サントリーホールARKクラシックス 」関連のコンサートとしては、2025年10月に「究極の室内楽
辻井伸行&ARKソロイスツ」という公演が長岡市立劇場で開催され、私も聴きに行きましたが、今回は室内楽編成ではなく、オーケストラでの公演です。
当初の清水和音さんに加えて辻井さんが参加するため、ピアノ協奏曲の二本立てという変わったプログラムになりました。
辻井伸行、清水和音、三浦文彰という3枚看板を掲げてのコンサートとなり、チケットは完売必至と勝手に予想して、柏崎遠征は大変ではありますが、後先考えずに勢いでチケットを買ってしまったというのが真相です。
今回は指揮者として出演する三浦文彰さんは、本年5月の新日本フィルの公演(指揮:佐渡裕)でブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴いて以来です。
辻井伸行さんは、本年1月に「辻井伸行 日本ツアー2026 《抒情と熱情》」を聴いて以来です。9月にもロイヤル・フィルとの公演が新潟で予定されており、相変わらずの忙しさには敬服いたします。また、辻井さんの「皇帝」を聴くのは、2019年11月のハンブルク・フィル(指揮:ケント・ナガノ)以来になります。
清水和音さんは、随分前に聴いたことがあるようにも思いますが記憶は定かではなく、もしかしたら今回が初めてかもしれません。
今週は梅雨明けして暑い日が続いていました。今日は出かけるときは多少の雲は出ていましたが、まずまずの好天になりました。
某所で早めに昼食を摂り、シーサイドライン経由で寺泊へ向かいました。魚の市場通りを抜けて、海岸沿いを南下し、賑わう数々の海水浴場を横目に見ながら柏崎へと進みました。
寺泊からは、すべての交差点を直進すれば柏崎市文化会館アルフォーレ前に到着できますので、初めての人にも行きやすい道だと思います。高い高速料金を払わずに済みますし、時間もそれほどかかりませんのでお勧めです。
天気の良い中に快適なドライブでアルフォーレに到着しました。このホールに来たは昨年11月のツィメルマンのリサイタル以来になります。
帰りに出やすい場所に車をとめて、館内に入り涼んでいますと、ほどなくして開場となりました。列に並んで入場し、ロビーの椅子でこの原稿を書きながら開演を待ちました。ステージでは入念なピアノ調律が行われており、ロビーにその音が漏れ聴こえてきました。
受付で配付されたプログラムを眺め、メンバー表を見ますと、ヴァイオリンには三浦文彰さんのお父様の三浦章宏さんのお名前もありました。親子共演というのは良いですね。
フルートの濱崎麻里子さん、オーボエの荒木良太さん、クラリネットの近藤千花子さん、ティンパニの清水太さんなど、新潟でお馴染みの東京交響楽団のメンバーの名前もあり、そのほかにもヴァイオリンの東亮太さん、チェロの大宮理人さん、フルートの高木綾子さんなど、豪華メンバーが並んでいました。
開演時間が近付いたところで席に着きました。ステージではコントラバスが音出しをしており、ステージ裏からは管楽器の音が賑やかに聴こえていました。弦の配置は通常型で12型(12-11-8-7-5)のようでした。
ステージの左右にはヒアノが2台置かれていました。このホールにはスタインウェイD274とヤマハCFXがありますので、この2台を二人のピアニストが別々に使用するものと思われました。辻井さんは専用のヤマハを今回のツアーで使用しているとのネット情報もありました。
開演時間となり、拍手の中に団員が入場しました。コンマスは年配の男性でしたので三浦章宏さんでしょうか。チューニングが終わり、三浦文彰さんが登場し、全員で礼をして演奏開始です。
1曲目は、「エグモント」序曲です。重厚に、ゆったりと演奏が始まりました。豊潤な響きのホールと相まって、音量豊かに厚みのあるふくよかな弦楽のサウンドが響き渡りました。
重厚感がありながらも切れの良い演奏が心地良く、ワクワクするような演奏に、心踊りました。まさに21世紀のベートーヴェン、令和のベートーヴェンがここにあり、三浦さんの曲作りの素晴らしさと、オケの質の高さを感じさせました。特に分厚い弦のバワーに感嘆し、常設のオケでも聴けない躍動感を感じました。挨拶代わりの序曲の演奏でしたが、早くもブラボーが贈られました。
一旦第1ヴァイオリンだけ退席して、左側のピアノが中央に移動されました。遠目で良くわかりませんでしたが、スタインウェイのようでした。
第1ヴァイオリンが席に着きましたが、コンサートマスターが交代して女性になりました。ネット情報では松浦奈々さんのようでした。清水さんと三浦さんが登場し、2曲目はベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番です。
柔らかなピアノで曲が始まり、長いオケの演奏が続き、ピアノが加わって演奏が展開しました。1曲目に感じたオケの印象と同様に、厚くてパワフルな弦楽がふくよかに心地良く響き、美しいピアノと溶け合っていました。終盤の長大なカデンツアは見事であり、清水さんの魅力が溢れ出ました。弦のピチカートでオケが加わり、楽章を終えました。
第2楽章は、力強く重厚な弦楽で始まり、柔らかく響くピアノとの掛け合い、オケとピアノとのメリハリが強調されて、素晴らしい演奏効果を作り出していました。しっとりと繊細な中に第3楽章へ進みました。
第3楽章は、明るく軽やかなピアノとともに軽快に演奏が進みました。爽やかに、しかしパワーも感じさせ、躍動感に溢れて大きな感動をもたらしました。この曲の魅力を知らしめてくれる見事な演奏に大きな拍手が贈られました。
拍手に応えてのアンコールはショパンの英雄ポロネーズでした。これは抑えていたパワーを全開にしたような爆発的な演奏でした。前半は荒っぽく思えるほどに感情を高めましたが、後半は次第にパワーがありながらも美しく音がまとまり、繊細な場面との対比も鮮やかでした。聴き応えある演奏に圧倒され、客席に興奮をもたらして前半が終わりました。
休憩時間にスタインウェイは片付けられ、右にあったヤマハが中央に設置されました。拍手の中に団員が入場しましたが、コンマスはまた交代していました。三浦章宏さんと良く似た人で、ネット情報では��橋和貴さんとのことでした。
三浦さんに導かれて辻井さんが登場して、後半はベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」です。ピアノとゴージャスなオケが鳴り響いて第1楽章が始まりました。パワーに溢れて粒立ちの良いピアノで一気に辻井ワールドに誘われました。
前半同様に厚みと切れのあるオケの演奏が続き、長く待たせた後に軽やかにピアノが加わって音楽が展開して行きました。クリアで淀みなく流れるようなピアノの美しさに魅了され、豪華絢爛なオケのサウンドとともに、これぞ「皇帝」と思わせました。繊細な響きからエネルギーを高めてフィナーレへと駆け抜けて興奮をもたらし、拍手した人がいましたが、誰も釣られませんでした。
第2楽章は、美しい弦楽で始まり、天上の音楽を聴かせてくれました。個人的な好みでは、もっとゆったりと、ソフトに演奏しても良いのではと感じましたが、甘くなり過ぎない引き締まった演奏といえましょう。
第3楽章は、ダイナミックに展開し、ピアノもオケも全開で、躍動感に溢れる演奏に、否応なく心は揺さぶられ、胸が高鳴りました。ホールに興奮をもたらして、ブラボーが贈られました。
大きな拍手に応えて、アンコールは「月光」の第3楽章が演奏されました。ステージに導いた三浦さんは指揮台に座って聴いていました。
パワー全開で猛スピードで突進しましたが、かといって演奏の乱れは全くなく、音の洪水が淀みなく流れ出ました。「皇帝」での興奮をさらに高めて、聴衆はノックアウトされました。偏屈な私は、ここまでやらなくてもと思いましたが、お見事というしかありません。
最後はオケメンバー全員が立ち上がって礼をして、興奮と感動の演奏会は終演となりました。清水さん、辻井さんのピアノは期待通りであり、これ以上にオケの素晴らしさに感動しました。
躍動感のある生き生きとした演奏に圧倒され、最初の「エグモント」序曲を聴いただけでその凄さは実感されました。最近立て続けにたくさんのオケを聴いてきましたが、個性溢れるサウンドであり、特に3人のコンマスに率いられた弦が素晴らしく、新鮮な驚きと感動をいただきました。今度は交響曲でも聴いてみたいですね。
そして、ホールの音響の良さ、雰囲気の良さも再認識しました。ふくよかな響きと、落ち着いた館内は魅力的であり、りゅーとぴあと並んで新潟県を代表するホールであることは間違いありません。
まさに《究極のベートーヴェン》を聴いた感動とともに外に出ますと、空は厚い雲に覆われており、雨がぽつぽつと降り出そうとしていました。楽屋口には大型バスが2台と、高級ワンボックス車が2台待機していました。これから金沢へ移動でしょうか。お疲れなことと思います。
新潟へ向けて海岸沿いを北上しましたが、雨が降ったり止んだりの繰り返しでした。コンサートの間に中越地域には大雨警報や竜巻注意情報も出されていたようでしたが、海岸沿いは大雨にならなくて良かったです。
(客席:1階20-15、S席:¥11000) |