濱野芳純 オルガン・リサイタル
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2024年7月20日(日) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
オルガン:濱野芳純
 
フランク:コラール第1番 ホ長調
ブラームス:「11のコラール前奏曲」Op.122 より
  4. わが心は喜びにみちて 
  10. わが心の切なる願い
J.S.バッハ:パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582

(休憩20分)

デュリュフレ:組曲 Op.5
  プレリュード  シシリエンヌ  トッカータ
フローレンツ:「賛歌」Op.5 より 
  3. マリアの竪琴
ヴィエルヌ:ウェストミンスターの鐘

(アンコール)
J.S.バッハ:天にまします我らの父よ BWV636


 
 今日は、石丸由佳さんの後任として、今年の4月から、りゅーとぴあの第5代専属オルガニストに就任した濱野芳純さんの初めてのリサイタルです。
 就任披露の記念すべき演奏会ですので、りゅーとぴあファンを自認する私は、新専属オルガニストの品定めということで、是非とも聴かせていただきたいと思い、チケットを早々に買っていました。

 関東甲信地方は梅雨明けしましたが、新潟はまだ梅雨の真っ只中です。朝まで雨が降り、その後も曇り空が広がっていて、ちょっと蒸し暑い土曜日になりました。
 いつものルーチンワークを終えて、12時前に家を出ました。白山公園駐車場に車をとめて、上古町へと歩きました。先週は人出が多かったですが、今日は落ち着いた静かな空気で満たされていました。
 先週は満席で断念した楼蘭で、いつもの冷やし中華をいただきましたが、中に入るなり「いつものですね」と言われてしまいました。完全にワンパターンですから、仕方ないですね。でも、これを食べると幸せになれます。

 お腹も心も満たして、白山公園を散策しましたが、池を埋める背丈が伸びた蓮にピンク色の花が咲いていてきれいでした。しばし眺めて、りゅーとぴあへとゆっくりと歩きました。
 館内に入り、チラシ集めをして、インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、開場とともに入場しました。ホールに入りますと、ステージにはスクリーンが設置されていました。

 席に座ってこの原稿を書きなから開演を待ちましたが、いつものオルガンコンサートより客の入りは良く、初めてりゅーとぴあに来た人も多いようでした。盛況で何よりです。これを機会に、オルガンの素晴らしさ、りゅーとぴあの素晴らしさを知ってもらいたいですね。

 開演時間となり、濱野さんが助手とともに登場し、濱野さんの挨拶がありました。昨年フランスから帰国し、オーディションを受けて、今年4月から専属オルガニストに就任したこと、前半はオルガンらしい荘厳な曲を照明とともに演奏し、後半は技巧的で華やかな曲をスクリーンを用いて演奏することなどの説明がありました。

 そして、教会のステンドグラス風の照明とともに、フランクの「コラール第1番」が演奏されました。ストップを駆使して、いくつもの音色を使い分け、しっとりと演奏しました。静かな前半からエネルギーを増した後半まで、多彩な音色で楽しませ、華やかにフィナーレを盛り上げました。

 続いては、青い照明とともに、ブラームスの「11のコラール前奏曲」からの2曲が演奏され、切々と心に訴えかけるような重厚な響きが胸に迫りました。

 前半最後は、赤い照明とともにバッハの「パッサカリアとフーガ ハ短調」が演奏されました。赤い照明と曲調とが血なまぐささを感じさせ、足鍵盤で奏でられる主題がグロテスクにすら感じられ、熱く胸に響きました。
 メロディは様々に形を変えて演奏され、手鍵盤による華やかな音楽と、足鍵盤による愚直にも感じられるメロディの対比が鮮やかで、壮大なフーガとともに、感動の音楽を創り上げました。

 休憩後の後半は、演奏の様子がステージ上のスクリーンに映し出されながら演奏が進められました。最初は、デュリュフレの「組曲」です。
 プレリュードは、怪しげなオルガンの響きとともに、ファンタジーの世界へと誘われ、摩訶不思議な静けさに包まれました。
 シシリエンヌは、軽やかな優しい響きが、透明感を感じさせて、しっとりと心にしみてきました。遠近感も感じさせる音色の多彩さに感嘆しました。
 トッカータは、一転して華やかで煌びやかな音色で楽しませてくれて、SF的な、スターウォーズでも聴くような印象を感じました。
 
 ここで濱野さんにより、パイプオルガンの音色を作り出すストップについての説明がありました。音色の違いのほか、パイプの長さの違いによる音の高さの変化を、実際に音を出して解説してくれて、興味深かったです。

 続いては、フローレンツの「賛歌」より「マリアの竪琴」が演奏されました。フローレンツという作曲家は、今回初めてその名前を聞きましたが、フランスの現代作曲家で、フランスの印象派とアフリカ音楽の呪術的な要素を融合した作品を多く残し、この曲もエチオピア正教の朝の祈りの儀式を元にした作品だそうです。
 不思議で多彩な音色が次々と出てくる複雑な音楽で、現代風の、電子音楽的な音色が感じられ、パイプオルガンの奥深さを感じました。

 最後の曲は、ヴィエルヌの「ウェストミンスターの鐘」です。ダイナミックレンジを大きく取った演奏で、噴水のように沸き上がる華やかな音の流れの中に、チャイムでお馴染みの鐘の音が響き渡りました。どんどんと音量を上げて、パワー溢れるフィナーレに圧倒されました。最後を飾るに相応しい壮大な音楽に、ホールに興奮をもたらしました。

 拍手に応えて、濱野さんの挨拶があり、これからの4年の任期を頑張りたいとの決意表明があり、アンコールに、静かな曲として、バッハの「Vater unser im Himmelreich」がしっとりと演奏されて、感動の中に就任記念リサイタルは終演となりました。

 聴き慣れたはずのりゅーとぴあのオルガンから、これまでに聴いたことのない音を作り出してくれた濱野さんに大きな拍手を贈りたいと思います。
 石丸由佳さんが去り、心に大きな穴が開いていましたが、濱野さんが十分すぎるほどにその穴を埋めてくれました。
 これまでに、吉田恵さん、和田純子さん、山本真希さん、石丸由佳さんという4人の専属オルガニストの演奏を聴いてきましたが、濱野さんは新たなオルガンの魅力を示してくれて、新鮮な感動をいただきました。オルガン奏者による音作り(レジストレーション)の重要性を改めて感じるとともに、濱野さんの素晴らしさが感じ取られて、これからの活躍が期待されました。

 今後の濱野さんの演奏会は、8月11日のファミリーコンサート、9月11日の1コイン・コンサート、12月20日のクリスマスコンサート、そして来年3月15日のオルガン・リサイタルが予定されています。皆さんも是非お聴きください。

 期待の遙か上を行く素晴らしい就任披露演奏会となりました。大きな満足感を胸に、ホールを後にして外に出ますと、青空が広がっていて、日差しが強く感じられました。素晴らしい演奏が、雨雲を吹き飛ばしてくれたのではないでしょうか。天も演奏会の成功を祝福しているようですね。

 
(客席:2階C7-11、¥2000)