Noism Company Niigata 20周年記念公演 「Amomentof」
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2024年6月29日(土) 17:00 新潟市民芸術文化会館 劇場
 
『Amomentof』
演出振付:金森穣
音楽:Gustav Mahler《交響曲第3番第6楽章「愛が私に語ること」》
レオタード:YUMIKO
出演:Noism0、Noism1、Noism2

(休憩20分)

『セレネ、あるいは黄昏の歌』
演出振付:金森穣
音楽:Recomposed by Max Richter《Vivaldi: The Four Seasons》
衣裳:中嶋佑一
出演:Noism0、Noism1
 今回は、今や新潟の宝ともいえるNoismの20周年記念公演です。6月28日〜30日まで新潟で3公演開催された後、7月26日〜28日に埼玉で3公演が開催されます。
 昨日の初日は、バーゼル室内管弦楽団と重なり、明日は所用がありますので、今日の新潟公演の中日を観させていただくことにしました。

 梅雨の中休みで快晴の土曜日。いつものルーチンワークを終えて、ゆっくりと昨日のコンサートの記事をまとめて、家を出ました。
 白山公園駐車場に車をとめて、公園を散策しました。暑すぎることもなく、青空に映える木々の緑が目に鮮やかでした。
 静かな県民会館に立ち寄ってチラシチェックをし、りゅーとぴあ入りしました。インフォメーションで某コンサートのチケットを買いますと、ちょうど開場時間となりましたので、列に並んで入場しました。
 回廊の手すりに、過去の公演のポスターがズラリと展示されていて、20年の歴史を感じさせました。ロビーの窓際に座って、この記事を書いていましたが、ロビーは開演を待つ人たちで賑わいを増し、コンサートとは違った熱気を感じました。
 
 開演時間が近付いたところで席に着きましたが、客席はびっしりと埋まり、否応なく気分が高まりました。私の席は2階の2列目でしたが、すぐ前には新潟県・新潟市のトップが並んで座っておられました。この記念公演を鑑賞され、今後の文化行政に役立てていただきたいと思います。

 前半は、今日の公演名にもなっている「Amomontof」です。Noism0+Noism1+Noism2の総員25名によって演じられました。
 「Amomontof」とは「一瞬の」という意味の「A moment of」を縮めて作った造語だそうで、金森さんの20年の闘いは一瞬であり、舞踊とは「一瞬」への献身であるという金森さんの舞踊観が込められているそうです。
 
 場内が暗転し、無音の中に幕が上がりますと、ステージにはバレエ練習用の金属バーが並べられていて、井関さんが稽古に励んでいます。そこに他の団員が一人、二人と出てきて、それぞれが自分のやり方で稽古しています。鍛え上げられ、絞り込まれた団員たちの身体的美しさと柔軟性に息を呑みました。
 金森さん以外の全員が揃ったところでストップモーションとなり、井関さんだけが動き出して、マーラーの交響曲第3番第6楽章の壮大で美しい音楽とともに、演技が続きました。
 全員レオタード姿ですが、金森さんだけはスーツ風の衣装で登場し、井関さんとのデュエットは神々しいほどに美しく感じられました。バーは縦横に配置を変え、群舞の美しさに圧倒されました。
 そして、それぞれが別々の衣装で登場。どういう意図か初めはわかりませんでしたが、後方に過去の演目のポスターが投影され、過去に演じてきた衣装で、Noismの20年の歴史を振り返っているのだろうと推測しました。
 最後は開演時と同様にバーが並べられ、音楽が消えて、再び団員たちが無音の中で稽古をするところで幕が降りましたが、演技がまだ続いている中に、音楽が消えたところで大きな拍手が起こったのがちょっと残念に感じました。
 稽古中の一瞬の間に、20年の歴史が走馬灯のように甦ったということでしょうか。一瞬たりとも目が離せない渾身の舞踊に、Noismの素晴らしさがダイレクトに感じられました。井関さんの叫び声の演出も胸に刺さりました。
 盛大な拍手が贈られましたが、いつものように幕は降りたまま上がることなく場内が明るくなって、カーテンコールなしで休憩時間に入りました。

 休憩時間中はロビーの椅子でこの原稿を書いていました。ロビーで立ち話する人たちの話し声が聴こえてきましたが、県外から観に来られた人も多くおられ、舞踊関係者の方も多いようでした。20周年記念ということで、旧Noismメンバーの方々も来られていたようです。

 後半は「セレネ、あるいは黄昏の歌」で、Noism0とNoism1により演じられました。5月に富山県の黒部シアターで野外上演されましたが、今度は劇場に場所を移しての上演となりました。
 「セレネ」とは、ギリシャ神話の月の女神だそうです。「月」といいますと、大成功を収めた金森作品の「かぐや姫」を思い出してしまいますが、目に見える「月」ではなく、月の引力、月が持つ「目に見えない力」をテーマとしているようです。
 マックス・リヒター編曲によるヴィヴァルディの「四季」の音楽とともに、様々な白い衣裳の団員によって演じられました。黄昏時に、白い舞台の上で、白装束の集団によって営まれている儀式が表現されているようですが、そこに込められた深い意味など、私には分かるはずはなく、デフォルメされた「四季」の音楽とともに演じられる舞踊に目を凝らすのみでした。
 途中個人的にはちょっと不快に感じた暴力的な振り付けがあったりしましたが、人間の持つ「業」が表現されていたんでしょうね。
 やはりNoism0の井関さんと山田さんは際立っており、最後はステージに山田さんだけが残り、静けさの中に終演となりました。
 
 幕が降りるととともに盛大な拍手が沸き起こり、スタンディングオベーションの中にカーテンコールが続きました。Noism2のメンバーも前半の演目の衣裳で登場し、白い衣裳のNoism0、Noism1に華を添えてくれました。
 芸術的素養のない私には、作品に込められた意味を推し量ることなどできませんが、心を無にして、作品を楽しむことができ、大きな感動とともに劇場を後にしました。
 
 
(客席:2階15-24、¥5500)