東京交響楽団 川崎定期演奏会第95回 Live from MUZA!
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2024年4月21日(日) 14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:サカリ・オラモ
ソプラノ:アヌ・コムシ
 
ラウタヴァーラ:カントゥス・アルクティクス
       (鳥とオーケストラのための協奏曲)op.61
     T.湿原 U.メランコリー V.渡る白鳥
サーリアホ:サーリコスキ歌曲集(管弦楽版)<日本初演>
     T.自然の顔 U.それぞれのこれ V.すべてこれは 
     W.私の中の鳥と蛇が X.霧を抜けて

(休憩20分)

シベリウス:交響詩「ルオンノタル 」op.70
ドヴォルザーク:交響曲 第8番 ト長調 op.88

 恒例の東京交響楽団の演奏会の生配信です。今回は、川崎定期演奏会第95回で、昨日サントリーホールで開催された第719回定期演奏会と同じプログラムです。
 今回は、フィンランド出身の指揮者、サカリ・オラモを迎えて、チラシのキャッチコピーは「北欧プログラムとボヘミアの《田園》」となっています。
 ドヴォルザーク以外は聴いたことがない曲ばかりであり、この機会を逃しますと、私の残された人生の中では、今後聴く機会がないことは確かであり、視聴させていただくことにしました。

 ニコ響のサイトに接続しますと、ミューザ川崎のステージが映し出されていました。ステージ上のティンパニ2組を始めとする多彩な打楽器群と2台のハープとチェレスタが目立ち、気分を盛り上げてくれました。
 拍手の中団員が入場。最後に小林さんが登場してチューニングとなりました。オケの配置は通常の配置で14型でしょうか。

 1曲目は、ラウタヴァーラの「カントゥス・アルクティクス」という曲で、作曲者自身が湿原でテープに録音してきたという多彩な鳥の鳴き声を主役とした、オーケストラとの協奏曲です。
 オラモさんが登場して演奏開始です。第1楽章の表題は湿原となっています。ちょっと不気味なフルートの二重奏で演奏が始まりました。鳥の鳴き声が流されてホールは、湿原というよりも深遠な森の中のよう。管楽器は鳥の鳴き声を模しているかのように響き渡ります。しばらくして美しい弦楽が加わり、様々な鳥の鳴き声とともにゆったりと音楽が流れ、なんとも言えない癒やしと快さを感じました。
 第2楽章はメランコリーと題されていますが、鳥の鳴き声が呼応し合って歌を歌うかのように流れ、しばらくして、そこに悲しげな弦楽アンサンブルが加わました。
 第3楽章は、新潟に住む者には聴きなじみのある白鳥の群れの鳴き声で始まり、次第に高まったところに、オケが加わりました。空を飛翔する白鳥の旅立ち、そして春の訪れとその喜びを感じました。
 鳥の鳴き声とオーケストラとの協奏曲でしたが、北欧の空気感に溢れた深淵で美しい音楽と演奏が心にしみました。こういう曲を聴けるのが定期演奏会の楽しみですね。

 オケの編成が小さくなって、2曲目はサーリアホの「サーリコスキ歌曲集」です。今回が日本初演だそうです。花柄のドレスで恰幅の良いコムシさんとオラモさんが登場して演奏開始です。
 5曲からなりますが、複雑なメロディを超絶的な歌声で歌い、魅了されました。歌曲というより、歌声も楽器の1つのようです。
 不気味さを感じさせる暗く幽玄な音楽は、複雑極まりなく、浅学な私の理解力を遙かに超えるものでしたが、東響が創り出す音響とコムシさんの見事な歌声が心を突き刺すようでした。まさにクリスタルのような歌声です。
 精神集中の心地良い疲労感の中に、しばしの静寂の中に演奏が終わり、大きな拍手が贈られました。この曲はコムシさんあってのものと言えましょう。花柄のドレスも自然を感じさせ、意味のあるものだったと感じ入りました。

 休憩時間には、作曲者自身が収録した鳥の鳴き声を、曲の流れの中で操作して流す役割を担った指揮者の大井駿さんのお話もあって良かったです。

 休憩後の後半は、シベリウスの「ルオンノタル 」です。初めて聴く曲ですが、ソプラノとオーケストラのための交響詩だそうです。ブルーのドレスに衣装替えしたコムシさんとオラモさんが登場して演奏が始まりました。
 2組のティンパニととに演奏される深遠なオケの響き。曲の意味するところは理解できませんでしたが、前半同様にコムシさんのクリスタルのような高音は美しく、否応なく圧倒されました。
 コムシさんあっての選曲だったことが感じ取られ、コムシさんの圧倒的なパフォーマスを讃えて大きな拍手が贈られました。

 ステージが整えられて、最後はドヴォルザークの交響曲第8番です。ようやく緊張せずに楽しめる曲になりました。オラモさんが登場して演奏開始です。
 第1楽章は、メランコリックなメロディに始まり、竹山さんの美しいフルートに導かれて、祝祭気分の如く明るく盛り上がり、再び哀愁を漂わせ、そして機関車のように疾走し、緩急を繰り返してスピードアップして楽章を閉じました。
 第2楽章は、美しいフルートとクラリネットの掛け合いから、のどかな田園風景が眼前に広がりました。コンマスのソロも美しく、穏やかさと、平穏をかき消す暗雲。のどかさと不穏を繰り返し、東響の見事な演奏にうっとりしました。
 第3楽章は、哀愁が漂う美しい楽章です。ボヘミアの郷愁を感じさせながら、明るく流麗にワルツを奏で、明るく踊りました。
 トランペットが高らかにファンファーレを奏でて第4楽章へ。美しい弦楽アンサンブルにうっとりとしました。パワーを蓄え、美しいフルートに導かれてギヤチェンジしてパワーアップ。作曲者が大好きな機関車の如く、力強くスピードアップして行きました。
 ゆったりと小休止して、水と石炭をたっぷり補給。のどかな田園風景を後にして、汽笛をあげながら猛スピードで機関車は走り出し、爆走する中にフィナ-レとなりました。
 オラモさんと東響とが一体となり、見事な音楽を創り上げました。東響の持てる底力を、見事に引き出してくれました。文句なく見事な演奏でした。

 聴く機会がない珍しい曲目と人気の名曲の組み合わせ。コムシさんの超絶的な歌声と、東響との初共演を大成功させたオラモさん。素晴らしい演奏であり、是非とも生で聴いてみたかったです。会場で聴いたら、何倍もの感動を味わえたものと思います。
 
 胸の高鳴りを感じながらニコ響のサイトを後にしましたが、見逃し配信で聴きなおして、感動を新たにしました。こんな配信を無料で視聴できるなんて、何とも幸せなことですね。東響の英断に感謝したいと思います。
 

(客席:PC前、無料)