金子由香利/山宮るり子 フルート&ハープ 名曲の調べ
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2022年7月9日(土) 14:00 新潟市民芸術文化会館 スタジオA
フルート:金子由香利
ハープ:山宮るり子
 
ビゼー:「アルルの女」組曲より メヌエット
フォーレ:シシリエンヌ Op.78
フォーレ:子守歌 Op.16
フォーレ:幻想曲 Op.79
ビゼー:歌劇「カルメン」より 間奏曲
ボルヌ:カルメンの主題による華麗なる幻想曲

(休憩15分)

ドビュッシー:シランクス (Fl.ソロ)
ドビュッシー:小組曲より 小舟にて
ドビュッシー:美しき夕暮れ
ドビュッシー:ベルガマスク組曲より 月の光 (Hp.ソロ)
ロータ:「ロミオとジュリエット」より 愛のテーマ
ピアソラ:タンゴの歴史より
       ボルデル(1900)
       ナイトクラブ(1960)

(アンコール)
イベール:間奏曲
フォーレ:コンクール用小品

 今日は、フルートの金子由香利さんとハープの山宮るり子さんの二人によるデュオリサイタルです。金子さんは新潟県出身で、国立音楽大学卒業後はパリで学ばれて、優秀な成績で卒業され、コンクールでの入賞も多数おありです。
 一方、山宮さんは、新潟市出身で、ドイツのハンブルクで学ばれ、ミュンヘン国際音楽コンクール第2位、リリー・ラスキーヌ国際ハープコンクール優勝など、華々しい経歴をお持ちです。ハープ界の重鎮・メストレに師事したことでも知られ、CDも2枚リリースされておられます。
 二人とも活発な演奏活動をされておられ、私もいろんな機会で何度も聴かせていただいています。過去の演奏会のことを書き始めますと長くなってしまいますので、今回は割愛させていただきます。
 この二人は、今日の11時から親子向けのプレコンサートを開催されており、それに引き続いての演奏会となります。

 昨日は日本中を震撼させた凶悪な事件が起こってしまい、心も暗くなりましたが、それとは裏腹に、天候は気持ちよく晴れ渡りました。その分暑さが厳しい土曜日となりました。
 車の定期点検を済ませ、早めに白山公園駐車場に車をとめ、上古町で絶品の冷やし中華をいただき、幸せな気分でりゅーとぴあ入りしました。

 東ロビーでひと休みして、開場とともに入場し、最前列正面に席を取りました。冷房が効いたスタジオAは心地よく、ハープのチューニングの音を聴きながらこの原稿を書き、開演を待ちました。
 その後ハープが運び込まれ、開演時間が近付くに連れて客席は次第に埋まり、満席の大盛況となりました。お二人の人気のほどがうかがえます。

 開演時間となり、白と水色の模様のドレスの金子さんと若草色の模様のドレスの山宮さんが登場し、ビゼーの「アルルの女」の「メヌエット」で開演しました。フルートとハープの定番曲ですが、美しい演奏に一気に引き込まれました。
 続けてフォーレの「シシリエンヌ」が演奏されました。柔らかなハープとともに、フルートのしっとりと染み入るような響きが、疲れた心を癒してくれました。

 ここで金子さんのMCがあり、フォーレの「子守歌」と「幻想曲」が続けて演奏されました。優しさに満ちた「子守歌」に続く「幻想曲」の後半の激しい場面では、山宮さんのハープの超絶的な演奏に圧倒されました。ペダルの激しい足裁きの素晴らしさを眼前に見ることができたのは、最前列ならではの特権でした。

 ここで山宮さんのハープについての解説がありましたが、47本の弦があり、ドが赤、ファが黒い弦であること。ペダルは7つあり、それぞれドからシに対応し、それぞれのペダルが3段階で音程を調節していることなど説明してくれました。
 山宮さんは4歳でハープを始めたことや、ハープを始めるときは、アイリッシュハープが良いことなど、金子さんに振られて、山宮さんが楽しく話してくれました。

 前半最後は、ビゼーの「カルメン」の「間奏曲」を穏やかに演奏してうっとりとさせ、続けてボルヌの「カルメンの主題による華麗なる幻想曲」を情熱的に激しく演奏し、2人の超絶技巧に息を呑みました。

 休憩後の後半は、照明が落とされた薄暗さの中、ステージの衝立の裏で、金子さんの独奏でドビューッシーの「シランクス」が演奏され、幽玄な世界へと誘われました。

 場内が明るくなって二人が登場して、ドビュッシーの「小舟にて」と「美しき夕暮れ」を静かに演奏し、心穏やかに優雅な気分に浸らせてくれました。
 場内が暗転して金子さんが去り、山宮さんの独奏で「月の光」がしっとりと演奏され、月明かりの湖が眼前に広がるような錯覚に陥りました。この曲はピアノよりも、ハープの独奏がぴったりですね。山宮さんの演奏なればこそなんでしょうけれど。

 続いてはニーノ・ロータの名曲の映画「ロメオとジュリエット」の「愛のテーマ」が甘く切なく演奏され、悲しい愛の物語を思い浮かべながら、うっとりと聴き入りました。

 そして、最後はピアソラの「タンゴの歴史」から第1曲の「ボルテル(1900)」と第3曲の「ナイトクラブ(1960)」の2曲が演奏されました。
 売春宿の音楽の「ボルテル」は明るさと軽快さがあり、続く「ナイトクラブ」は情熱的に演奏し、山宮さんはハープの胴を叩いたりしてリズムを取り、夜更けのタンゴの世界を楽しみました。本来はフルートとギターのための曲だと思いますが、ハープで演奏した山宮さんの凄さを感じました。

 拍手に応えて、アンコールにイベールの「間奏曲」とフォーレの「コンクール用小品」が演奏され、青い炎がメラメラとするようなピアソラの緊張感から開放されて、穏やかな気分でコンサートは終演となりました。

 実力者二人の演奏ですから、始めから素晴らしいことは分かっており、それで聴きに来たわけなのですが、期待通りの演奏に大きな満足感をいただきました。
 技巧を駆使し、多彩な音色と表現力で楽しませてくれた安定感のある金子さんのフルートはさすがであり、ハープ用でない曲を、巧みな足さばきと超絶技巧で演奏した山宮さんには驚きを感じました。ハープはペダル操作が必要だとは知っていましたが、これほど激しく操作するとは知らず、その演奏を眼前で見させていただけて良かったです。

 休日の午後に相応しい選曲であり、心温まる気持ちよい演奏会でした。金子さんのMCも良かったです。スタジオAという響きの良い、程よい広さの空間は、サロンコンサートの雰囲気を醸し出してくれました。大理石張りの広間で、ふかふかの椅子に座り、アフタヌーンティーを飲みながら演奏を聴いているような錯覚に、一瞬陥ってしまいました。

 束の間の優雅な時間が終わり、冷房が効いた館内から外へ出ますと、太陽はギラギラで暑さは厳しく、現実の世界へと引き戻されました。

 でも、良い時間を過ごせてよかったです。新潟にこのような演奏家がいるというのも素晴らしいことですね。

 

(客席:正面最前列、¥3000)