アート・ミックス・ジャパン 2022 太鼓芸能集団 鼓童
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2022年5月7日(土) 15:30 新潟市民芸術文化会館 劇場
太鼓芸能集団 鼓童
 

曲目:いろいろ
 新潟クラシックストリートと同様に、コロナ禍で中止されていたアート・ミックス・ジャパン(AMJ)が今年は開催されることになりました。
 コロナ禍前のAMJは、かつてのLFJ新潟のように、45分の短い公演がいくつも開催されるのが特徴でしたが、今年は感染予防対策として公演数を減らし、1回の公演時間を90分に拡大して充実させるという措置が取られました。

 5月7日(土)、8日(日)の2日間で、有料公演4公演と無料公演の「にいがた総おどり祭」(要整理券)が開催されることになりました。
 有料公演としましては、7日に、狂言と日本舞踊(茂山千五郎家/市山七十郎・市山流)、和太鼓(太鼓芸能集団 鼓童)が開催され、8日には、筑前琵琶(人間国宝 奥村旭翠)、声明(真言宗豊山派総本山 長谷寺)が開催されます。
 せっかくですので、全公演に行きたいところではありますが、チケットはかなり高額ですので、7日の鼓童の公演だけ参加させていただくことにしました。

 某所で昼食を摂り、りゅーとぴあ入りしますと、すでに開場待ちの列ができていました。ロビーは和の雰囲気の飾り付けがされ、着物姿のスタッフが対応に当たっていました。
 私も列に並んで入場し、席について開演を待ちました。開演時間が近付くにつれ席は埋まり、1階席はほぼ満席でしたが、私のいる2階席は後方に空きがあり、私の隣も空席で、気兼ねなく、ゆったりと演奏に集中することができました。
 入場時は、連絡先記入の用紙とチラシ類が配布されましたが、公演に関してのプログラム等はなく、どんな曲目を演奏するのか全く不明でした。

 場内が暗転し、緞帳が上がって開演です。いきなりの激しい太鼓のリズムに圧倒されました。1曲目が終わり、鼓童の公演にしては珍しくMCがあり、出演者の自己紹介がありました。以後MCを挟みながら演奏が進められました。
 今日の公演には、鼓童の団員37人の中から、若手の精鋭8人が参加しており、このうち女性は1人です。今日は本拠地での佐渡宿根木公演の最終日・千穐楽でもあり、佐渡でも2公演行われています。昨日は東京のサントリーホールでも演奏しており、鼓童のメンバーはフル回転しているようですね。

 MCの中で、ところどころ曲目の紹介もありましたが、曲名は忘れてしまいました。楽器の紹介コーナーもあって、宮太鼓のほか、桶胴太鼓では紐を絞っての音の変化や、締太鼓では実際に「締める」実演を交えながらの紹介は勉強になりました。
 楽器やフォーメーションの変更をしながら、多彩な曲目で楽しませてくれました。私が勝手に抱いていた鼓童のイメージとは違った「p.p.c.」というユーモアあふれる曲・演出もあって、思わずニヤリとしてしまったりもありましたが、その後は一転して激しいリズムで圧倒し、緩急のメリハリをつけた演出は素晴らしかったです。
 後半には、海外遠征で出会ったという珍しい楽器の紹介があり、その楽器を使用して静かに演奏された「木漏れ日」という曲は、心にしみじみと響いてきました。奏者は本拠地の佐渡の森をイメージして演奏したとのことでしたが、聴く者それぞれが、それぞれの森を感じたものと思います。
 その後もパワー溢れる演奏が続きましたが、しんみりとした篠笛の響きが癒しを与えたりもありました。一糸乱れぬ演奏に息を呑み、超絶的な演奏技術に圧倒され、後方で全身を使って撥を振り下ろす巨大な平太鼓の重低音や、上半身裸の奏者が演奏する大太鼓の迫力にひれ伏しました。最後は全員で「結」を演奏して、休憩なしで90分の感動のステージは終演となりました。

 人間は心臓の鼓動によって生きています。24時間・365日、休むことなく続く60〜100/分のリズムで生きています。太鼓のリズムは、まさに心臓の鼓動です。ゆっくりとしたリズムは心穏やかにし、速い連打は興奮させ、胸を高鳴らせます。原始の時代から、人間は物を叩き、音楽の原点は打楽器であり、太鼓であろうと思います。
 魂を揺さぶる太鼓の迫力を前にして、ただ圧倒されるだけであり、ストレスに苛まれ、乱れた精神も、強制的にリセットされてしまいます。束の間ではありますが雑念は排除され、ハイな気分になり、悩みも忘れてしまいます。
 こんな魔力が太鼓に潜みますが、それを多彩な楽器、多彩な奏法による多彩な曲目により、ただ打ち鳴らすだけでなく、芸術にまで高めたのが鼓童の素晴らしさであり、日本のみならず、世界が熱狂する理由だと思います。

 今回は小編成の8人の若手での公演でしたが、鍛え抜かれた鼓童の演奏に圧倒され、新潟にこのような太鼓芸能集団が存在する喜びを実感しました。

 7月には、いよいよNoismとの共演が実現します。チケットは通常の席は完売となり、追加席が若干あるのみです。楽しみに待ちたいと思います。

 AMJは8日も続きます。有料公演が2公演あり、人間国宝が演奏する「筑前琵琶」や千年の時を超える僧侶のゴスペル「声明」も聴きたかったのですが、所用と懐具合から断念しました。最後には無料公演の「にいがた総おどり祭」がありますから盛り上がることでしょう。
 コロナ禍の悪条件の中でイベントを実現し、全国に発信して、沈滞化しつつある新潟を盛り上げてくれているAMJの関係者の皆さんに敬意を表したいと思います。
 

(客席:2階15-24、A席:¥6000)