平林弓奈 ピアノリサイタル
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2021年7月3日(土)14:30 新潟市民芸術文化会館 スタジオA
ピアノ:平林弓奈
 

ショパン:夜想曲 第2番、第13番
ドビュッシー:映像 第1集より 「水の反映」
ショパン:幻想即興曲 Op.66
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」

(休息15分)

オアナ:24のプレリュード より 16〜20番
メシアン:幼子イエスにそそぐ20のまなざし より
      第15番「幼子イエスの口づけ」
      第10番「喜びの精霊のまなざし」

(アンコール)
ドビュッシー:月の光

 今日は長岡を中心に活躍されている平林弓奈さんのリサイタルです。平林さんは、長野県松本市のご出身ですが、武蔵野音楽大学付属高校を卒業後、コンセルヴァトワール・ムニシポー、サンモール・コンセルヴァトワール、パリ・エコール・ノルマル音楽院等で12年間に渡り研鑽を積まれ、数々のコンクールで優勝・上位入賞を果たされているすごい経歴の持ち主です。

 2007年12月に帰国し、東京や故郷の松本市を中心に演奏活動をされていましたが、長岡市の洋菓子店に嫁いで来られ、新潟県人になられました。ちなみに、ご主人とはフランスで出逢われたそうです。
 子育ても大変だったと思いますが、演奏者、指導者として音楽活動を始められました。現在は長岡市を中心に、活発な演奏活動をされているママさんピアニストです。
 2017年には長岡リリックホールや東京の王子ホールでリサイタルを開催されていますし、同年の長岡市での東京フィルの演奏会では、三ツ橋敬子氏の指揮で、ベートーヴェンの合唱幻想曲を共演されています。
 さらに、2019年12月の見附でのアルカディア音楽祭では、船橋洋介氏の指揮で、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番を共演しておられます。

 さて、平林さんにつきましては、随分前から、長岡市に在住していた知人から、長岡に素晴らしいピアニストがいるとの情報を得て、演奏会の案内をいただいたこともあったのですが、聴きに行けず、是非とも聴きたいと思っていました。
 そして、初めて演奏を聴いたのは2017年2月のSanDoコンサートで、フランスの香りが漂うような美しいピアノの響きとパワー溢れる演奏に魅了されました。
 2018年3月の聖籠町でのジョイントコンサートでは、金子由香利さんと共演し、ソロでなく伴奏ピアニストとしての実力も見せてくれました。
 そして、最後に聴いたのは2020年9月のSanDoコンサートでしたが、ノーブルさとパワー溢れる演奏に圧倒され、平林さんのすごさを再認識しました。

 そんな平林さんですが、新潟市では、昨年7月のりゅーとぴあでのステイ・アット・ニイガタ・コンサートに出演されていますが、個人での演奏会は今回が初めてであり、今日は記念すべき新潟市での初リサイタルです。

 今日は、東海・関東では記録的豪雨となり、大きな被害も出ていますが、新潟市は梅雨の中休みが続いており、青空が広がる好天となりました。
 いつものように、上古町で極上の冷やし中華(今回も半チャーハン付)をいただき、幸せ気分でりゅーとぴあへと向かいました。
 ロビーで涼んでいますと、ちょうど開場時間となり、早々に入場し、正面1列目に席を取りました。余裕を持った席配置でしたが、なかなかの盛況となりました。客席には新潟市の演奏家のお姿もあり、長岡からの遠征組もおられるようでした。

 開演時間となり、スリムでパープルのドレス姿が麗しい平林さんが登場し、ショパンの夜想曲で開演しました。第2番をゆっくりとしっとりと演奏し、第13番を青白い炎が燃えるような演奏で魅了しました。

 ここで平林さんの挨拶があり、演奏が進められました。ドビュッシーの「水の反映」をミステリアスな響きで演奏し、ショパンの幻想即興曲をパワー全開で演奏して圧倒されました。
 前半最後はベートーヴェンの「月光」です。しっとりと夢幻の世界へと誘う第1楽章に始まり、第2楽章、第3楽章とスピードアップ、パワーアップして聴衆を魅了しました。

 休憩後は、オアナというフランスの作曲家の曲です。初めて聞く名前で、プログラムには曲目解説がなく、全く予備知識なしで演奏に臨みました。
 いかにも現代音楽という感じでしたが、馴染みにくいものではなく、定規を使ったり、撥でピアノの弦を直接叩いたりと、平林さんの抜群のテクニックとパワーで、音響的にも楽しめました。

 そして最後は、メシアンの大曲「幼子イエスにそそぐ20のまなざし」からの2曲です。第15番は、やさしく、しっとりと癒しを感じさせ、第10番は、圧倒的パワーとスピードに打ちのめされ、参ったというほかはありませんでした。

 後半は初めて聴く曲でしたが、フランスで長く研鑽を積んだ平林さんの真骨頂でしょう。必ずしも有名曲とはいえない曲をメインに据えてきたプログラムは、新潟市での初リサイタルへの意気込みと思い入れの強さを感じさせました。

 パワー溢れるピアノ。スタジオAに置かれているヤマハのCFIIIから、これほどの音を出せるピアニストは、そうはいないんじゃないでしょうか。大音量でも濁りは全くなく、色彩感が豊かでクリアに響きます。私は最前列でしたので、圧倒的な音量にノックアウトされました。

 メシアンの激しい演奏で、呼吸も苦しそうなご様子でしたが、呼吸も整わない中に、アンコールに「月の光」が演奏されました。
 これは先ほどの熱い演奏から一転して、静寂と透明感をスタジオAにもたらし、熱気をはらってクールダウン。聴く者の心に癒しを与える極上のデザートをプレゼントしてくれました。

 今日のリサイタルは、平林さんの魅力が全開した期待通りの演奏でした。クリスタルのような弱音の美しさもありますが、スリムで華奢な身体からは想像できないパワーに溢れる演奏は驚きです。前半も後半も素晴らしかったですが、特に後半のプログラムには圧倒されました。

 新潟にこのようなピアニストがおられるというのは素晴らしく、喜ぶべきことであり、長岡に埋もれさせてはいけません。どんどんと活躍の場を広げて欲しいと思います。きっと期待に応えてくれることでしょう。

 

(客席:1列目中央、\2500)