仲道郁代 ピアノリサイタル
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2019年10月22日(火) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
ピアノ:仲道郁代
 


シューマン/リスト:献呈 S.566

シューマン:アレグロ ロ短調 Op.8

シューマン:ピアノソナタ第1番 嬰へ短調 Op.11

(休憩15分)

ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番 ハ短調 Op.13 「悲愴」

ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調 Op.66 (遺作)

ショパン:12の練習曲 Op.10-12 ハ短調 「革命」
ショパン:12の練習曲 Op.10-3 ホ長調 「別れの曲」

ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調
“レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ”

ショパン:ポロネーズ第6番 「英雄」 変イ長調 Op.53

(アンコール)
シューマン:トロイメライ
エルガー:愛の挨拶
 

 新潟で、長岡で、度々聴かせていただいている仲道さんのリサイタルです。もしかしたら、私が一番多く聴いているピアニストかもしれません。過去記事を検索すればよいのですが、かなりの多さで紹介し切れません。
 昨年は、10月に長岡で、11月には新潟でと2ヶ月連続で聴いていました。今年も9月に長岡でのリサイタルがあったのですが、平日で都合がつかず聴けませんでした。ということで、1年ぶりの仲道さんです。

 演奏もさることながら、つぶやきながらの演奏、そして演奏が終わると背中をのけぞらせるようにする仕草。その美貌により、煩悩だらけのオヤジは虜になって久しくなります。さすがに年輪を重ねられたわけですが、それはお互い様ということで・・。
 なお、今回のチラシはちょっと異色に思いませんか。いつもはホワッとするような、胸がキュンとするような、可愛らしい写真なのですが、今回は冷たさも感じるきりっとしたもの。気高く、気品に溢れており、これも良いですね。まあ、どうでもいいのですけど。

 ということで、昨年11月に続いての新潟市でのコンサートです。前半がシューマン、後半がベートーヴェンとショパンというプログラムです。昨年の演目とかなり重なっていて、新味はありません。でも、ファンとしましては、仲道さんということだけで、後先考えずにチケットを買ってしまいました。

 仲道さんは、実力、人気とも日本を代表するピアニストの一人であり、活発な演奏活動をされています。昨日は大阪でコンサートをされており、今日は新潟と、本当にお忙しいですね。

 実は、今日は長岡で、大瀧拓哉さんのリサイタルがありました。興味ある意欲的なプログラムであり、仲道さんを蹴って長岡遠征しようと真剣に考えていたのですが、日曜日の失敗がトラウマとなり、また天気も悪かったということもあって断念したという裏事情もあります。

 さて、今日は「即位礼正殿の儀」。特別な祝日であり、国民全員でお祝いすべき日です。歴史に残る即位の儀式の最中にコンサートをしていて良いのかという気もしないではないですが、ここは楽しませていただきましょう。

 駐車場で「即位礼正殿の儀」の中継を観て、安倍総理とともに心の中で万歳をし、国民の端くれとして即位をお祝いした後、小雨の中、りゅーとぴあへと向かいました。隣の県民会館ては宝塚歌劇団の公演があり、かなりの賑わいでしたが、りゅーとぴあも負けずに賑わっていました。

 りゅーとぴあに着きますと、既に開場が始まっており、頃合いをみて私も入場しました。今回は3階席は発売されず、1階と2階のみ使用されました。
 日頃は1階席はほとんど買わないのですが、昨年同様に、今回も1階席前方に席を取りました。音響は二の次に、ビジュアル重視の選択です。たまにはね。

 開演時間となり、赤いドレスが麗しい仲道さんが登場。やっぱり美しいですね。実年齢を超越した美しさとエレガントさが溢れていて、一瞬にして魅了されました。
 挨拶のあと、曲目解説を挟みながら、演奏が進められました。話す声もチャーミングで美しく、熟年ジジイは虜になってしまいました。

 前半はシューマンです。1曲目は、スポンサーの第一建設工業に敬意を表して、コマーシャルに使われている「献呈」です。優しく柔らかな、愛に溢れた音楽に心は和みました。

 2曲目は「アレグロ ロ短調」。未完となったソナタの第1楽章ですが、1曲目とは一転してのダイナミックな演奏に圧倒されました。

 3曲目は「ピアノソナタ第1番」。4つの楽章の対比も鮮やであり、穏やかで美しい第2楽章、いろんな舞曲が入れ替わり立ち代り現れて踊る第3楽章を挟んで、第1楽章、第4楽章のパワー溢れる演奏に圧倒されました。聴き応えある曲と演奏で前半を締めくくりました。

 前半を聴いていて、いつものピアノの音と違うなあと感じていました。特に高音の響きに違和感を感じていたのですが、休憩時間にピアノを良く見ますと、側面にいつものスタインウェイのロゴはなく、ヤマハのピアノでした。
 ちょっと音が変に感じましたが、休憩時間中に入念な調律がされていました。私の耳も満更でもないなあと自己満足。

 後半は黒地に大きなバラの花が配されたドレスに衣裳替えして登場しました。最初はベートーベンの「悲愴」です。これは仲道流にアレンジしたような演奏であり、各楽章を鮮やかに弾き分け、この曲の素晴らしさを改めて知らしめてくれました。

 ここで仲道さんから、ピアノがヤマハであることの説明がありましたが、どうしてヤマハにしたかの説明はありませんでした。でも、先回までスタインウェイだったのに、どうして止めたんでしょうね。

 続いてはショパンです。「幻想即興曲」を滑らかに流れるように演奏した後、「革命」と「別れの曲」を続けて演奏しました。激しく燃え上がる「革命」としっとりと心に染みる「別れの曲」の対比が鮮やかでした。

 次は解説もそこそこに「ノクターン第20番」。むせび泣くように、せつせつとした演奏が胸に染み渡り、感動を誘いました。

 プログラム最後は「英雄ポロネーズ」です。ラストを飾るにふさわしい、爆発するような演奏でした。多少の乱れもなんのその。感情が弾けるようなパワーに圧倒され、否応なしに興奮させられました。小柄な体からこれほどのパワーが弾けるなんて、凄いですね。

 ブラボーの声も混じる大きな拍手に応えて、アンコールに「トロイメライ」をしっとり演奏して夢見心地に誘い、コンサートの興奮を鎮めました。
 そして最後は仲道さんのコンサートの最後に欠かせない「愛の挨拶」。毎回この曲で〆てくれます。仲道さんの人柄が出るような優しさを感じて、感動のコンサートが終わりました。

 何だかんだ言っても、仲道さんは素敵ですね。暦年齢を超越したチャーミングな容姿、そこはかとなく漂う上品さ、演奏後ののけぞりポーズも決まっています。拍手を受けるときには演歌歌手みたいに何やらつぶやいています。ひとつひとつの所作が絵になり、ファンの心をくすぐります。

 小柄で華奢に見える体からは想像できないダイナミックな演奏には驚かせられます。ときには乱暴にすら感じさせますが、音はあくまでも美しく、心に迫ってきます。豊かな音楽性で聴く者の心を揺り動かします。

 さすが連日のコンサートをこなすプロのピアニスト。分かりやすい解説も魅力であり、全てが計算されており、全体がひとつのパフォーマンスとして完成されています。

 素晴らしい演奏に魅了され、大きな満足感を胸に家路に着きました。やっぱり仲道さんファンはやめられませんね。

  

(客席:1階5-18 、¥3500)