洋楽の夕べ Joint Recital
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2015年10月24日(土) 14:30  新潟市民芸術文化会館 能楽堂
 
 
(オープニング挨拶)五十嵐尚子、風間左智、前田美華

大越玲子(パーカッション)&倉澤桃子(パーカッション)
  ジブコヴィッチ:Trio Per Uno

五十嵐尚子(ソプラノ)&佐藤世子(チェンバロ)
  山田耕筰:「童謡百曲集」より  烏の番雀の番、青蛙、電話、この道

Duo Anima:加藤礼子(ヴァイオリン)&前田美華(チェロ)
  ベートーヴェン:ヴァイオリンとチェロのための3つの二重奏曲WoO27 第2番 ヘ長調
  モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ト長調 K.423

(休憩15分)

大越玲子(パーカッション)&倉澤桃子(パーカッション)
  カンジェローシ:プラトンの洞窟

五十嵐尚子(ソプラノ)&佐藤世子(チェンバロ)
  スカルラッティ:陽はすでにガンジスから
  ヘンデル:私を死なせて
  ヴィヴァルディ:私はジャスミンの花

アモーレ・マルー:風間左智(ソプラノ)、丸山友裕(リコーダー)、丸山洋子(チェンバロ)
           水島あや(バロックフルート)、熊田美也子(ヴァイオリン)
           井口歩(ヴァイオリン)、森本麻未(ヴィオラ)、瀬高伸一郎(チェロ)

  ヴィヴァルディ:弦楽のためのラ・フォリア
  ヘンデル:歌劇「ジュリアス・シーザー」より クレオパトラのアリア
          この胸に息のある限り
  ウッチェリーニ:ラ・ベルガマスタ
  ブロスキー:歌劇「アルタセルセ」より 揺れる船のように  

 毎年恒例の「洋楽の夕べ」です。これまで何度か聴かせていただいていますが、この「洋楽」という響きが古めかしく、昼間の公演なのに「夕べ」というのは違和感があると昨年も書いていますが、この公演を主催する新潟洋楽協会の長い歴史を物語るものであり、賞賛すべきかもしれません。ともあれ今年も「洋楽の夕べ」が開催されました。
 この公演は新潟の音楽家のジョイントコンサートであり、多彩な出演者を一度に楽しめるのが魅力です。今回は初めて能楽堂で開催されました。当然ながら能楽堂にはピアノはなく、ピアノのない公演は今回が初めてとのことです。

 今日は朝は晴れていましたが、午後は雨の予報であり、次第に雲行きが怪しくなりました。少し早目に行き、古町をぶらついてみましたら、「がたふぇす」が開催中であり、コスプレした若者たちで賑わっていました。アニメ文化で町興しができると良いですね。

 一方、能楽堂は中高年の御婦人方で賑わっていました。皆さんおしゃべりに夢中。圧倒的に女性が多く、オヤジどもは肩身が狭く感じました。

 開場とともに入場し、中正面最前列に席を取りました。開演時間となり、五十嵐尚子さん、風間左智さん、前田美華さんが登場。プログラムにないのでどうしたのかと思いましたら、前田さんの伴奏でソプラノの二人が、開演の挨拶と携帯の電源を切るお願いを歌で伝えるという趣向。洒落ていますね。思わず聴衆はにっこりしました。

 以後ピアニストの斉藤美和子先生の司会進行で演奏が進められました。斉藤さんは眼鏡がお似合いで、素敵ですね。

 最初は大越さん、倉澤さんです。もう何度も聴かせていただいていますので、今さら書くまでもないですが、素晴らしいパーカッショニストだと思います。本来3人で演奏する曲を2人で演奏するという離れ業で、和太鼓の乱れ打ちみたいに妙技を披露してくれました。

 続いては五十嵐尚子さんです。五十嵐さんは北区を中心に大活躍であり、大御所としてのオーラが感じられます。ピアノの代りに、佐藤世子さんのチェンバロ伴奏で、山田耕筰の歌曲が歌われましたが、このチェンバロが良い味を出しており、ピアノで聴くより合っているように感じました。ただし、童謡ということで、あっという間に終わってしまったのが残念でした。

 次は、Duo Anima のお二人です。大ファンである加藤礼子さんと前田美華さんによるユニットです。ちなみに「Anima」とは「魂」という意味だそうです。なお、同じ名前のユニットは国内外でいくつかあるようです。
 加藤さんは先日のリサイタルを聴けず心残りでしたので、今日はちゃんと聴こうと楽しみにしていました。前田さんは、昨年も出演されていましたが、ご結婚されて姓が変わられたんですね。
 演奏は熱気溢れるものでした。残響のない能楽堂であり、直接音がダイレクトに迫ります。日頃聴く曲ではないですが、二人がぶつかったり、寄り添ったりと、胸に迫る演奏を聴かせてくれました。聴き応えある2曲をたっぷりと演奏し、ひとつのコンサートを聴いたような充実感溢れる内容でした。今後のユニットとしての活動も注目していきたいと思います。

 休憩後は再び大越さん、倉澤さんが登場しました。舞台上には楽器はなく、薄い板が敷かれ、その上に楽譜が張られていました。二人は胡坐をかいて座り、2本の撥で床を叩くというパフォーマンスです。楽器というものはなく、撥とジェスチャーのみで表現される前衛的な曲です。
 「プラトンの洞窟」という曲名が示すように、哲学的意味が込められた曲です。叩くまねをするだけで無音の時間もありますが、静寂の中に、ちゃんと音楽が聴こえてくるのは不思議な体験でした。今日の公演の中でも異彩を放つ演奏であり、これを聴けただけでも来た甲斐があったように思えました。

 続いて、再び五十嵐さん、佐藤さんが登場して3曲歌われました。声量豊かに朗々と歌い上げ、チェンバロならではの味わいもあって良かったです。童謡よりもこういう歌曲が良いですね。さすがと思わせる歌声に感激でした。

 最後はアモーレ・マルーの皆さんです。「マルー」という名前が示しますように、リコーダーの丸山先生を中心とするバロック音楽集団で、今年の5月にも聴かせていただいております。
 古楽奏法の優雅な調べに、能楽堂がバロック時代の宮廷に変わったかのようでした。瀬高さんの安定したチェロのリズムの上で踊る弦楽とチェンバロ。豪華な衣裳をまとった風間さんの歌声は優しく、この時代の曲には欠かせない歌い手であることを再認識しました。
 丸山先生の出番が少なかったのはちょっと残念でしたが、水島さんのバロックフルートとの掛け合いが圧巻でした。9月のストラディヴァリアにも負けない充実した内容だったと思います。

 最後に全員が登場してお開きとなりました。テーマがあるわけではなく、各出演者がそれぞれの演奏するという、ガラコンサートといいますか、ごった煮的内容ですが、それぞれが実力者ですので、内容豊富なお腹いっぱいのコンサートでした。ステージ準備の間の斉藤さんのトークも良かったです。能楽堂というステージと客席が近い親密な空間というのも良かったと思います。
 
 外に出ましたら天気予報どおりに雨が降り出しました。夜は宴会の予定があり、土砂降りの中急いで帰路に着きました。
 

(客席:中正面3-12、\1500)