茂木大輔のオーケストラ・コンサート No.11
モーツァルト、クラリネットが彩った最後の年 |
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2015年6月28日(日) 16:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール |
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指揮・解説:茂木大輔
管弦楽:もぎオケ交響団(コンサートマスター:永峰高志)
合唱:もぎオケ「モツレク」合唱団
クラリネット:伊藤 圭、クラリネット/バセットホルン:山根孝志
ソプラノ:渡邉恵津子、メゾ・ソプラノ:相可佐代子、テノール:村上公太、バリトン/合唱指揮:浅井隆二 |
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混声合唱のためのモテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」 K.618
(もぎオケ「モツレク」合唱団)
歌劇「魔笛」 K.620より
序曲
第2幕:第9曲 「僧侶の入場」
第2幕:第17曲 パミーナのアリア 「ああ、全てが去ってしまったと私は感じています」
(ソプラノ:渡邉恵津子)
第2幕:第18曲 僧侶の合唱 「イシスの神、オシリスの神よ」
(もぎオケ「モツレク」合唱団男声合唱)
クラリネットとバセットホルンの比較・解説など
(バセットホルン:伊藤 圭、山根孝司、堂面宏起)
3つのバセットホルンのためのディヴェルティメント 変ロ長調 K.439b
第4番より 第5楽章
歌劇「皇帝ティトゥスの慈悲」 K.621 より
第1幕:第9曲 セストのアリア 「行きます、愛しいお方よ」
(メゾソプラノ:相可佐代子、クラリネット:伊藤 圭)
第2幕:第23曲 ヴィッテリアのロンド 「今はもう、花で愛の鎖を作りに来ないように」
(ソプラノ:渡邉恵津子、バセットホルン:山根孝司)
クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
(バセットクラリネット:伊藤 圭)
(休憩20分)
レクイエム(死者のためのミサ曲) K.626
T:入祭唱:「主よ、永遠の平安を彼らにお与えください」
U:憐れみの賛歌:「主よ、憐れみたまえ」
V:続唱
1.「怒りの日」
2.「ラッパは不思議な音を」
3.「恐るべき威光の王」
4.「思い起こして下さい」
5.「呪われし者」
6.「その日こそ涙の日」
W.奉献唱
1.「主イエス・キリスト、栄光の王」
2.「主よ、賛美と、いけにえと、祈りを」
[.拝領唱:「永久の光で彼らを照らして下さい」 |
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北区フィルハーモニー管弦楽団の演奏会を終え、大急ぎでりゅーとぴあへ向かいましたが、当然開演に間に合うはずはなく、30分遅れで入場しました。こういう事態は当初から予想しており、あらかじめCブロック左端の着席しやすい席を選んでおきました。
すでに前半のプログラムはかなり進んでいて、「アヴェ・ヴェルム・コルプス」と「魔笛」は聴けませんでした。楽団員、合唱団は退席した後で、茂木さんによりバセットホルンの解説が始まっているところでした。
茂木さんの解説付きコンサートは今回で11回目ですが、客の入りはいつもより良いようで、3階にも客が入っていました。モーツァルト人気が高いからでしょうか。
今回はモーツァルト最晩年に作曲された曲を、当時モーツァルトが多用したクラリネット、バセットホルンに焦点を当てての解説と演奏が行われました。
バセットホルン、バセット・クラリネットとクラリネットを比較しての解説が行われ、興味深く拝聴しました。恥ずかしながら、バセットホルンやバセット・クラリネットという楽器については良く知らず、「レクイエム」ではファゴット以外の木管はバセットホルンだけというのは初めて知りました。
その後、「3つのバセットホルンのためのディヴェルティメント」の美しい音色にうっとりと聴き入りました。
続いて、オケが登場し、歌劇「皇帝ティートの慈悲」のアリアが、メゾソプラノとクラリネット、ソプラノとバセットホルンの組み合わせで演奏されました。オケの編成は6-6-4-3-2。クラリネット、バセットホルンはチェロが良く使用する演奏台に乗って演奏されました。
いつもは何気なく聴くだけなのですが、こうして解説を聞いた後に聴きますと、なるほど、それぞれの楽器がいい演奏効果を上げているんですね。
そして、圧巻だったのが次に演奏されたクラリネット協奏曲です。この曲の自筆譜は残っておらず、モーツァルトの死後に通常のクラリネット用に編曲された楽譜が存在するのみですが、オリジナル譜は、バセットホルンと同様にクラリネットよりさらに低い音域を出せるバセット・クラリネット用に作られたのだそうです。今回はそのオリジナル楽器を使用しての演奏です。
N響主席の伊藤圭さんの美しいバセット・クラリネットの調べ、抜群のアンサンブルのもぎオケ。これまで聴いたこの曲の最良の演奏に感じました。どの楽章もこの上なく美しく、第2楽章など、天に上るかのような恍惚感を感じました。これを聴けただけで今日は来た甲斐があったとさえ感じました。
ここで前半の終了となりましたが、時刻はすでに17時50分。毎度のことながら、長いコンサートです。
休憩後は、本日のメインともいえる「レクイエム」です。全曲ではなく、モーツァルトの自筆の部分だけが演奏されました。ステージ後方に合唱団、独唱者4人はステージ左手に並びました。こういう独唱者の配置は珍しいのではないかと思います。女性陣はシックなドレスに着替えられていました。
重厚感ある合唱がホールいっぱいに響き、残響が天井から降り注いできました。コンサートホールは教会に変貌し、荘厳な音楽に身をゆだねました。各独唱者の歌声も胸に迫り、魂を揺さぶる音楽を聴かせました。バセットホルンを擁するオケのアンサンブルも美しく、言葉では表現しがたい心を打つ音楽を創りだしていました。私が好きなラクリモサでは涙がこみ上げ、終演とともに感動で胸が高鳴りました。
合唱団の皆さんの頑張りに拍手を贈るとともに、オケの皆さんを称賛したいと思います。在京オケのトップ奏者を中心に編成され、臨時編成とは思えない息の合ったアンサンブルは常設オケを凌ぐのではないでしょうか。高水準の演奏には感嘆するばかりです。
毎回興味深いテーマで行われるこのシリーズ。内容豊富で、お得感が高いコンサートです。配布されるプログラムの解説も読み応え十分です。演奏の質も高く、決して裏切られませんので、これまで聴かれなかった方は、次回は聴かれますよう強くお勧めします。
(客席:2階C3-7、S席:会員割引¥4050) |