響きの音色 チェロ&ピアノ
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2013年11月23日(土・祝) 15:00  越後森林館 こだまホール
 
チェロ:根津 要
ピアノ:品田真彦
 

プレーヴァル:チェロソナタ第5番 ト長調
ポッパー:ロマンス 作品5

J.S.バッハ(ヘス編):主よ、人の望みの喜びよ
モーツァルト:ロンド ニ長調 KV.485
ショパン:子犬のワルツ 変ニ長調 作品64-1
モーツァルト(サイ編):トルコ行進曲 ”ジャズ”

ファリャ:スペイン舞曲

(休憩15分)

ドヴォルザーク:ロンド 作品94
J.S.バッハ:G線上のアリア
ドビュッシー:月の光
サン=サーンス:白鳥
シューマン:幻想小曲集 作品73

(アンコール)
久石 譲:アシタカ聶記 〜アシタカとサン
 
 

 私の自宅の近くに、昨年春に木造の大きな建物ができて、いったいなんだろうと不思議に思っていました。その後、新潟県森林組合連合会の越後杉流通活性化センター(愛称:越後森林館)ということが分かりました。
 しかし、中に入ったことはなく、何をする施設なのか全く分かりませんでした、ホームページで調べてみますと、会議室や多目的ホールがあるようですが、催しをしている様子もありませんでした。
 そんな折、「響きの音色 チェロ&ピアノ」というチラシを見つけ、根津さん、品田さんという新潟でお馴染みの音楽家の出演もありますので、どんな施設か見てみたいということで、行ってみることにしました。

 今日は勤労感謝の日。時おり日が差したりしましたが、雨が降ったり止んだりで、気持ちも晴れません。小雨の中会場に到着。新潟西バイパスの起点の曽和IC横の分かりやすい場所です。森林組合の施設だけあり、木造の立派な建物です。

 玄関で靴を脱いで入館。廊下にずらりと靴が並べられました。館内は床も壁も天井も、全てが木造で、県産の木材が98%使用されているとのことです。多目的ホールは正六角形で、高い天井が特徴的です。樹齢100年の根曲がり杉6本を金具を使わないで組み上げたとのことで、いかにも職人技ということが見て取れます。床材はくるみの木だそうです。
 ステージの上に小型のグランドピアノが設置されており、その前にチェロの演奏場所が作られていました。板張りのホールには座布団が並べられ、周囲には椅子が並べられていました。ホールを取り囲むように2階にバルコニーがあり、そこにも席が作られていました。私は正面3列目中央あたりに席を取りました。床暖房が効いていて、大変暖かくて快適でした。

 主催者や建物の設計者の挨拶があった後、開演となりました。いきなりプレーヴァルという聴いたことのない作曲家のチェロソナタが演奏され、力の入った演奏に驚かせられました。木のぬくもりを感じさせる柔らかな響きがホールを満たし、チェロもピアノもきれいに響き渡りました。いきなりの攻撃に不意を突かれたという感じでしたが、次のポッパーで一息できました。その後は曲目紹介を挟みながら演奏が行われました。

 一旦根津さんが下がって、品田さんのピアノ独奏で4曲演奏されました。バッハはつっかえ気味に感じた場面がありましたが、その後は快調。超快速の子犬のワルツにあっけをとられ、ファジル・サイの演奏でお馴染みのジャズ版トルコ行進曲で盛り上がりました。小さなピアノではありますが、ホールの響きの良さもあり、フルコンサートピアノに劣らない音色を作り出していました。

 根津さんが登場して、前半最後のファリャ。これも力の入った演奏でした。根津さんの息遣い、唸り声が聞こえてきて、情熱的な演奏でした。

 休憩後は、すべて二人での演奏でした。聴きやすい曲にうっとりした後、最後のシューマンで再びノックアウト。根津さんの渾身の演奏でした。額に汗がにじみ、熱の入った演奏に、ただ聴き入るばかりでした。
 アンコールに演奏されたアシタカの音楽も良かったです。アンコールの曲名のアナウンスがなかったので、終演後にお二人にお聴きしたのですが、「ジブリの音楽で、千と千尋の・・だったかなあ・・」などと話されていましたが、「もののけ姫」でしたよね。

 根津さんの、野武士の如く、荒い息遣いで気迫に溢れた弾きぶりは、孤高のチェリストとでもいいましょうか。近寄りがたいような殺気すら感じました。そんな根津さんのチェロに品田さんはピッタリと融合し、ときにせめぎ合い、見事な音楽を作り上げていました。品田さんは昨夜もコンサートに出演していたはずであり、活発な活動振りはすばらしいですね。

 新潟の音楽シーンを語るに欠かせない存在となっているお二人の良さが良く現れたコンサートだったと思います。木造の響きの良いホールの素晴らしさも特記しなければなりません。ステージ左手の窓からは、弥彦〜角田の山並みが見え、演奏中に夕日が差し込んだりして、良い雰囲気を醸し出していました。

 ただし、個人的には、日頃床に座って音楽を聴くことはないので、2時間座り続けるのは苦痛であり、姿勢をいろいろ変えたものの、腰が痛くなって閉口してしまいました。床暖房の気持ち良さは良かったのですが、椅子席にすべきだったと反省したしだいです。

 木の香が香り、柔らかな響きの豊かなホールは、ピアノや小編成のクラシックにピッタリです。今後も定期的にコンサートが開催されることを期待したいと思います。

  

(客席:正面3列目¥2000)