平井千絵 「フォルテピアノで聴くモーツァルト」
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2011年2月5日(土) 16:00  新潟市民芸術文化会館 スタジオA
 
フォルテピアノ: 平井千絵
 


モーツァルト:オランダ(国)歌<ウィレム・ファン・ナッソー>による7つの変奏曲 ニ長調 K.25

モーツァルト:幻想曲 ハ短調 K.475
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第14番 ハ短調 K.457

(休憩15分)

フライシュッテトラー:モーツァルトの歌劇「皇帝ティトの慈悲」のアリア”夢に見し花嫁姿”
             の主題による10の変奏曲

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 (トルコ行進曲付き) K.331

(アンコール)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番 「月光」より 第1楽章
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第14番 第2楽章
 
 
 りゅーとぴあの「モーツァルト・チクルス」の第3回に当たるコンサートです。モーツァルトの曲をモーツァルトの時代のピアノであるフォルテピアノで聴こうという興味深いコンサートです。以前にもフォルテピアノのコンサートはあったような記憶がありますが、私は聴いていませんので、聴くのは今回が初めてになります。
 平井さんはオランダ在住のフォルテピアノ奏者で、使用する楽器はアントン・ヴァルターが1795年に製作したフォルテピアノを忠実に複製したものだそうです。

 コンサートに先立って、1時からプレコンサート・レクチャーがあったのですが、時間的に無理があり断念。コンサートのみに参加しました。
 所用を済ませてりゅーとぴあに着くと、ちょうど開場の時間でした。早めの入場で、1列目中央に席を取ることができました。100名限定の客席は満席になりました。
 スタジオにステージが組まれ、中央にフォルテピアノが置かれていました。チェンバロほどの大きさで、塗装されておらず、木目がきれいです。ペダルはなく、足が5本ありました。鍵盤はピアノと違って、白・黒が逆です。開演ぎりぎりまで入念な調律が行われていました。(休憩時間もずっと調律していました。)

 黒いレースのドレスの平井さんが登場して開演です。チェンバロとピアノの中間みたいな音色で、軽く、華やかな感じがします。モーツァルトの生きていた時代の音はこれだと思うと感慨深く感じられます。
 1曲目の後に、フォルテピアノについての簡単な説明があり、幻想曲とソナタが続けて演奏されました。現代のピアノに慣れ親しんでいるため、フォルテピアノの音は新鮮に感じられ、うっとりと聴き入りました。
 休憩後は、珍しいフライシュテットラーの曲の後、お馴染みのソナタ(トルコ行進曲付き)が演奏されました。演奏技術がどうなのかは素人の私には判断できませんが、鍵盤のタッチコントロールが難しそうでした。でも、緩急自在のメリハリのある聴き応え十分な演奏であり、ブラボーの声も聞かれました。

 アンコールはベートーヴェンの「月光」。フォルテピアノでの演奏を前提に作られた曲であり、ベートーヴェンの意図したサウンドを体験できて良かったです。この楽章は最初から最後までモデレーター(音色を柔らかくする仕掛け)を使用するよう指示されているとのことであり、まさに「月光」にふさわしい音色に酔いしれました。
 アンコールはこれで静かに終わるはずだったそうですが、拍手に応えて、好きだというソナタ14番の第2楽章(アダージョ)を演奏して終演となりました。

 これまで現代ピアノでの演奏しか知りませんでしたが、こうしてフォルテピアノの演奏を聴いてみると、作曲者の時代の本来の楽器を使用すべきなんだなあと感じ入りました。平井さんも話されていましたが、スタジオAの響きはフォルテピアノにぴったりであり、心地よいサウンドがスタジオ内に響いていました。
 また、平井さんは、年齢は存じ上げませんが、チラシの写真以上にチャーミングであり、うっとりと恍惚の表情で演奏する姿に、聴く方もうっとりと見とれてしまいました。得るものが多かったコンサートであり、満足感を胸に帰路につきました。

 附:手持ちのモーツァルト全集(Brilliant)でK.25を探して聴いてみたら、このCDもフォルテピアノの演奏でした。録音に使用されているフォルテピアノは今日使用されたフォルテピアノと同様に、アントン・ヴァルターが1795年に製作したフォルテピアノを複製したものであり、感慨を新たにしました。
 

(客席:1列目・正面、会員割引:3150円)