東京交響楽団 第578回定期演奏会
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2010年5月22日(土) 18:00  サントリーホール
 
指揮: ユベール・スダーン
ピアノ: ミケーレ・カンパネッラ
ヴィオラ: 青木篤子
コンサートマスター: 高木和弘
 
 

リスト:呪い ホ短調 H1

リスト:ピアノ協奏曲第2番 イ長調 H6

(休憩20分)

ベルリオーズ:交響曲「イタリアのハロルド」作品16



 
 
 
 

 今日は東京出張があり、ついでに東響サントリ−定期を聴いてきました。東響新潟定期会員には、東響の東京・川崎での主催公演への招待の特典がありますが、今回初めて利用させていただきました。

 最近上京の機会が少なく、サントリーホールも随分と久しぶりです。カラヤン広場のカフェテラスで軽食をとり開場を待ちました。受付で招待券と交換に渡されたチケットは2階RC2列目という音響的に最良の場所。

 開演時間となり、楽員が入場。新潟なら大きな拍手の中で入場し、楽員は起立してそれに応えるということになりますが、ここでは全く拍手がなく、沈黙の中での入場です。最後にコンマスの高木さんが入場しても何の反応もありません。これは寂しいですね。さあ、コンサートが始まるぞという盛り上がりがありませんから。新潟定期での拍手に感激するという東響のみなさんの言葉は単なる社交辞令じゃないようですね。

 さて、前半はリストです。演奏の機会が少ない珍しい曲を選んだそうですが、1曲目は「呪い」という不気味な名前の曲。ピアノと弦楽だけで演奏される珍しい編成の曲であり、演奏される機会はほとんどないとのことです。当然、私は初めて聴きます。13分ほどの短い曲ですが、3つの部分から構成され、ミニ・ピアノ協奏曲と言えるものです。東響の弦楽アンサンブルの見事さ、カンパネッラの好演もあって聴き応えあるものでした。

 2曲目は、オケはフル編成となってピアノ協奏曲第2番です。1番の陰に隠れているように思いますが、なかなか良い曲ですね。友人同士というカンパネッラとスダーンの息もピッタリであり、すばらしい盛り上がりと感動をいただきました。拍手は鳴り止まず、カンパネッラは何度もステージに呼び戻され、最後は自分でピアノの蓋を閉じて休憩に入りました。

 後半はいよいよ「イタリアのハロルド」です。当初はパガニーニの依頼でヴィオラ協奏曲として作り始めたものの、協奏曲としてはうまくいかず、ヴィオラ独奏付きの交響曲としてまとめたんだそうです。有名な曲ではありますが、私は生の演奏で聴くのは初めてです。東響の誇るヴィオラの青木さんとの競演が楽しみです。
 長身の青木さんはヴィジュアル的にも優れ、ステージ映えします。柔らかなヴィオラの音にうっとりしながら聴き入りました。第1楽章は幻想交響曲を想起させるような部分があって面白いですね。協奏曲と違って、ヴィオラ独奏が終始続くわけではなく、曲が進むにつれてむしろ出番が減り、第4楽章では出番がない状態が長く続きます。この間独奏者はどうするかスダーンも考えているとプログラムに書いていましたが、青木さんはステージから客席に下り、ステージ前を歩いて右手に消えました。その後最後に出番になるとステージ右手のコントラバスの後ろで弾いていました。深い眠りに落ちたハロルドが再び目覚めるという意味を視覚的にも表した面白い演出でした。青木さんには盛大な拍手が贈られ、ブラボーの声が何度も上がっていました。

 それにしましても東響はすばらしい演奏を聴かせてくれました。管楽器の各パートのソロも良かったですし、チェロのボーマンさんのソロも良かったです。スダーンの指揮する東響はいつもとは一味違った力を発揮するようです。大満足のコンサートであり、はるばる新潟から聴きに来た(これが目的じゃなかったですが)甲斐がありました。それも招待券で聴けて何とも幸せです。

 こんな名演を聴かせた東響ですが、明日は初台のオケピットに入ります。多忙なスケジュールには驚きです。7月にはスダーンとともに新潟定期があります。すばらしい名演の予感があり、待ちきれない気持ちでいっぱいです。
 

(客席:2階RC2−4、新潟定期会員招待)