西本智実 マーラー第5番 with ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
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2009年9月29日(火) 19:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:西本智実
ピアノ:フレディ・ケンプ
 
 
モーツァルト:歌劇「後宮からの逃走」序曲

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466

  (アンコール) ショパン:別れの曲

(休憩20分)

マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調

 
 
 

 以前ブログに書いたのですが、何とも胡散臭いネーミングのコンサートです。フレディ・ケンプ、ロイヤル・フィルとの共演ということで、興味深いコンサートと思うのですが、西本を前面に出し、マーラーを指揮するのが画期的出来事のような売り出し方がどうにも理解できません。公演元がTBSということも関係しているのかも知れません。通常一番料金が安いはずのP席が、プレミア・フェイス・トゥー・フェイス席と称して、SS席と同額の最高額(15000円)に設定され、そこから売れたというのも信じられません。別に文句を言うことでもないのですが、通常のクラシック・コンサートに慣れ親しんでいる者としましては、どうにも馴染めないわけでして・・・。

 西本さんは、これまで新潟には日本フィルとの名曲コンサートで来演していますが、にいがた音楽鑑賞会主催の会員限定コンサートでしたので、聴く機会はなく、今回が初めてとなります。実績よりも人気先行で、宝塚の男役、あるいは男装の麗人的に扱われ、熱狂的女性ファンが多いことが知られており、実際今日の客層もいつものクラシックコンサートとは違うようです。

 と、あれこれ疑問はありますが、イギリスの名門オケの(と言うよりは、最近は廉価CDでお馴染みの)ロイヤル・フィルを生で聴いてみたかったですし、フレディ・ケンプも聴きたかったので、楽しみなコンサートではありました。ただ高額な席を買うのもためらわれ、3階席正面後方のA席で我慢です。とは言っても、長年のコンサート通いした経験から、視覚的には遠くなりますが、音響的には悪くない席です。

 出張先から急いで帰り、入場しました。満席と思いきや、ステージ脇の席には空席が目立ちます。そのくせP席や正面のSS席が埋まっているというのがアンバランスです。2階のサイドのS席エリアに空席があるのに比して、私の3階のA席、B席エリアはほぼ満席です。最高額の席と安席が満席というのが今日の客層を反映しているのかも知れません。

 拍手の中楽員が入場し、チューニングが行われましたが、コンマスが不在のままチューニングが終わり、その後にコンマスが登場しました。これが英国流なのでしょうか。燕尾服姿の西村さんが登場して開演です。

 モーツァルトは小編成でした。最初の序曲は奇をてらうことのないオーソドックスな演奏であり、オケの音色も特に優れているとも感じず、特徴なく感じました。残念ながら何の感慨もなく終わりました。
 
 2曲目はピアノ協奏曲です。フレディ・ケンプは何年か前に新潟でリサイタルを開催したことがあったように思いますが、仕事で聴けなかった記憶があり、是非聴きたいと思っていました。巨匠ヴィルヘルム・ケンプの親族である父と日本人の母との間で生まれ、イギリスで育ち、8歳でロイヤル・フィルと共演したといいますから、ロイヤル・フィルとの関係は深いものがあります。
 演奏は、先日のコブリンの印象が強く残りすぎていたためか、音の切れがなく、軽やかさに欠け、しどろもどろの演奏のように感じました。これはピアノだけではなく、オーケストラの演奏にも言えたかもしれません。アンコールのショパンもいまひとつ。休憩時間に会った音楽仲間は素晴らしかったと絶賛していましたが、私は期待に反してイマイチに感じました。

 後半のマーラーは編成が大きくなりましたが、大編成という訳でもありません。管楽器はフル編成で、左にホルン7人が横一列に並び、右にトランペット、トロンボーン、チューバが横一列に並ぶ様は壮観ですが、弦が少ないのが気になりました。弦はひな壇を使用せず、Vn1:14人、Vn2:12人、Va:10人、Vc:8人、Cb:6人と編成は少なく、マーラーをやるにしては小振りに感じました。チェロは2楽章途中で1人が退席し、4楽章が始まるまでは7人に減っていました。

 演奏はゆっくしたテンポで進みました。出だしのトランペットはなかなかきれいであり、途中変な節回しが気になった部分もありましたが、その後は一貫していい音を出していました。ホルンも頑張っていました。総じて管楽器は良かったと思います。しかし、人数的問題は大きく、弦の厚みが薄く感じられました。
 ゆっくりした演奏で、オケは破綻するギリギリのところで頑張っていたと思います。金管が頑張ってましたので、聴かせどころは決めてくれたと思います。アダージェットもまずまず美しく感じました。前半のモーツァルトよりもずっと楽しめました。

 西本さんには失礼ですが、予想に反して良い演奏だったと思います。ケンプを絶賛していた音楽仲間は、マーラーはボロボロだったとけなしていましたが、私は前半より楽しめた演奏だったと思います。人によって感じ方は全然違うんだなあと再認識した次第です。

 燕尾服姿の西本さんの指揮ぶりはかっこよく、女性ファンを熱狂させるのもわからないではありません。でも、こんな売り方じゃなくて、音楽で勝負すればよいのに、と勝手に心配しています。実力はあるに違いないのに・・。
 ロイヤルフィルも初めて聴きましたが、特に驚きは感じませんでした。オケの編成の問題もあって、音色的にはアンバランスな印象があり、管が頑張っていたなあという印象のみが強く残っています。でもそれなりに楽しめたコンサートではありました。
 

(客席:3階 I 5−10、A席:9500円)