サイトウ・キネン・フェスティバル松本  ブリテン:戦争レクイエム
  ←前  次→
2009年8月28日(金) 19:00  長野県松本文化会館 大ホール
 
指揮:小澤征爾
合唱指揮:ピエール・ヴァレー
管弦楽:サイトウ・キネン・オーケストラ
ソプラノ:クリスティン・ゴーキー
テノール:アンソニー・ディーン・グリフィー
バリトン:ジェイムズ・ウェストマン
合唱:SKF松本合唱団、東京オペラシンガーズ、栗友会合唱団
児童合唱:SKF松本児童合唱団
 
 

 
ブリテン:戦争レクイエム

   第1曲:永遠の安息を
   第2曲:怒りの日
   第3曲:奉献文
   第4曲:サンクトゥス(聖なるかな)
   第5曲:アニュス・デイ(神の子羊)
   第6曲:リベラ・メ(われを解き放ち給え)
 
 

 サイトウ・キネン・フェスティバル松本は一度は行かねばと常々思っていましたが、チケットが買えなかったり、スケジュールが合わなかったりで、これまで行く機会がありませんでした。昨年もチケットが買えず、今年こそ何とかしようとチケット発売初日にネットで購入を試みましたが、繋がったときには完売。またダメかとあきらめていました。
 ところが先日何気なくネットを覗いていたら3次販売があり、日によっては残席があることが分かりました。スケジュールを検討したところ、今日なら何とか午後に休みが取れそうなので、急いでチケットを購入しました。遅ればせながらのサイトウ・キネン・デビューとなります。

 昼に仕事を切り上げ、車で松本へ向かいました。残念ながら金曜日なのでETC休日割引になりませんが、平日昼間割引・通勤割引が受けられるよう時間調整・距離調整してインターを乗り降りして松本に着きました。苦労の甲斐あって、直通で行くより結構安くなりました。
 松本は仕事や観光でこれまでに何度か来たことがあり、松本文化会館やハーモニーホールも利用したことがあります。市内の道も何となく覚えていて、スムーズに会場に着いてしまいました。開場まで十分な時間があり、売店を見たり、ロビーで放映されていたビデオを見たりして暇つぶししました。開場は6時と早かったのですが、実際に客席に入れたのは6時半。ワインのサービスがありましたが、自家用車で来てしまったので断念しました。

 さて、今日の演目である「戦争レクイエム」は今年のメインプログラムであり、8月25日、27日、28日、30日の4公演が行われ、今日は3日目となります。80分余りの大曲ということもあり、プログラムはこれ1曲のみで、休憩なしで演奏されました。開演は7時のはずでしたが、10分以上遅れました。

 今回S席完売で、A席を購入しましたが、1階席中央・後方で、2階席の下でした。ステージの見晴らしは良く音響的にはどうかは分かりませんが、まずまずの場所です。開演前に2階席も回ってみましたが、かなり高さがあって、ステージは遥か下に見えます。傾斜がかなりあるので、距離はあっても、どの席でもステージはよく見えそうです。
 入り口には当日券ありという張り紙がありましたが、客席は満席です。外国のお客様もチラホラ。全国から集まっているのでしょうね。
 ステージを眺めると、オケ席の後方に合唱団席が組まれ、その中央にソプラノ独唱のための席が一段高く作られ、ソプラノが最上部に位置する形になります。指揮者のすぐ前にテノールとバリトン。その周りを室内オケ(Vn1、Vn2、Va、Vc、Cb、打、ハープ、ホルン、ファゴット、クラリネット、オーボエ、フルートが各1人)が取り囲み、その外側に通常の大編成オケが配置するという面白いステージ構成です。ステージ両端には字幕の電光掲示板が据えられていました。
 ソプラノと合唱団が最初に登場し、その後楽員とともに小澤さんが登場しました。昨年5月に新日本フィルとともに新潟に来演したときは体調不良であり、今日の元気そうなお姿を見て安心しました。短いチューニングの後にすぐに演奏が開始されました。チューニングのとき立ち上がったコンマス(豊嶋さん?)が2番目の席にいたのでアレッと思いましたが、前記したように指揮者前に室内オケが配置されましたので、通常のコンマス席には室内オケのコンマス(矢部さん?)がいたのでした。
 
 曲はブリテンの代表作としてあまりにも有名ですが、実際に聴く機会はありませんでした。通常のラテン語のレクイエム典礼文の間に、イギリスの詩人オーウェンの英語の反戦詩を織り交ぜるという複雑な曲です。ラテン語典礼文についてはソプラノ、合唱団と大オーケストラが演奏し、オーウェンの反戦詩は、イギリス兵とドイツ兵役のテノール、バリトンと室内オケが演奏します。

 実際の演奏については、これまで聴いたことがなかったので比較できるものもなく、何とも言えませんが、美しい演奏だったと思います。ソプラノのゴーキーの圧倒的な存在感(歌声のみならず、視覚的にも)が印象的でした。テノール、バリトンの、時に悲痛な歌声も良かったと思います。もちろんオーケストラの演奏も素晴らしかったことは言うまでもありません。小澤さんはこの長大な曲を暗譜で指揮されていて驚きました。
 しかし、一番感銘を受けたのは、児童合唱の歌声じゃなかったでしょうか。声は聴こえても姿が見えませんでしたが、まさに天国から降り注ぐ光のような無垢な歌声に心洗われました。
 字幕があったので歌詞を理解しやすく、感情移入もできました。「もう眠ろうよ」という兵士の言葉は胸に染みました。演奏が終わった後にしばらくの沈黙があり、大きな拍手が沸き上がりました。カーテンコールでは児童合唱団がステージ右手の花道に現れて整列し、一段と大きな歓声が上がりました。地元の子供たちの頑張りに私も力いっぱい拍手しました。 

 食わず嫌いで敬遠していたこの曲でしたが、奥深い名曲であることが分かったことは大きな収穫でした。何せレクイエムですから精神的高揚感を得ることはできませんが、心地よい疲労感を感じることができました。反戦の思いは伝わってきたように思います。
 ただし、高額なチケット代、交通費など絡めて考えますと、それに見合った感動が得られたかどうかは難しいところです。まあ、お祭りに参加できたということが何よりだったと思います。例年の如くテレビ収録されていますから、後日聴き直し、感動を新たにできればと思います。

 観光することなく新潟へとんぼ返り。せめてもと思い、ライトアップされた松本城を眺めてから帰路につきました。新潟到着は0時を過ぎたので、帰りの高速代は1000円で済みました。しめしめ。
 

(客席:1階28−39、A席:20000円)