マリインスキーオペラ 「ランスへの旅」
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2008年2月2日(土)12:00  東京文化会館大ホール
 
 
 
ロッシーニ:ランスへの旅 全1幕 <パリ・シャトレ座との共同制作>  

第1部 ー (休憩30分) ー 第2部

指揮:ワレリー・ゲルギエフ
演出:アラン・マラトラ

マッダレーナ (「金の百合亭」の女中頭) : エレーナ・ソンメル
ドン・プルデンツィオ (「金の百合亭」の医者) : ユーリー・ヴォロビエフ
アントニオ (「金の百合亭」の番頭)  : パーヴェル・シムレーヴィチ
コルテーゼ夫人 (「黄金の百合亭」の女主人) : アナスタシア・カラーギナ
フォルヴィル伯爵夫人 (フランスの若い未亡人) : ラリーサ・ユージナ
モデスティーナ (フォルヴィル夫人の小間使い) : オリガ・レフコーワ
ドン・ルイジーノ (フォルヴィル夫人の従弟)  : ミハイル・ラーティシェフ
トロムボノク男爵 (ドイツの陸軍少佐)  : ウラディスラフ・ウスペンスキー
ドン・プロフォンド (コリンナの友人の文学者) : ニコライ・カメンスキー
ドン・アルヴァーロ (スペインの提督)  : アレクセイ・サフィウーリン
メリベーア侯爵夫人 (ポーランドの貴婦人/イタリアの将軍の未亡人)
                       : エレーナ・ツヴェトコーワ
リーベンスコフ伯爵 (ロシアの将軍) : ダニール・シトーダ
コリンナ (ローマの即興詩人)  : イルマ・ギゴラシヴィリ
シドニー卿 (イギリスの大佐)   : ワディム・クラーヴェツ
騎士ベルフィオール (フランスの士官)  : ドミートリー・ヴォロパエフ 
 
 

 安くチケットが手に入り、東京までオペラ三昧に繰り出しました。ゲルギエフファンを自認する私ですが、マリインスキーオペラは見たことがありませんでしたから、大変楽しみにしていました。まず最初は東京文化会館での「ランスへの旅」です。客席は4階席正面の最前列。見晴らしは良かったです。

 ロッシーニの「ランスへの旅」といっても、今回までは名前すら聞いたことがありませんでした。手持ちのオペラのガイドブックにも出ていません。実際に公演の機会も少ないのだそうですね。ランスで行われるフランス国王の戴冠式に行こうと集まったヨーロッパ各国の貴族たちが温泉地のホテル「金の百合亭」で繰り広げるドタバタ劇で、ストーリーがどうのという作品ではなく、歌を楽しむ作品なようです。14人のソリストが次から次へと歌声を披露し、最後は国別対抗歌合戦になってしまいます。

 ホールに入って眺めてみると、オケピットはなく、1階席中央に花道が造られています。ステージ上はシンプルで、プールの監視台のような物があり、左手に隅にチェンバロが置かれ、後方にフランス国旗の幕が張られているのみです。

 開演となりましたが、ステージ上では掃除機で掃除が始まりました。その後出演者が1階席後方から現れて花道を通ってステージに次々に上がって行きます。カラフルな衣装が美しく、冗談としか思えない電飾付きの派手なドレス姿もあってビックリです。オケの楽員の一部も客席から上がって行きました。最後にゲルギエフがマフラーに帽子をかぶり、コートを羽織って1階席から颯爽と登場して会場を沸かせました。フランス国旗が取り払われるとステージ後方にオケが整列しており、演奏が始まりました。オケの皆さんも白いスーツ姿で決まっています。

 ロシア人によるイタリアオペラがどうなるのか気になりましたが、パリ・シャトレー座との共同制作とのことで、大変しゃれたステージで、新鮮な喜びを感じさせてくれました。簡素なステージなのに馬が登場した必然性は感じませんでしたが。各出演者の見事な歌いぶりと演技で、あっという間に前半が終わりました。休憩時間に私と同様に新潟から来た音楽好きと出会って、ワインを飲みながらしばしの歓談。やっぱりオペラにはワインが似合います。

 後半も楽しみ満載。ハープの伴奏によるアリアはしっとりと感動的でした。14人の歌手による14重唱は何とも贅沢です。コミカルで飽きさせない演出で、あっという間に終演となってしまいました。確かにストーリーはとりとめもなく単調なのですが、各ソリストの歌声はお見事でした。「未来のネトレプコを探せ!」というのが宣伝文句でしたが、さすがにマリインスキー劇場は実力者揃い。歌声をたっぷりと楽しませてもらいました。演技に演奏に大活躍のフルートのお姉さんもチャーミングで魅力的でした。ゲルギエフは終始マフラーに帽子姿。髪をかき上げながらのいつもの指揮ぶりとは違って、ダンディでかっこよかったです。1階席はステージとなり、2階席でも歌うという斬新な演出。そして華やかな衣装。柳原可奈子を彷彿させるフォルヴィル伯爵夫人役(ラリーサ・ユージナ)のダイナマイトボディにびっくりと、魅力満点なオペラでした。
 

(客席:4階1-27、B席:¥34000)