ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー
  ←前  次→
2006年6月7日  新潟市民芸術文化会館コンサートホール
 
指揮:大植英次
 
 
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68「田園」

(休憩20分)

ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 作品67「運命」

(アンコール)
ベートーヴェン:「レオノーレ」序曲 第3番

 
 
 

 今最も旬な日本人指揮者のひとり大植さん登場ということで楽しみにしていたコンサートです。今回の日本ツアーは大植さんの故郷広島から始まり、大阪、名古屋、東京、出雲、津、そして新潟の7都市での8公演です。
 楽劇「ワルキューレ」第1幕を演奏会形式でやるオール・ワーグナー・プログラムと「田園」「運命」のオール・ベートーヴェン・プログラムの2種類です。個人的にはワーグナーの方が良かったのですけれど、残念ながら新潟はベートーヴェンとなってしまいました。曲目には魅力がないのですが、大植さんを聴くということで期待していました。

 実は急な用も入ったのですが、万難を排してコンサートに駆けつけました。客は7割程度の入りでしょうか。Bブロック、Dブロックの空席が目立ちますが、ステージ脇のAブロック、Eブロック、ステージ後方のPブロック、そして3階席が満席に近いのは驚きであり、このアンバランスさは異様にも感じました。今回の私の席はCブロック2列目中央のベストポジションです。

 拍手の中楽員入場。手前左に第1ヴァイオリン、右に第2ヴァイオリン、その後ろ左にチェロ、右にヴィオラ、その後ろに管楽器、右にティンパニ、最後列にコントラバスが7人一列に並ぶという対向配置。小柄な大植さんに合わせてか指揮台が非常に高いのが目立ちました。

 大植さんが颯爽と登場し前半は「田園」。あれっ? アンサンブルが良くなく、弦の音もがさついています。これはハズレかな、と不安がよぎります。第2楽章はアクセントの付け方が新鮮に感じましたが、アンサンブルがバラバラで破綻寸前。こりゃ我らが潟響(新潟交響楽団)やオケラ(新潟大学管弦楽団)の方上手かも・・と雑念がよぎります。後半何とか盛り返して、嵐の場面でティンパニが登場するあたりからは気合いが入ってきて、フィナーレはうまくまとめてくれましたが、総合してはイマイチの演奏でした。

 休憩後の後半は「運命」。これはいい演奏でした。「運命」と言えば4月に茂木大輔さんの解説で予習してあったので気合いを入れて聴きましたが、期待に応えて緊張感ある演奏を披露してくれました。演奏技術という点では驚きはなく、むしろ東響の方が上かなと思う場面もあったのですが、心に響くものがありました。3楽章から4楽章への盛り上がりもすばらしかったです。決してうるさくならない所が良かったです。「田園」とはうって変わって大いに満足できました。

 数度のカーテンコールの後、大植さんの挨拶。ホールと観客をほめて聴衆の気持ちをさらに盛り上げました。アンコールはホルンが2名(あとバンダのトランペット1人)追加されて、「レオノーレ3番」。すばらしい選曲と演奏。こんなに精神的高揚を感じたのは久し振りでした。熱狂的拍手の中にコンサートは終了しました。終演後大植さんのサイン会を行うとの案内がありましたが、帰りを急ぐためホールを後にしました。

 昨日は名古屋でワーグナー、また明日東京でワーグナーとベートーヴェンとワーグナーを交互に連日演奏する過酷なツアーですが、大植さんはサイン会までやるという元気ぶり。サービス精神には頭が下がります。新潟の聴衆を魅了してファンが増えたに違いありません。私もファンになりました。音楽を娯楽として聴く私は、こういう元気な指揮者が好きです。また聴きたいなあ・・。今度は音楽監督をしている大阪フィルでもいいなあ。
 

(客席:2階C2−20、S席8100円:会員割引)