厦門市交響楽団(厦門愛楽楽団) 新潟公演
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2002年4月3日 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:王 鈞時、鄭 小瑛
ピアノ:成嶋志保
ヴァイオリン:蹇 愛
 
徐振民:交響詩「辺境の村の音画」 (指揮:王 鈞時)

グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16 (指揮:鄭 小瑛、ピアノ:成嶋志保)

(休憩)

何 占豪、陳 鋼:ヴァイオリン協奏曲「梁山伯と祝英台」 (指揮:王 鈞時、ヴァイオリン:蹇 愛)

劉 湲:交響詩篇「土楼反響」より (指揮:鄭 小瑛)
    第1楽章:労働の節
    第2楽章:海上の舟(山歌:李 天生)
    第4楽章:天開く

(アンコール)
「土楼反響」第3楽章:土楼夜話 より「草笛の歌」、「木挽き歌」

 
 
 

 日中国交回復30周年を記念してのコンサートです。厦門(あもい)市は台湾に面する中国南部の福建省の都市で、発展する中国経済の中心となる経済特別区のひとつです。佐世保市と姉妹都市であり、佐世保市制100周年を記念してのコンサートが主目的ですが、佐世保の他に、神戸と新潟で演奏会が開催されました。
 何故新潟か疑問に思いますが、国交回復に尽力した田中角栄元首相の地元だからということでもなく、厦門市と関連深い企業・団体の後援があったかららしいです。新潟から中国への航空路線もああります。
 このオケは、正式名を厦門愛楽楽団といい、1998年創設の若いオケで、世界を視野に入れた活動をめざすといいます。もちろん今回が初来日です。

 18時30分開演と、いつもより早いので、職場を17時に出て車をとばしました。今回は全席自由席なので、気はあせりますが、駐車場はすでに満杯。この混雑は隣の県民会館で山下達郎のコンサートが重なっているためのようです。仕方なく市役所の駐車場にとめ、会場へ駆け足しました。ちょうど桜は満開。県民会館前の桜の下では、怪しげな雲行きのなかで、花見の宴がすでに始まっていました。

 ホールに着くと、かなりの盛況です。正面の席は埋まっていて、ステージ脇しか空いていませんでした。仕方ないかとあきらめていたら、知人がCブロックに余分に席を取っていてくれていて、幸運にもS席エリアを確保できました。日中国交回復30周年記念ということで、斜め前には県知事はじめ、地元のVIPがおられますまし。中国系の観客も数多くみられました。

 拍手の中、楽団員の入場。平均年齢30歳代といい、若々しい顔ぶれです。女性も多く、黒いロングドレスにロングヘアーを後ろに束ねた姿が何とも美しいです。

 1曲目は王 鈞時の指揮。雲南省の少数民族「イ族」の民族歌謡を題材にしたという曲。当然初めて聴く曲ですが、なかなか美しく、心の中にスムーズに入り込みます。解説を見ると外山雄三に依頼されて作曲されたものとのことです。初めはドビュッシーのような繊細な調べでしたが、後半は賑やか。外山雄三のラプソディーを彷彿させました。オケの演奏もすばらしく感嘆しました。

 次のグリーグは、女性指揮者で音楽監督の鄭 小瑛の指揮。ピアノは新潟市出身でフランスで活躍しているという成嶋志保さん。最初のピアノの出だしからオケと合いません。ピアノが何とも粗っぽくロマンチックでありません。音楽が流れず、ただの音としてしか感じられません。先ほどすばらしい演奏をしたオケのアンサンブルの乱れも目立ちます。ブラボーの声はかかっていましたが、これはちょっと期待はずれでした。

 休憩の後、ヴァイオリン協奏曲。指揮者は1曲目を指揮した王 鈞時。コンマスをしていた美しい女性・蹇 愛がソロを弾きます。スレンダーな私好みの美女です。容姿だけでなく演奏も音色も美しかったです。中国の有名な物語を題材にした曲で、いかにも中国の曲という雰囲気の柔らかなメロディーラインが魅力であり、心が和みます。グリーグとは違って、オケの演奏も乱れはありません。

 最後は、再び鄭 小瑛の指揮で「土楼反響」。福建省の客家(はっか)人の奮闘、開拓の精神、生き様などを総合的に描いた壮大な歴史の詩です。土楼とは、土で造った彼らの家で、何家族もが群居しています。曲は全5楽章からなるのですが、時間の都合で、本日は1,2,4楽章のみの演奏です。打楽器が大活躍する賑やかで華やかな曲です。これほど大太鼓が活躍する曲は他にあるまいと思われました。
 出だしは「ツァラトゥストラはかく語りき」もどき。ときどきどこかで聴いたことのあるようなフレーズが出没します。R・シュトラウスとストラビンスキーとレスピーギをたして、2乗したような、そんな曲。しかし、ただ賑やかなだけでなく、2楽章では、山歌という、田舎の爺さん(?)の素朴な歌もあって、誠に魅力的な曲でした。

 アンコール1曲目は、先ほどの「土楼反響」の演奏されなかった第3楽章の一部を演奏。木の枝を持った奏者が出てきます。どうするんだろうと思っていましたら、葉っぱを口にくわえて演奏。草笛の音に心が洗われる、のどかな音楽でした。
 アンコール2曲目も、これまた美しい演奏でした。本当はもう1曲アンコールを用意していたらしいですが、指揮者がコンマスに退席を促して、コンサートは終了しました。

 聴いたことのない楽団であり、初めは期待していなかったのですが、すばらしいコンサートでした。曲も日本で聴く機会はないと思われ、貴重な体験をしました。
 オケも若く、発展を続ける中国を象徴するように、今後世界的に発展するに違いありません。期待はずれの先日の東響定期より数倍楽しむことができました。
 ただし、グリーグはないほうが良かったかな。代わりに「土楼反響」を全曲聴きたかったというのが本音です。ロビーで「土楼反響」のCDを販売していたので買って聴いてみましたが、なかなかのもの。今回演奏されなかった第5楽章は合唱付きで、レスピーギのローマの松(アッピア街道の松)そっくりで抱腹絶倒。音量を上げて聴くとストレス解消間違いなし。話の種に聴いて損はないです。

 以上のように、私の感性にぴったり合う音楽・演奏であり、美人揃いの楽員は見て楽しく、入場料2000円は安すぎるすばらしい演奏会でした。是非また聴いてみたいです。
 

(客席:2階Cブロック右)