新潟市民芸術文化会館開館記念

カルミナ・ブラーナ


 この度新潟市に新しいコンサートホールが開館した。パイプオルガンを備えたアリーナ型のホールである。これまで新潟市内にはオーケストラの公演を行える所は新潟県民会館くらいしかなく、あとは中小のホールである。近年の地方のホールブームに乗り遅れた感はあったが、ようやく他の地方中核都市並みになったかなというところ。ホールの形態には議論はあったが、まずはできてひと安心。
 ホール内は明るい色調で東京のサントリーホールのような重厚さはない。前の人の頭がじゃまにならないのはいいが、座席・階段はやや急すぎる。2階席、3階席の最前部は手すりの下が解放されているのでちょっと怖い。物を落としたら1階の人を直撃しそう。斬新なデザインかもしれないが、ちょっと安ぽい感じは否めない。音楽仲間の間では、階段で転落する人の第一号はいつでるかな、というのがもっぱらの話題。とまあ設計上の気になる点はあるが、音響面も含め今後改善されることと思う。ホールの今後の活用がまた問題だが・・。いずれにしても無いところからは何も生まれない。今新たな出発である。音楽とスポーツの都市宣言を30年も前にしているくせに、立派なホールも無ければスポーツ施設もないという状況がずっとであった。ワールドカップ開催に向けてスタジアム建設が始まろうとしているが、未だプロ野球公式戦を呼べるような満足な球場もない。いつまでみすぼらしい鳥屋野球場をほっておくのだろうか?
 さて、話は横道にそれてしまった。20数年前、ベートーベンの第九を県民会館で初めて聴いた。たしか某コーヒー会社主催の一般市民によるコンサートであり、最近亡くなられた石丸寛の指揮だったと思う。そのとき人間の声こそ最高の楽器に違いないと実感し、オーケストラの他に声楽・合唱が大活躍のオルフ作曲のカルミナ・ブラーナも是非生で聴きたいと長く思っていたところであった。東京でも度々演奏されるような曲ではないし、新潟で聴けるということで、演奏のできは別にして聴けたということだけで満足であった。平幹二郎の語りの好演もあって、なかなかいい演奏であったと思う。ちょっとホールの響きが堅いかなという印象はあったが。好演した一般公募で編成された新潟東響コーラスの今後の発展にも期待をもたせた。


メモ:当日の演奏は、

   指揮:秋山和慶、管弦楽:東京交響楽団
   独唱:森川栄子(S)、五郎部俊朗(T)、牧野正人(Br)
   合唱:にいがた東響コーラス、新潟市ジュニア合唱団
   語り:平幹二郎、演出:実相寺昭雄

という面々でした。
 曲をご存じない方は、小沢征爾、レヴァイン、デュトワ、ヨッフムなどのCDをお聴き下さい。

 さてさて、12月にはワレリー・ゲルギエフ指揮キーロフ劇場管弦楽団のコンサートがあります。新潟では知名度が意外にないのが心外ですが、今最も旬です。アバド/ベルリンフィルなどよりスリリングな演奏が期待できるんじゃないかと個人的には思っています。これは是非聴くべきであり、全国の皆さんもいらしてください。また、春にはアマチュアの合同オケでマーラーの復活が演奏されます。やっと新潟で復活が聴ける! 開館記念にはぴったりだと思います。長年の夢がようやく叶い、今からワクワクしています。


1998年11月