4)心不全対策




 心臓は結局筋肉の固まりですので、筋ジスの進行に伴って心筋の変性、線維化が進みます。 このため心臓の収縮力が低下し、血液を十分送り出せなくなり、うっ血性心不全という状態となります。
 心電図では後下壁の心筋障害を示すことが多く、心室性期外収縮(VPC)をはじめとする不整脈もほとんど必発です。


(1)心不全の症状

 倦怠感、疲労感、食欲不振、体重減少、動悸、不整脈、尿量減少、浮腫、呼吸困難、喀痰増加など。日常的には、脈拍が速くなる(100/分以上が続く。)というのが分かりやすい指標です。
 

(2)心機能の検査

 心電図、胸部レントゲン、心エコー、24時間心電図(ホルター心電図)、血液検査等を定期的に実施します。心電図では、心筋障害を反映した波形変化や不整脈がみられます。胸部レントゲンでは、心機能の低下に伴い心胸郭比(CTR)が増大したり、肺門影の増強や、胸水が貯留したりします。心エコーでは、壁運動の低下や乱れ、心室の拡張等が観察されます。24時間心電図では、多源性の心室性期外収縮(VPC)、心房性期外収縮(APC)が頻発すします。また、心不全の指標として、血液中のヒト心房性ナトリウム利尿ポリペプチド(HANP)や脳性ナトリウム利尿ポリペプチド(BNP)も参考にされます。実際の現場では、胸部レントゲンでのCTR 50%以上、心エコーでの駆出率(EF)40%以下を基準として考えています。
 

(3)生活上の注意

 心不全の悪化要因として、@塩分の多い食事や過剰の飲水、A精神的・肉体的ストレス、過労、B呼吸不全、感染、消化器疾患などの合併、などがあげられます。そこで、心機能が低下している患者に対しては、@水分制限、塩分制限、A安静時間の確保(特に食後、入浴後)、B薬物療法、を行います。自覚症状に応じて、安静時間の確保が重要です。
 食事中の塩分は最低でも10g以下(6〜7g/日以下)に制限し、水分は体格にもよりますが、食事以外は1000ml/日を目安にしています。また、習慣として、食後・入浴後の安静時間を確保しています。入浴は心臓に対して負担になることが確認されており、心機能の低下がみられるとき入浴回数、湯温・入浴時間にも注意を払う必用があります。(40℃、3分がいいようです。)
 また、安静とは体の安静だけでなく、精神の安静も大事です。寝たままといっても、長距離の移動はそれだけでかなりの負担となります。旅行や外泊にも注意を要します。
 

(4)薬物療法

 強心剤、利尿剤、ACE阻害剤、抗不整脈剤、βブロッカーなどが使用されます。具体的には、強心剤としてはジゴシン、利尿剤としてはラシックスやアルダクトンA、ACE阻害剤としてはカプトリルやレニベースなどが使用されています。ACE阻害剤を基本として、適宜強心剤、利尿剤を加えます。最近では従来禁忌とされたβブロッカーの有効性が注目されています。心室性期外収縮(VPC)が多いときは、メキシチールなどの抗不整脈剤を使用するが、消化器症状などの副作用や、心機能低下に注意を要します。なお、ジゴシン服用者は、定期的な血中濃度測定を行い、過量(ジギタリス中毒)にならぬよう注意する必要があります。急性に増悪したときは、絶対安静の上、点滴による厳密な水分管理、酸素吸入などが必要です。