北川歩実 ★★★★

 人格についてをメインテーマとして各長編に共通している。
 いきなり新潮ミステリー倶楽部デビューなので期待して読んだが、期待通りの面白さだった。魅力的な謎が冒頭に提示されるし、論理的に推理は進むんだけど、今までの本格ミステリーとは味わいが違う作家である。一度ホラーを手がけて欲しいなあ。


私の感想(1996年6月以降)

「硝子のドレス」 新潮社 96.07

 話題作「僕を殺した女」に次ぐ第2作。
 ダイエットをメインモチーフとしたミステリーだけど、男が普段考えない世界だけになかなか 興味深かった。女の人が読むと、この小説は本当に怖いかもしれない。
   北川歩実は今後も要チェックの作家。85

「模造人格」 幻冬社 96.10

 前2作と同じく、人格に徹底的にこだわった小説。今月の新刊。
 とある殺人事件を通して、被害者だと思われていた女性が生きているのかも しれないという小説で、仕組みは少しややこやしいが読んでいる内に自分でも どちらなのか知りたくてうずうずしてしまった。92

「猿の証言」 新潮社 97.09

 デビューが新潮ミステリー倶楽部という大型新人北川歩実の最新刊。
 ずっと「こころ」や「記憶」をテーマとしてきたが、今回はそれプラス「人間の知性」というとこかな。チンパンジーの研究をきっかけとして起こる事件を追ううちに様々な謎が出てくる。仮定の推理が幾通りも出てきてひっくり返されて、という展開は今回も健在だし、言語能力は人間の生まれつきのものか、という命題にも考えさせられる。次の新刊が早くも楽しみだ。91

「金のゆりかご」 集英社 98.08

 集英社から初の刊行となる今月の新刊。
 今回のテーマは幼児期の天才教育。「金のゆりかご」と呼ばれる装置によって秀才ではなく天才を産みだそうとしている教室。さてそこで育った子供たちは、というストーリー。
 北川歩実の特長でもある仮説、否定、仮説の繰り返しで緊迫感を生み出している。大詰めの場面での着地点もいい。95

「透明な一日」 角川書店 1999.08 (1999.7.30 初版発行)

 デビュー以来、ずっと記憶に拘る小説を書いてきた北川歩実だが、今回のモチーフは前向性健忘。過去の記憶はあるが、新しい記憶は蓄積されないという症状。つまり、本人からすれば、同じ一日がずっと繰り返される。
 ある事件と関わり合った大学生の男性を主人公に展開していくが、中盤少しだれるものの、後半の積み重ねは良かった。90

「影の肖像」 祥伝社 2000.04 (2000.4.10 初版発行)

 今回のモチーフは「クローン」。
 科学担当の編集者が昔担当していた大学教授が殺される。それに続き、作家でクローンに関する小説を書いた甥も。これはクローンに関する事が原因なのか、というストーリー。例によって謎が小出しに解決し、真相も二転三転する。さて、科学の進歩はどこへ辿り着くのかな。86

「もう一人の私」 集英社 2000.10 (2000.9.30 初版発行)

 北川歩実初の短編集。
 もちろんいつもの通り「人格」に拘ったテーマばかりだが、「婚約者」という短編はちょっと怖かった。全体を読んでみて、いつもの仮説を立てては壊し、の長編形式もいいが、短編もなかなかいいなと思う。88

「臭覚異常」 祥伝社文庫 2000.11 (2000.11.10 文庫初版発行)

 書き下ろし中編。事故により、臭覚が感じられなくなった女性を対象に、研究を始めようとした最中、事件が起きてというストーリー。
 ある程度伏線は効いているが、ちょっと枚数不足で効きが弱い。テーマとしては面白いので、長編で読みたかった。84

「真実の絆」 幻冬舎 2001.11 (2001.10.10 初版発行)

 ある大資産家の遺産を巡り、子どもを捜す弁護士と何とかして遺産を手に入れようとする人々を描いた連作短編集。北川歩実の得意テーマのDNA鑑定や、どうすれば科学的に親子関係が立証されるかという点からのアプローチは、今の科学技術でもここまで出来るのかと驚くが、その方法はやはり人間が触れてはいけない領域のような気がする。作中でも散々周りの大人に振り回される人々が登場するが、これは充分起こりうる話だろう。90

「お喋り鳥の呪縛」 徳間書店 2002.02 (2002.2.28 初版発行)

 ある教育機関に設けられた鳥の研究所。そこの人語を解すると言われているオウムをモデルとしたドラマのシナリオを書いた事から、事件に巻き込まれる主人公、というストーリー。例によって、推理とその否定の繰り返しだが、このオウムの出番がほとんどないのが残念。なぜオウムなのかの意味も分からないし。意外な結末という点では面白かったけど、その点が残念。85 単行本購入icon

「虚ろな感覚」 実業之日本社 2003.02 (2003.2.25 初版発行)

 短編集。長編の方がちょっとパターン化してきたので、あまり期待しないで読んだのだが、これは良かった。持ち味の、何が真実だか分からなくなる眩暈感が、切れ味鋭く発揮されている短編が多い。最初の「風の誘い」からして、よくこの分量で二転三転する事が出来るなと感心。ラストも皮肉が効いていていい感じ。90
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「天使の歌声」 創元推理文庫 2007.08 (2007.7.27 文庫初版発行)

 久しぶりに読む北川歩実の連作短編集。クールなどんでん返しが魅力だったが、短編という体裁もあるだろうけど、「これで終わり?」的あっけなさが残る。北川歩実はもっと面白かった気がしたけどなあ。85


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作品リスト 2004.11.15 現在


NO. 書 名 評 価 出版年月 出版社
僕を殺した女921995/06 新潮社(品切れ)→新潮文庫
硝子のドレス851996/03 新潮社(品切れ)
模造人格921996/10 幻冬舎→幻冬舎文庫
猿の証言911997/08 新潮社(品切れ)→新潮文庫
金のゆりかご951998/07 集英社→集英社文庫
透明な一日901999/07 角川書店
影の肖像862000/04 祥伝社
もう一人の私882000/09 集英社→集英社文庫
嗅覚異常842000/10 祥伝社文庫
10真実の絆902001/10 幻冬舎
11お喋り鳥の呪縛852002/02 徳間書店
12虚ろな感覚902003/02 実業之日本社
天使の歌声852007/07 創元推理文庫


 デビュー作の「僕を殺した女」もいいのだけど、完成度でこちら。(1999.2.18)