01年10月 第五回みちのくミステリー映画祭



 去年の4回目も行ったのだけど、更新さぼっていたので、5回目は早めに書きます。

 夜勤明けで眠いところを何とか起きて、車でひたすら北上。高速で使って3時間ほどで盛岡到着。ちょっと手焼きせんべい屋を除いてから、トークショー会場へ。

 最初のミステリー作家トークショーは、司会が28回乱歩賞作家中津文彦、1回目以来の宮部みゆき、菊池秀行。何だかすごく混んでいて、かなり後ろの席でした。小説と映画の話が半々くらいでしたが、菊池秀行が質問した「ミステリーを書く時は、ちゃんと全体を考えて書くのか」という答えとして、中津文彦が「本格物を書くことは、なみなみと水の入ったバケツをこぼさぬように、持って歩くことだ」と言ったのに対して、宮部みゆきは「歩くだけで掃除が出来るスリッパを履きながら、こぼしているのだけど、それが分からないように歩く」と切り返したのは巧かった。回転早いなあ。菊池秀行は未だに手書きで、床に寝そべって書く話や、宮部みゆきは仕事は仕事場だけで遅くなっても夜9時まで、自宅では書かないという話も意外だったし、今書いている次回作は異界物というのも楽しみ。来夏には出版予定だそうです。「模倣犯」の時は、編集者と共に登場人物の行動の矛盾を洗い出すのがすごく大変だったようだし、どの小説でも完成稿の1.5倍は原稿書いてしまうので、その辺りがプロとしてはまだまだ、と言ってました。あと、男女作家の違いについて、男性はロマンティストな面があるので、実在しないものを怖がる。作風も、例えば犯人が好きな女性だと分かっても、自分を律して捕まえる。女性なら、多分逃がしちゃうので、その差が面白いと言っていたのが印象的。

左から、菊池秀行、宮部みゆき、中津文彦。後ろの席だったので、遠かったです。


 2回目は、藤原伊織、逢坂剛、香納諒一。好きな作家ばかりなので楽しみだったけど、最初からテンション高めで、笑い通しでした。香納諒一は編集者時代、逢坂剛の担当だったそうで、時代物を書くときは普通よりずっと大変なのに原稿料は変わらないのが変だ、と詰め寄られていたし、電通、博報堂というライバル関係の話も面白かった。藤原伊織と逢坂剛は5歳違いだそうだけど、絶妙な掛け合いが巧くて、二人とも話し上手。最近の小説の性描写について、知り合いの作家、例えば志水辰夫が書くそれは、本人を思いだして恥ずかしくなるという話の中、香納諒一が「でもHさんの小説には不覚にも興奮しました」という話を受けて、逢坂剛が「あんな直接的な表現じゃ興奮しない。むしろ島崎藤村の方が興奮する」と言ったのに、藤原伊織が「それは異常者です」と即座に切り返す。もう80分間全てこんな感じで面白かったなあ。藤原伊織は途中から、飲み物をビールに切り替えていたし。逢坂剛の小説書いていて、途中で読者として読み返してみると、犯人が見え見えなのが嫌になって、途中で急遽犯人を変えて、残り1/3で辻褄合わせる、という話も笑ったなあ。だから意外な犯人が多いのか。ずっと見ていて、途中から飛び入り参加した宮部みゆきも「私も犯人変えることあります」と言っていたし。藤原伊織に至っては「僕はプロットを組み立てて書くことはありません」と言っていて、「君はミステリーに向いていない」と逢坂剛に突っ込まれていました。今週刊現代に連載している分も、来週最終回なのだけど、どうするか全く考えていないし、一行も書いていないそうです。天才肌の作家なんだなあ。それを受けて、逢坂剛と香納諒一も、新聞連載と週刊誌連載の違いについて語って、なるほどと納得。週刊誌連載はどうしても一回ごとに山場を入れなくてはいけないようです。
 映画の話では、藤原伊織がR・フェニックスの「旅立ちの時」という映画はぜひ見ろと力説。逢坂剛は「悪役が人気出て、いい役をやるようになったら終わりだ」というのが印象的。香納諒一は意外にも時代劇が好きなようで、宮部みゆきもやたら詳しい。
 でも、本人を初めて見て思ったのは、藤原伊織の一人称「僕」の自然さ。どうしても作中の登場人物とだぶるけど、なんか本当に一致しそうな感じ。逢坂剛は、小説同様、話も滑らかで、本当好人物。会社にいた時はさぞかしいい上司だったでしょう。香納諒一は、作風と違って、落ち着いた大人の男性という感じ。話し方も言葉を選んでゆっくりと話すし、私がなりたい大人の理想像でした。宮部みゆきが最後に言っていた「日本推理作家株式会社の部長、課長、係長の飲み会みたい」。その通りの楽しい時間だったなあ。今までも大好きな作家だったけど、ますますファンになってしまいました。


左から藤原伊織、逢坂剛。


上ではオレンジジュースだったのに、下ではビールに。


楽しい4人でした。右は香納諒一。

 終わった後は藤原伊織のサイン会。プレゼント用に名前だけのサインを2冊お願いしましたが、様子を見ていると誰もそんな人はいない。もし、藤原さんがここを見た時は、あの時頼んだ男は、決して売り払うためにサインをお願いしたのではないと信じて下さいね(笑)。村上春樹のファンにも藤原さんはよく読まれてますよ、と伝えたかったのですが、緊張して話せませんでした。

サイン会でお願いして撮った写真です。


 毎年書いているけど、来年こそはぜひ、東北に関わりのある恩田陸を呼んで欲しいなと思う今日この頃でした。スタッフのみなさま、毎年お疲れさまです。


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