ぢじょでん外伝 同じイボでも症状は十人十色。
だから、ご披露ください、あなたのスペシャル経験を。
話せばスッキリ、聞けばニッコリ 私の痔慢 第8回
キレ痔から痔ろうに!? 
びっくり会話をHP公開
経験者に学ぶキレ痔の基礎知識


小耳に挟んだ女性の会話。認識不足のせいなのか、ふたりの発言にはびっくりするやら心配するやら…。とはいえ私も知識不足(イボなら、わかるんだけど)。そこで、大きなお世話と知りつつも気になった点をDr.OKに解説していただきました。

《登場人物》
キレ子・30代中盤の独身女性。1年前に裂肛(キレ痔)発症。2度の手術を経て完治に至る。
イボ子・40代既婚女性。20代後半に痔核(イボ痔)を発症。今も大切に持っている。

■キレ子発症編 
キレ子(以下、キ)「最近、お尻から出血しちゃって。痛みもあるの」
イボ子(以下、イ)「あらあら、だから便秘は早めに治さなくちゃって言ったのに。イボなら私の使ってる坐薬、分けてあげるから、使ってみたら?」←A
キ「それがどうも切れ痔みたいなの」
イ「なら、塗り薬のほうがいいわね」
キ「なんか『できもの』っぽいものもできてるんだけど」
イ「肛門に? 見たの、触ったの?」
キ「見たの…」
イ「鏡で^_^;? その姿、想像したくないわね…。だけど、となると、やっぱ切れ痔じゃなく、イボ痔よ。イボが外にできる『外痔核』だと思うわ。お薬塗って様子を見てみれば?」←B

●ここにびっくり!
 なんか救急絆創膏でもあげるみたいに言ってるけど、こんなふうに自分の使っているお尻の薬を安易に他人にあげてもいいのかな〜?
「私が治療に使っている座薬や軟膏の効能は、すべて『痔核、裂肛に伴う出血、腫れ、かゆみなどの症状をやわらげる』となっています。したがって、裂肛に処方された薬と痔核に処方された薬が同じという場合はあります」
☆なら、病院に行ったりドラッグストアに買いに行く手間が省けていい、なぁんて思っちゃいけないわよ。そこには落とし穴が…ね、Dr.OK?
「そうですね。まず、自己判断で使用する際、その自己判断そのものが間違っており、まったく違った病気であれば薬の効果は期待できません。一方、仮に自己判断が合っていたとしても、薬の共有は決して賛成できるものではありません。というのも、『治療』とは、薬を使用することだけではないんですね。私たちは診察時、患者さんに疾患の要因となる排便習慣改善のアドバイスをします。たとえば、『繊維質の多い食事を摂り、適度な運動をし、毎晩入浴するように』など。このような『生活指導』も治療の一環であり、特に生活習慣病である痔疾患にはこの生活指導が重要になるんですね。これらの点を踏まえ、薬は病院で個々に処方されたものを使うようにしてください」

B この素人判断、一番怖いことですよね?
「肛門の外にできもの=外痔核とは限らないですからね。キレ子さんの場合は、もしかしたら『見張りイボ』のことを指しているのかも知れません。この『見張りイボ』は、慢性的な裂肛の炎症に刺激され、裂肛の外側、つまり肛門の出口付近の皮膚が厚く硬く変化したものです。もっとも患者さんから症状を聞いただけでは診断は下せませんので、これはあくまで『その可能性がある』というだけですが」
☆ほらね。お医者さんだって、目で見て触ってのWチェック診察をした上でしか診断を下さないんだから、安易に素人が診断下しちゃダメダメ。

■日帰り手術決意編〜6ヵ月目〜 
イ「その後、どう?」
キ「私、実は今度、手術するの」
イ「病院行ってたの?」
キ「うん、3ヵ月前からね。私、切れ痔だったんだって。その傷が慢性化して硬くなってるってんで、しばらく整腸剤と塗り薬で様子見てたんだけど、一向に痛みが取れなくて」
イ「傷が治る時のかさぶたみたいなもんかしらん? でも、だからって、どんな手術をするわけ?」
キ「私の肛門って人より狭くて、それも痔の原因になってるからって、お尻を手術で広げるらしいわ」
イ「肛門が狭い? つまり、あなたのうんちは小さい頃からミミズ状だったの?」←C
キ「人のを見たことないから自分のが太いか細いかなんてわかんないわよ。日帰りでできるって言うから、難しい手術じゃないと思うんだけど。肛門広げたせいで、うんちが垂れ流しになったりは…まさかないわよね」←D
イ「逆に時間と共に切った傷がひっついて、また狭くなって、また手術なんてことにはならない?」←E
キ「考えたくな〜い!」

●ここにびっくり!
C 思わず笑ったこの発想。肛門が狭いと、やっぱり排泄物も細いもの?
「慢性的な裂肛の人の肛門は、狭くなっていることが多いんですね。加えて、裂肛の人は硬い便をすると痛いので、下剤などで柔らかくした便を出している人が多いんですよ。その柔らかい便が出口で絞られるため細くなる。ちょうど絞り袋に入れたホイップクリームをケーキにデコレーションするような…おっと、こんなたとえをしたらケーキが食べられなくなりますか^_^;」
☆私は、マヨネーズを使えなくなるかも(――;)(特にお好み焼屋さんとかに置いてるタイプのやつ。絞るとピシュピシュ〜って細いすじ状のが出て来るのよね。)

「手術によってうんちが垂れ流しになるかも」なんて想像、私もしたなぁ。痔核の治療で昔はそんな後遺症が出る乱暴な手術も実際されたらしいけど、今、一般に行われている手術法では、ほとんどその心配はないんだよね。(詳しくは、Dr.OKの『消痔堂.com』 http://www.syoujido.com 治療・結紮切除術のページをご覧あれ。)だけど、こと肛門狭窄の手術となると、私もわからない。垂れ流しになる危険性はある?
「肛門狭窄の手術は、硬くなった括約筋を切り、締まり具合を調節するというものですから、正直その『さじ加減』は難しいですね」
☆そんな手術を日帰りでしていいもの?

「手術の内容にもよると思います。『皮下内括約筋側方切開術』は肛門の縁からメスを入れて皮膚の下で括約筋を切開する術式ですから、術後の痛みや出血は少なく、日帰りでも行われていますね。ただ、私の勤務する社会保険中央総合病院の場合は、日帰りから1週間ぐらいまで様々ですが、病院の体制の問題もあり、私は日帰り手術はしていません」

☆そういえば、日帰り手術は入院に比べて儲けはあるが、術後の管理がしづらく精神的な緊張がより多いこと(日帰り手術した人が自宅から「出血したぁ!」なんて緊急連絡をしてくることが考えられるため)、日帰り手術の患者さんに合わせた院内体制をも構築しなければならないことなど病院側の悩みを聞いたことが。もっとも、私たちにとっては病院側の思惑はあんまり関係なくて。重要なのは、日帰り手術が可能な場合、日帰りのお手軽さと入院の安心感、どっちをとるかの決断は、術後、安静や清潔を保てるかなど自分の生活環境を振り返ってから下しましょうってことね。

肛門が再び狭くなって、手術を繰り返すということは?
「括約筋を切開しても、傷が元通りに治ろうとする働きのために、切開が足りなければ再び狭くなることもあるでしょうね」
☆ひぇ。こりゃ、さじ加減上手で、ええ塩梅に切ってくれるお医者さんに出会えることを祈るしかないか。

■痔ろう発覚〜10ヵ月目〜
キ「大ショック! お尻の痛みが取れないからお医者さん変わったら、私、痔ろうになってるって」
イ「別名穴痔ってゆーやつ? それって下痢が原因のはず。便秘のあなたがなぜ?」←F
キ「知らないわよ〜。ただ、前の先生は『痛みが取れないのはシャワートイレで洗いすぎ、神経質になりすぎのせい』としか言わなくて。ちっとも良くならないから別の病院に行ったら、この診断よ」
イ「治療したのに、なんでそんなことに?」
キ「それがわかれば、こんな思いはしないわ。ああ、悔しいぃぃ!」←G
イ「気持ち、わかるわ。年に2回も手術するなんてかわいそ〜。私なんてこの10数年、医者知らずよ。同じなるならイボなら良かったのにね〜」

●ここにびっくり!
 痔ろうといえば、キョーレツに痛むらしい。あまりの痛さに脂汗出して身動きひとつ取れない人を見たことあるゾ〜。この痔ろうは、便秘症でもなるの?
「なることはあります。痔ろうは、排泄物の細菌が肛門に影響を及ぼし、本来の出口以外に道ができて穴が空いたものです。そこに膿が溜まると激しい痛みがあります。下痢を繰り返すことも原因のひとつと言われていますが、キレ子さんのように裂肛の傷が潰瘍化して、痔ろうになることもありますね。一方、裂肛の原因として痔ろうと同じように肛門小窩からの感染が原因になるとの説もあり、また、裂肛に痔ろうが合併する場合もありますから」

 この悔しさは、わかる! なんでこんなことに? まさか裂肛手術の「さじ加減」を間違えた、なんてことは…?
「こればかりは答えられるものではありません。裂肛の手術の留意点には@肛門狭窄があれば括約筋を切開して広げるA裂肛の傷が治りにくい形なら、わざと肛門の外側に広がるように形成し、一時的には傷が大きくなるが治りやすい形にする、などがあります。実際にどのような手術方法を採用するかは個々の症例によります。また、完璧と思われる手術をしていたとしても、思いもよらぬ結果が生じることもありますしね」
☆思いもよらぬ結果とは、Dでも述べた『安静や清潔を保てない場合に起こる出血』などがひとつの例。また、治療後、病気の原因となる生活習慣を改善していなかった場合に起こる『再発』も該当するわけで。だからって神経質になりすぎすとキレ子さんのように新たな問題が出てきたりもする。お医者さんだけでなく患者さん自身もケアの「さじ加減」をしていくのが大切なんだろうなぁ。ところで、『イボなら良かった』は大きな間違いよ。たとえ今、痛みがなくとも突然かんとん痔核起こして大騒動なんてこともあるんだから(私みたいにネ)、気ぃつけや〜。