地域工務店の広告メディアについてのE-mailワークショップ (99/06)

1999年6月18日

From: 岩下 繁昭(アティアス)

To: 山城 則子(アティアス)

インターネットでロックステップというホームページを発見した。これは大手ハウスメーカーの営業マンをしていた人が、施主の住宅購買代理店として、施主と工務店とをつなごうと始めたものである。

しかし成功していない。というのもこの1ヶ月以上画面が更新されていないからである。この会社が今のところなぜ成功していないか、その理由を検討することが、住宅分野でのインターネットビジネスを考える上で多いに役立つはずである。

 

 

1999年6月18日

From: 山城 則子(アティアス)

To: 岩下 繁昭(アティアス)

<消費者の側から>

○ これによって、良いものが安くなると感じられるか?

展示場や営業、間接費がない分安くなると言われても、ロックステップのような業者が入って、工務店を紹介してくれるだけではなく、まずそこがファーストプランを作成しプレゼンテーションを行うとなると、そこでかなりお金がかかるような気がしてしまうのではないだろうか。大手だったらただでやってくれることというイメージがあるかもしれない。工務店のモデルハウス紹介のページもあり、同じことではないか。

○ 実際に動き始めて、提案を見たりメールをやりとりして信頼関係が生まれてくれば、こういったサービスは良いと感じる消費者も出てくるだろう。しかし、インターネットで見つけて飛びつくとは思えない。

オンラインショッピングは随分行われているようだが、それはページ自体やその企業、店が信用できそうだと消費者が判断できるから買うのではないだろうか。工務店にきて打合せをしている人でさえなかなか予算を行ってくれないという状況で、自分の住所氏名や細かな条件をおしえることに用心深いと思われる。しかし、無頓着な人もかなりいるような気もするが。

○ 雑誌などの特集記事でこういうシステムが紹介されていて、メリットなどが説明されていれば問い合わせるかもしれない。(雑誌の記事に対する信頼性で)

○ ロックステップのホームページに限って言えば、あまり信用できない雰囲気がある。工務店検索をしても少ししか出てこなかったり、全然出てこなかったりして逆効果。(数が少ないのならリストの方がイメージが良いのでは)完成したものではないイメージ。アイデアだけで実績がなさそうなイメージである。ページが充実していて、工務店がたくさん検索されれば、信頼度は上がると思われる。

○ また工務店検索で出てくる工務店は特色を出しているところが多そうなので、消費者は直接電話をかけてそこに頼めば良いような気がするのではないか。

○ 余程大手住宅メーカーに頼みたくない、大手が嫌いな人でないとこれには乗ってこないのではないだろうか。しかし、あえて大手でなく地元の中小工務店に頼みたいという考えを持っている人や個性的な家を造りたい人は、こういったものを頼らなくてもここに頼みたいという工務店を既に持っていたり、イメージしていたりして、自分でいろいろと交渉することを望むのではないか。紹介してもらうより本で調べたり、インターネットで調べたりして自分で探し出したいのかもしれない。そういう人のためにはリンク集でよい。

○ となると大手に頼むのと同じような安心感と気楽さがないと利用されないのではないだろうか。

○ 大手は適正な価格ではないという前提にたてば、利用があるかも知れない。適正な価格のもの、無駄の無いものが欲しいということで工務店を選ぶ。しかし一般ユーザーは大手の価格が適正でないとは感じていないと思われる。何千万円のものだし、建築費が高いとは当然多くの人が感じているが、それは適正でないという意味ではないのではないか。

○ バーゲン感覚というか、同じ物を人より安く買うという考えなら、安心できる大手の商品を値切るのかも。余裕のありそうな会社を相手に自分だけ安く買う。

○ ロックステップは何を提供しようとしているのか。工務店の紹介?提案?設計者の紹介?工務店に変わって大手の営業マンがやっているようなことを行うのか?「引き合いをすぐ工務店に渡すのではなく、ファーストプランは当社が作成し、専門化によりバックボーンも確定させる」とあるのでプラン作成などを行うのか?ワンストップショップとは?

○ 施主からコンサル料のようなものを取るのか?工務店から紹介料、営業料を取るのか?

○ こういったシステムは年間何棟くらいを目標にしているのか。どれくらいやれば上手くまわるのか。かなりの数をやらなければならないとすれば、ネット上にホームページを開いただけではできるわけがないような気がするが。

○ ネットワークが広がることでそれぞれがお客を連れてくるのか?

○ 一般ユーザーは家を造る時にかなり不安を持つものだと思う。安心感、信頼がとても大切。そういう意味では住宅にインターネットというのは向いていないのかもしれない。他の商品は売り込みがわずらわしいということもあるが、家を造るときは相手の人を見て自分で信頼できる相手かどうか判断したい。安心したい。

○ 一般ユーザーがこのホームページを見ても具体的に何をしてくれるのかわからない。

○ 興味本位にこんな会社があるから使ってみるかという人はいると思う。しかし入会金2000円はらうかな。良くわからないグループに2000円払って入会する人は少ない。

○ インターネットには小さな業者も大手に対抗できるというメリットはあるが、インチキ業者が悪用するのも簡単なので不安がある。テレビなどでオンラインショッピングの被害もいわれている。ページを見て、利用者の判断で頼んでも言いかどうか決めるので、そう思わせるようなページでなければならない。建材店などが開設しているページであれば、そういう意味では信頼性があるので、たとえシステムを利用して工務店を紹介してもらうというところまでいかなくても、2000円で何らかのプランを提示してくれるというのは、建てる予定のある人には魅力があるかも。雑誌を1冊かうのと同じような感覚で試してみるかもしれない。

○ ユーザーがとくに今の情報提供(モデルハウス、カタログ、雑誌など)に不満を持っているとは思えない。インターネットで自分の希望にあった工務店や住宅の情報を手に入れるのはそんなに簡単なことではない。書店に行く方が簡単に数多くの情報が得られるというのが現状かもしれない。インターネットでも調べてみるかとは思うだろうが、他の情報より信頼性が低い。

○ インターネットを使うのなら、こういう業者ではなく直接工務店や設計事務所を検索してそこに問い合わせするのでは。紹介だけならリンク集で十分である。

<工務店側から>

○ 25,000円で載せてもらうメリットがあるのだろうか。自社でインターネットを使って消費者にアプローチすればよいのではないか。

○ 営業や提案が本当に苦手な工務店なら乗ってくるかも知れない。しかしそういうところとは紹介したくない工務店である。

○ こういった新しい方法を行おうとしている人達と仕事をすることを工務店が望むのだろうか。周旋屋というイメージだ。営業のアウトソーシングといえるのか。ロックステップはインターネットにページを開いてお客サンを待っているだけなのか。

○ 紹介してもらった工務店はロックステップに紹介料を払うのか。どのくらい?工務店にとってあうのか。

○ 工務店にとってはただお客サンを紹介してくれるのと、提案を行ってくれるのとどちらがよいのか。提案を行う設計事務所と工務店を結びつけるのがいいのか?

1999年6月30日

From: 宮坂 公啓(宮坂建築事務所)

To: 岩下 繁昭(アティアス)

ロックステップのコンセプトは評価できますが、このwebsiteの内容には具体性が欠けており、このようなところを利用しようとする建主があらわれるとは思いません。また、現われるとマズイのでは、との印象ももちました。ただ一方では、なにごとも草創期にはこのような現象がおきるのもやむ得ないのかとも、、、

インターネットを通じて情報を検索し、そこで買い物をするということでいうと、私個人は洋書と洋楽CDの購入に重宝しています。このWebsiteはwww.amazon.comです。一度のぞいてみてください。できれば買い物をしてみると実感できます。先日ハブラーケンさんの本(The Structure of the Ordinary)を買ったところ(運賃込で定価の約15%引き)、乱丁があった場合でも、クレームをだすと、即刻、新本を5日後には送ってきました。

ただし、向こうも24時間営業のせいか、メールをだすと返信されてくる人間はその都度かわり、なんとなく不安はありますが、、、(ご存じのようにE-mailでは全ての記録を残しながら、やりとりを続けられので実際の問題は生じにくいわけですが。)

住宅のような高額商品の場合、インターネットを通じた取り引きは信頼しあえる当事者同士に当分は限定されるのかも知れません。したがって、まず信頼しあえる顔の見える関係を築き、その後の事務処理を合理化するためにインターネットを使う、というステップではないでしょうか。